いいえ、ありません。
「どうしたんだよ、急に職員室に連れてきて」
「黙ってて」
花村は職員室の扉を勢いよく開け、颯爽と我らの担任『三川先生』の元へ歩み寄った。
教室に入ってカバンを置いた途端、腕を掴まれてここまで引っ張られたので、訳がわからず花村を見ていた。
「先生、相談があるんですが」
先生の机に置かれてある花瓶にヒビが入った。そう思うぐらい花村からピリピリした雰囲気を感じられた。
唾をゴクリと飲み込む俺と三川先生。
辺りも仕事に取り組みながらこちらの様子を覗いていた。
物音しない空間で待つこと10秒。両手をプルプルさせながら握る花村は、顔を真っ赤にして押し殺すような声で言った。
「……あのっ、バカに効く薬はありますか?」
花村の人差し指は何故か俺に向けられていた。
周りの先生も気付けば自分の作業をやり始めていた。中には俺を見て苦笑いをする人もいる。
事態を掴めてないのはどうやら俺だけらしい。
「いったい何言って……」
「昨日の放課後、何やってたの?」
「……えっ?」
「昨日の放課後どこで何やってたの?」
女子更衣室にいましたーーーーーーなんて言えるわけねぇ!
決して行きたくて行ったわけじゃないんだ。現に探し物をしていたわけだし、下心なんて全くない、はずがない。
だから、純粋に探し物をしていたなんて嘘はすぐにバレるし、むしろ状況をさらに悪化してしまう。
というよりもだ。そもそもなぜ花村はそのことを知ってるんだ?
バレないように細工もしていたわけだし。
「女子更衣室にこんなもの貼ってたの」
そう言うと、ポケットから四つ折りにされた紙を取り出し、広げて俺に見せた。
『俺は入ってません by篠原 かづき』
「書かれてあるとおりだろ」
フフフ、我ながら完璧なアリバイ工作だ。
「ヘェ〜、じゃあ、どうやったら入らずにこの紙を更衣室の一番奥に貼れるのかな? 教えて欲しいな」
「そ、それはっ」
口だけ笑っていながら、花村は拳を強く握った。
「問答無用!」
「ぎゃあっ!」
その拳は見事に顎を捉え、俺の視界は震度8並に揺れていた。
……パトラッシュ、すぐそっちに行くからね。
どうでしたか?
僕がこの作品を書いた理由は読者に笑って欲しいからです。
単純な理由だけど、それだけで書いている意義を見つけられるのです。
きれいごとですが、どうか、楽しんで見てください。
それでは今後もよろしくお願いします。