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天気輪の柱  作者: EXPO'91
2/14

野球といえば今でも十分に人気のあるスポーツですが、当時の私たちにとっても、やはりそれは人気のある遊びのひとつでした。


その日も私たちは放課後校庭に残って、日が暮れるまで野球に興じていました。


さて、いざ帰るころになり、どうしても野球を続けたかった私と友人数人は、仕方なくキャッチボールをしながら下校することにしました。


ところが一人、野球のあまり上手でない友人がおりまして、彼の投げたボールは私たちのはるか上空を越え、ぐんぐんと坂道を転がって行きます。


落ちた先は大きな病院のような場所の庭で、私たちはおろか、地元の大人たちでも入った人間はほとんどいない所でした。


そこが、「サナトリウム」と呼ばれる場所だということを知ったのは、その出来事があってずいぶんと後になってからのことです。


何はともあれ、ボールを取って来ないことには話になりません。


私たちは仕方なく、取りに行く人間を、ジャンケンで決めることにしました。


案の上、負けたのは私で「男を見せてやる」などと大見得を切ってフェンスをよじ登りました。


友達の中には「大人に怒られる」と言って止める者もおりましたが、そんなことは関係ありません(だって、私のボールなのですから)。


構わず私は、ずんずん芝生の上を歩いていきます。



ところが、肝心のボールが一向に見つかりません。


すでに日もとっぷりと落ち、あたりの状況さえわかりにくくなっていました。


友人たちの中にはすでに帰った者もいるようです。


月の明かりが白くぼんやりと建物の壁に反射して、私は次第に、何だか怖いような薄気味悪いような気持ちでいっぱいになりました。


そんな時、私は、建物の窓から一人の人間がじっと私の様子をうかがっているのに気が付きました。


どうやら前髪を長く垂らした白い服の少女のようでした。


そうなるといよいよ私は恐ろしくなって、ボール探しをあきらめ、一目散にその場から逃げ出しました。

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