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季節は移ろいで夏になります。
学校が夏休みに入ってからも、私は週に二、三度、トモちゃんのいる病棟に通いました。
トモちゃんはいつも待っていたかのように、とびっきりの笑顔で私を迎えてくれました。
私は学校やこの町の話を言って聞かせ、トモちゃんは東京の話を教えてくれました。
その頃には、私の存在は既に他の医療関係者の知るところとなっていましたが、私たちの交流をとやかく言う人はほとんどいませんでした。
もう、こそこそとサナトリウムの中を移動する必要もなくなりましたし、わざわざ木に登ることもなくなりました。
正面玄関から入っても、誰も気に止めようとせず、それどころか、看護婦さんは私に気軽にあいさつをしてくれます。
「あら、キョウ君。夏休みの宿題はどう?」
その日も、日頃トモちゃんと仲良くしている若い看護婦さんが、私に話し掛けてくれました。
「課題がまだ終わらないんだ」
「それは何をやるの?」
「先生が、この町の歴史を調べろって。看護婦さん、何か知らない?」
「そぅねぇ、私はこの町の生まれじゃないからわからないわ。大変そうだけど、がんばってね」
そんな会話を交わしながら、私はいつものようにトモちゃんの待つ病室に向かうのでした。