遠征1
「本当にこれで何とかなるのかしら?」
「大丈夫、私の時もそれを出せば良かったから」
学校とは遠く離れた大きな街にアリシアとティタは赴いていた。
アリシアは学校の校章が刻まれた金属版を訝しげに眺めながらも先程の質問をティタへと投げ掛けていた。
彼女らがどうして学外にいるのか。その理由は少し日を遡る必要がある。
「遠征実習?」
ある日、アリシアは授業終わりに学内ギルドに呼び出されていた。
「はい。Cランクに昇格した時に生徒には今後の為に遠征をしてもらう事になっています」
アリシアへいつかの受付嬢が説明をする。
平均的には3学年程になると受ける遠征実習なるものは、学園が出来た当初はなかった。
学園を卒業し、冒険者で生計をたてようとする者は少なからずいるのだが、学内という快適な環境に浸ってしまい、知識だけで単独遠征を行おうという者が多かった。しかし、若さゆえであり、命取りになる事は自明。
もちろん、普段の依頼も予想外な事は起こり得るのだが、遠征という長丁場になればそれだけ多く起こるのは考えるまでもない。
そうした理由から一度は経験しておくべきだと判断され作られた制度である。
内容は遠征を行う必要のある依頼を受けるというものだ。しかし前述通りに単独遠征させる訳にもいかない。
そこで1人につき1人Bランク以上の者が同行する事になっている。
また、これは遠征の経験を積むだけでなく、指導側にも経験を積ませる。選出される者は生徒から選び出されるのだ。ちなみにBランクは普通ならば少なからず遠征には行っているので問題は然程ないはずである。
「分かったけれども誰が私と一緒に行くのかしら?私の事情は知っているんでしょう?適当な人を探さなければいけないじゃない」
顔を合わせるのは入学式の日以来であるが、敬語は不要と判断しアリシアは素の口調で話したがどうやら問題はないようであった。
「適任はいましたよ。本人からも了承を得ましたし、嘘も吐いていない事は確認済みです」
どの様に確認をしたのかは不明だが、嘘発見機の様な魔道具の存在を思い出し、アリシアはそれくらいあるだろうと判断してその言葉を信じた。
「それで、誰なのよ」
「ティタ・メナカイトさんです」
「到着」
彼女らはその都市のギルド前に立っていた。
「予定よりも1日早く着いたわね」
「あれは何か不具合がある事も想定された日数。普通ならこのくらい」
遠征といってもあくまでも経験を積ませるという目的からそこまでは遠くない。ギルドのある都市まで予定では2日の距離である。あくまで想定外の事が起こって一度は野宿してしまう事からの日数であり、実際は舗装の悪い道(舗装技術はあまりよくないので道がある程度均してある程で馬車は通れない)を20km程である。
アリシアは種族のアドバンテージから、ティタは慣れから、朝早くから夕方までかけて歩き通した。
馬車を使えば容易であるのだが、直通ではないので数日はかかってしまう。歩いた方が基本的には早かった。
「それはともかく、これから宿をとる事も難しいし、どうするの?」
「まずは到着報告。宿は宛てがある」
ティタはマイペースにギルドの扉を開いて中に入って行く。仕方なくアリシアも後に続いた。
到着の報告をした後にティタは受付から厚い本を借りて適当に席に着いた。それからアリシアを呼びつつもページをめくり始める。
「今から貴女にはこれから受ける依頼について話をする」
そう言って、アリシアに向けて開いた本を見せた。
「今回は討伐依頼。ここから少し離れた小村に頻出する様になった魔物のネイバーウルフを討伐して原因も突き止める」
ネイバーウルフとは黒と暗緑色の毛を持つ小柄な狼である。特徴的な点は外見だけでなく大変賢く、軍の様に統制された狩りを行う。
「でも、あれは村を滅多に襲わないわよ?」
「だからこそ」
ネイバーウルフの最大の特徴は集落などは襲わない事にある。それは自分達も少なくない犠牲が出てしまうからといわれている。
