その０
正義と悪、それを証明することは極めて困難だ。実に単純に言いきれるし、限りなく
複雑に迷いこめる。どうとでも表現できるし、どんな言葉も当てはまらない。もしかし
たら、存在しないものなのかもしれない。
スーパースターは正義なのか。彼らは必死の努力の末に栄光を掴み、多くの幸福を手
に入れている。だが、その裏では予想しえない苦痛を味わってきたに違いない。無論、
そこには多くの犠牲にしてきたものがあるだろう。犠牲をこうむった人もいるだろう。
ならば、自らの栄光のために側にある物や人を犠牲にする人間を正義としていいのだろ
うか。
神は正義なのか。神は良い心を持つ人間には良い事を、悪い心を持つ人間には悪い事
を与えるという。それはおかしい。神が本当に誰もが崇めるべき対象である聖人なら、
悪い心を持つ人間に良い心を持てるようにするんじゃないだろうか。この世の全ての人
間を良人にし、世界を平和であるようにするんじゃないだろうか。少なくとも、悪い心
を持つ人間に悪い事が起こっているうちはこの世から悪人が消えることはない。それを
正義としていいのだろうか。
正しさは時にまがいものとされる。正道は踏みにじられ、正論は笑われる。正しさを
持って生きようとする者は隅から隅まで揚げ足を取られて潰される。そして、正しさと
は何かを見失う。やがて、正しさを諦める。
信じる者は救われる、なんて信じられない。要は何を信じるか、それに尽きる。自分
自身を信じたところで自分だけでは何も出来ない。とはいえ、国が国民を裏切るんだ。
一体、何を信じればいい。言葉ではどうとでも言える。国民を守ると高々と掲げた国会
議員がどれだけ欲に溺れていったことか。言葉なんていくらでも操れる。嘘を本物のよ
うに言う奴がいる。それを信じた人間に信じた方が悪いと言う。そんなことはない。お
前が嘘をつかなければいい。嘘をつく奴がいるから本物が霞んでいく。信じることを疑
うようになってしまう。お前が悪い。
どうして、全員が正しさを持って歩けないんだろう。どうして、全員が平和を願って
歩けないんだろう。本当の答えはいたって簡単なのにそれを守れない奴らが多すぎる。
馬鹿みたいに僻み、歪み、偽り、犯罪をおかす。その繰り返しで単純なことをどんどん
複雑にしていく。取り戻せないほど捻り絡ませ、我は正義だと謳う。汚い顔と嘘だけの
羅列で謳う。
この世界を変える術はないんだろうか。一番単純なところへと導く方法はないんだろ
うか。いつか救世主が現れる、明日目が覚めたら全てが彩られている、と気が遠くなる
ような幻にすがるしかないんだろうか。そんな状態がすでに現実の壊滅的状況を映して
いる。第一、そんな幻が起きても長く続くかどうかは分からない。正しさは潰される運
命にあるのだから。
