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天気輪の柱  作者: EXPO'91
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翌日も私はその少女に会うために、サナトリウムに向かいました。


放課後、友達が再び野球をやろうと誘ってくれても、私は学校にいたときから何だか胸の中がそわそわして、それどころではなかったのです。



サナトリウムに着くと、私はなるべく人目に付かない場所を選びながら進み、少女のいる病室の真下まで来ました。


近くに落ちていた、小指の爪くらいの大きさの小石を二つ三つ拾いあげ、私はそれを窓にぶつけます。


しばらくすると少女が不思議そうな様子で、窓からきょろきょろと顔を出しました。


「おぅい、ここだ、ここだ」


私が手を振って見せると、彼女の顔が、ぱぁっと明るくなりました。


「ちょっと待ってて」


私はそう言うと、昨日と同じようにするすると木を登っていきます。


「うれしい。今日も来てくれたのね」


ちょうど病室の窓の横に着いたとき、そう言って少女は私に微笑みました。


「うん。約束だからね」


私は木の幹から伸びる太い枝の上に腰掛けます。


「私の名前は友子。みんなトモちゃんって呼ぶわ。あなたは何ていうの?」


「みんなキョウって呼ぶよ」


友子という名のその少女は、私のあだ名を胸に刻みこむように、何度もキョウ、キョウ、とつぶやきました。


「トモちゃんはここで何をしているの?」


私がそう尋ねると、トモちゃんは少しうつむいて、「病気の治療」と言いました。


「学校には行かないのかい」


行かないわ、とトモちゃんは首を横に振ります。


「病気が治ったら、私は東京に帰るの」


「東京」、この町からほとんど出たことのない私にとって、その響きは、何だか遠い異国のような気がしてなりませんでした。

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