当然、少人数であれば村をも襲うが、それでも村などの集落を全滅はさせない。女子供に労働力を失えば村は自然消滅する。適度に襲う程度なのだ。
だから、良い意味で臆病で賢い彼らが頻出して襲うというのは異常といえる。
「ちなみにこの依頼のランクは?」
「Bランク」
アリシアは一瞬言葉を失う。
Bランクの依頼を初めて組んだ相手と行うなんて愚策にも程があるからだ。
「不安?」
それが顔に出ていたのか、ティタはアリシアに問いかける。
「貴女と組むのは初めてなのに不安がないわけがないじゃないの」
パーティーを組む事は戦力的にプラスといえる。しかし、それはあくまでも経験があってこそだ。お互いを知らぬ者どうしでのパーティーなど足を引っ張るばかりである。故に、普通は難易度の低い依頼で互いを知るところから始める。
「それなら、1日余裕があるのだから簡単な依頼を受ける。これでいい?」
「まあ、それなら……」
アリシアとて、その提案を反対する事はなかった。
翌日、彼女らは都市近隣の森へと赴いていた。
昨晩の宿はギルドの建物内であり、それは宿をとれない人へのサービスの一種であった。
金は取るが安価であり、彼女らは校章の提示によりそれすらも学園が受け持つ形となった。当然、安価であるから寝泊まりに必要な最低限しか用意されず、男女別けられているものの雑魚寝(布団付き)となる。金銭の要求は荷物を預かり管理するのと安全な場を提供するという点のみである。
それでも駆け出しや守銭奴などと利用する者は少なくない。
そんな環境で一晩を過ごした為にティタは疲れが取りきれていない様子であった。
対して、アリシアはそれはそれは良く眠れたのか清々しい顔をしていた。
何せ、ベッドが主流な文化である中で布団というのは、特に煎餅布団などは寝心地は良くない部類だ。床で寝たり野宿よりはマシであるとしてもだ。しかし、アリシアの中身は元日本人であり馴染み深いもの。故に落ち着けたのであった。
「……ここ」
若干疲れが溜まり、口が重そうなティタは目の前の大木を指した。
彼女らが受けた依頼は通称暗殺蜂と呼ばれる魔物――正確な名前は分類出来ていないことからまだ名付けられていない――の巣に蓄えられている蜂蜜をいくらか採ってくるというものだ。
暗殺蜂とは夜行性の蜂の魔物の一種であり、体長は五歳児程の大きさがある。羽音が非常に小さく、また猛毒を持つ為に夜気付かれぬうちに襲われる事があり、猛毒により命を落とす。加えて針は抜けない為に、絶命せず、さらには複数回刺されたりする事もある。
しかし、その蜂蜜は大変美味で解毒薬としても有用な為、それを求める者は後をたたない。
「たしか、木の上に巣があるのよね?」
「そう」
そんな危険な魔物がBランクで済む理由は夜行性である点だ。昼間であれば動きが大幅に鈍るどころか、彼らは暗闇での視覚に特化したために昼間では明るすぎるのだ。だからこそ野生の動物が襲えない木の上に巣を作らなければいけないのだが、それによって巣の周辺は日光が当たり明るくなってしまう。
なぜそのように進化したのかは全くの謎であるが、昼間ならば巣まで行ければ敵ではない。
しかし問題は周囲の森。もちろん昼間に活動する魔物なども少なくない。そういう点から依頼のランクが定められるのだ。
「暗殺蜂って私くらいの大きさなのよね?あれみたいに」
アリシアはやや上を指差してティタに聞いた。
「そう……。…………!?」
彼女の指した方向には20を超える蜂が飛んでいた。それらは悉く敵意が剥き出しである。
「おかしいわよね、昼間なのに」
蜂は彼女らを伺うかの様に注意を向け続けている。しかし、まだ動きはなかった。
「違う」
「えっ?」
「こいつはそんな奴じゃない」
ティタが蜂の群れにレーザーポインターの様に光をいくつかあてた。
「魔力を当てて。私には当てるべき場所を定める示す事は出来ないけど」
