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そこには昨日の少女がおりました。
ベッドに座り、頬を照らす日の光をまぶしそうにさえぎりながら、彼女は私を見上げています。
開いた窓から入る風に、そよそよとなびく栗色の長い髪。
透き通るような真っ白な肌。
白い服の上には薄いピンクのカーディガンを羽織り、手には文庫本を大事そうに抱えています。
それはまるで、絵画のような情景でした。
私は「あっ」と言ったきり、声が出ません。
自分の顔が赤く蒸気しているのが、自分でもよくわかります。
昨日幽霊のように感じたのが失礼に思えるほど、彼女は美しく可憐でした。
「それ、あなたのボール?」
私は緊張したまま、馬鹿みたいに首をカクカクと上下させます。
彼女は口元を押さえ、小さく「うふふ」と笑いました。
私はぐっと手を伸ばしボールを掴むと、そのままするすると木を降りていきます。
頭の中は、ぼーっとしたまま何も考えられません。
「ねぇ」
不意に上から声がしました。
はっ、と見上げると、少女が窓から顔を出しています。
「また会えるかな」
意外な言葉に、私は再び首を激しく縦に振りました。
彼女もまた嬉しそうに微笑みました。
彼女の白い頬が、ほんのりと薄いピンクに染まるのを見て、私は居ても立ってもいられなくなり、再び逃げるようにフェンスに向かって走り出しました。