蜂は何故か都合良く動こうとしないので、アリシアはその示された点を的確に同時に射抜いた。
すると、まるで蜂を映し出した液晶が割れたかの様に蜂たちが砕け、奥には大きな生物の影が見えた。
「なぜ判ったのだ?」
くぐもった低い声、頭から生える捻れた角、そして六対の腕。赤く光った目には爛々と炎が絶え間なく燃え、鋭い牙を持つ口は黒い炎が渦巻いていた。肌はタールの様に黒く光を反射させている。
「俺の魔法が人間に看破されるとは思わなかったが、まあいい。生娘が引っ掛かった訳だからな」
彼は地の底から響くような声で大きく笑った。
「しかも良く見たら片方は忌み子、もう片方も魔力に溢れているか。ふむ、それならば俺の魔法も見えてはいたとして、あの魔力精度を持つ吸血鬼か……」
「なに一人で呟いてるのよ」
そんな彼にアリシアは食いかかった。
「ほう、怯みもしないか」
「怯む訳がないじゃない。貴方なんかただの下位悪魔だもの。名も知れない悪魔なんかたかが知れてるわ」
「悪魔?」
そこでティタが反応した。
「なぜ悪魔がここにいる?」
「全く、人間の娘とはもう少し怯えるものだろう?」
彼は呆れながらも殺意を沸かせる。
「して、そこの吸血鬼にいたっては俺を雑魚扱いか。いい度胸してるじゃねえか」
「今からでも遅くないわよ。ここにいる目的を言ってから無様に尻尾巻いて逃げなさい。貴方なんか話にならないわ」
「ほう、面白い事言うじゃねえか」
「今ならまだ見逃してあげるわよ」
「それはこっちの台詞だ」
アリシアと悪魔が互いに睨み合う。
「無視をするな!」
空気がざわめく程に強大な圧力がティタから放たれた。それは普段からは想像も出来ない程のものであった。
「そこの悪魔、質問には答えろ!」
豹変した彼女からはそれこそ別人の様な気配がしていた。普段の空気に紛れる様なものとは真逆で、存在を誇示しているかの様子である。また、感情とともに荒れ狂う魔力とは異なる力の奔流はアリシアや悪魔には及ばずとも並の者では太刀打ちできない程である。
「貴様こそ何者だ!ただの人間というには苦しいぞ!」
悪魔が叫ぶ。これにはアリシアも同感であった。
『人間』がこの様な種族的な特徴を持っているとは聞いた事がないからだ。
「私は人間だ!貴様の様な人外ではない」
「貴様も俺達と似た様なものだろう?忌み子なのだから」
アリシアには何故ティタが忌み子と言われているのか、そして彼女が何者であるのか一切合切理解出来ずにいた。
「質問に答えろ!」
「しつこいぞ、『人間』が。貴様の種族が信じられんが、貴様らは俺には敵うまい。そもそも……」
「もういいわ。いい加減消えなさい」
業を煮やしたアリシアは悪魔に向かって瞬時に近付き顔面に裏拳を叩き込んだ。
悪魔は咄嗟に反応し、それを受け止めるものの勢いが殺せずに数メートル吹き飛ばされた。
「き、貴様らいったい何者だ!」
彼は自らが容易く一撃を食らうという事態に驚きを隠せないでいた。
「私は見ての通りの『吸血鬼』よ。ただし特異点だけれども」
「私は『無族』の特異点」
『無族』という種族。その言葉に2人は首をかしげる。しかし、特異点というからには何かあると、アリシアは期待し悪魔は警戒する。
「ふむ、無族とはな」
そこに第三者の声が響いた。
「悪魔よ、去ね。貴様では我々には勝てぬぞ!」
声とともにアリシアのしている籠手から魔力の嵐が吹き荒れた。
「貴様の目的はおおよそ見当がつく!」
「次々と……、何者だ!」
「我が名はハイドラ!今回は主に免じて猶予をくれてやる!」
それを聞いて、彼の表情は一気に悪くなる。
「なっ……、くそっ!」
そのまま悪魔は闇に紛れて消えてしまった。
「訳が分からないわ」
アリシアはただただ溜め息を吐く事しか出来なかった。
ギルドへ戻り、事の顛末を報告、それから質問攻めになり、彼女らが解放されたのは昼下がり。
その後に適当に宿をとって、彼女らは互いに説明をする事にした。
「……つまりはそれは龍の意思が入ってる防具でいつもは指輪に姿を変えているということ?」
「そうよ」
「そうだ」
「それよりも貴女の種族……、聞いた事もないのだけれども」
アリシアは改めて疑問を吐き出す。
どうやらハイドラは知ってはいそうであったが、本人に聞くのが近道と判断した。
「無族という種族は……、もう私以外には行方は知れない。そして、どんな種族であるかは私にも分からない」
「小娘、どういうことだ?」
「私は、幼くして両親を亡くしている。幸い物心ついてから。でも自らの種族が何か、そして血筋を教えられただけ」
「ならば小娘共々教えてやろう」
それから彼は無族について語り始めた。
身体能力、魔力、寿命などが全て平均的であり一見すると特長がない。
しかし、知識や精神力においては追随を許さない。その為に魔法の制御や理解に長けていたり少ない経験から多くを得る事に長けている。よって歳を重ねた無族は何かしらに特化している事が多い。
「……種族的には特長がない事が特徴というべきだな」
「なによ、それ」
「貴方は会った事があるの?」
「我がまだ幼かった頃にな。しかし、無族で魔眼とはまた凶悪な……」
そこでアリシアはふと思い出し、そういえば、と切り出した。
「ティタが忌み子とか言われてたのはどうしてかしら?」
アリシアは何故彼女が忌み子という言葉を使われていたのか不思議で仕方がなかった。
「魔眼は一般的には発現はしない。主に悪魔などが持つそれは人間では忌み嫌うもの。悪魔の寵愛を受けて生まれたともされる人物が備えているとされるものだから」
「それなら奴は貴女を忌み子とは言わないわよね?」
仮に本当に悪魔の力によるものならば、その悪魔が忌み子とは言わないはずである、そう彼女は考えた。
「もしかして魔眼とは別の何かを言っていたのかしら?」
「奴の言い方からしてそれはないであろうな」
アリシアとハイドラは悩みに悩んでいた。
「私は忌み子と言われる理由に心当たりがある」
突然ティタが切り出した。
「私はまず初めにこの国の王家の血を継いでいる」
「……え、ええ。で、でもそれだけでは……ないのよね?初めに、って言ったのだから。いろいろ聞きたいのだけど後にするわ」
とりあえずアリシアは話の続きを促した。
「次に、私の魔力が歪である事。具体的には2人の魔力が混じった状態にある。最後にそれに耐え得る魂である事」
「ふむ。なるほどな」
アリシアにはちんぷんかんぷんであったが、どうやらハイドラには理解出来た様だ。
「して小娘、まずは両親がいないというのと王家の血についての説明が足らん」
「私の父は、現国王の弟。そして母は無族。母の故郷は分からない。王家で密かに争いが起こった際に父は殺された。母は口止めに殺された。私は幼かった事もあり、身をメナカイト家に預けられ、私も過去を断ち切る為に名も変えた」
「メナカイト家ってどういう家なのよ」
「王家の秘書を代々輩出している家柄。実力主義であった為に魔法を碌に使えない私は多くの者に厄介者扱いを受けていた。しかし学園には通わせてもらっている。メナカイト家の当主だけは私の学力に気がついて支援をしてくれた」
「最後に、あの悪魔も戦く圧力はなんだ?」
ハイドラが問う。
アリシアにもよく分からないが人ならざるものを感じた程のものに興味は向く。
「私にも詳しくは分からない。けれども、なんというべきか、2人分の何か、その気配の様なものを私の中で混ぜるとなる」
彼女にしてはしどろもどろな口調で内容もはっきりしないものであったが、それは本人の気持ちを表にしたものであった。
そんな発言を聞いてアリシアはふと思い付いた。解析の魔法を彼女に使ってみてはどうだろうか、と。
しかし、本人の魔力などによっては一方的に相手を知る事が出来るその魔法は身内以外に使うのはあまりよろしくないとされていた。アリシアはそれを母より学んでいたのだが、あくまでもそれは一方的である点からである事が問題である。
詰まる所、本人に許可をとれば問題はないのだが、如何せんアリシアの魔法の素質は高い。ティタではどんなに抵抗しようとも丸裸にされてしまう。
アリシアは果たしてそれでも大丈夫なのか疑問であったがダメ元で聞いた。
「別に構わない。むしろ詳しく教えてほしい」
彼女は即答した挙げ句にこう言った。
解析の魔法は相手の事を読み取る魔法で、以前アリシアも母親に使われたのだが、この魔法は自らには使えないという制約がある。
身内も既にいない彼女はそれをする者がいない様なものである。
「分かったわ。抵抗はしないでちょうだい」
アリシアに抵抗した所で実際は暖簾に腕押しするよりも意味がないのだが彼女は一応告げた。
アリシアは彼女に魔法を使ってからしばらく黙って目を見開いていた。
しかし、しばらくすると突然叫びながらガタガタと震えて縮こまってしまった。それは普段の彼女からはまるで想像出来ない程のものであった。
「どうした?」
ティタがアリシアに話し掛けるとビクンと彼女の身体は跳ねて更に縮こまってしまう。
「ちょっと……、ちょっと待ってちょうだい……」
アリシアはしばらく深く呼吸してから目元を拭ってティタを見る。
「正直に言わせてもらうと私では精神が持たないわ。私は見えすぎてしまうという事もあるのだけど、貴女の情報量は桁が違うわ。普通の人が紙切れ一枚だとしたら大図書館レベルよ。それが一気に雪崩れ込んだら正気は保てないわよ。加えてその情報も何か見てはいけないものかの様に精神が汚染された感じだったわ」
アリシアが以前ルイスに用いた時とは比較にならない情報量と、その一つ一つの異様さは明らかに普通ではなかった。
「どこまで見れた?」
「貴女の本名と性別、誕生日に種族ね。おかしかったのは才能や加護といったところかしら」
「わかったところだけでいい」
「助かるわ」
アリシアは安堵の息を漏らした。
「本名は……、言わないでおくわね。まあ、性別とか誕生日も省くわよ。おかしな点はは種族にあったわ」
「どういうこと?」
「無族の特異点だったわ。ただ、それだけなら良かったのよ。ただ……」
「焦らさないで」
アリシアは頭を小突かれる。
「貴女は特異点なのよ」
「知っている」
「えっと、私も訳が分からないのよ。貴女は無族の特異点であって人族の特異点でなのよ。本当に訳が分からないわよ」
アリシアは呆れた様に言葉を吐く。
「少しいいか?」
「何よ?」
「我の仮説だが、忌み子というのはその魔力の在り方を指すのではないか?悪魔には魂が見えるという。それならば小娘の魂が忌むべき要素を持っていた……例えば双子の片割れである事だ」
「双子って何か問題あるのかしら?」
「後継者がややこしくなるけど何も問題はない」
アリシアの疑問にティタが即答する。
「双子であり加えて片方が死産であれば、生き残りは生まれながらにして罪を負う、つまり忌み子と言われるが、それではないか?そういった者は魂が2人分の力を持つと言われている。実際にそういった者は忌避されているが魔法の素質は高いからな」
「それなら確かに辻褄が合う」
「もしかしてそれに加えて2人が特異点であったとかいう訳?」
「かもしれぬな。さて、どうせあの悪魔に聞かねば結論もつかん。明日に備えなくてもいいのか?」
彼は少し強引に流れを断ち切り、次の行動を促した。
「ええ、そうね。不毛な考察よりも取っ捕まえて聞き出した方が早いわね」
それに対してティタも頷いた。
「それよりもハイドラ、貴方の名前を聞いて何故に悪魔がああも怯えたのか知りたいのだけど」
ティタも確かにと言いたげに腕を組んで首を振った。
「それは昔、軽く300くらいの悪魔を虐殺したからだ。というのもあやつらがな……」
「もういいわ」
アリシアは頭を抱えて彼を制止した。




