事の始まり
今まで私が書いていたものとは違い、この作品は三人称で進めます。人物の名前などは逐次の紹介で進めますのでじれったくなったら質問などを。場合によっては答えます。その他質問は受け付けます。
そしてこの作品は最強ものみたいなものです。
「(なんでこんな事になったんだ……)」
彼女は心の中で呟いた。 いや、正確には“彼女”の中の“彼”が。
彼女がこう思った要因は少し前に遡る。
彼は普通―というと語弊があるが―の人物であった。ただ一つの点を除けば。
彼は数年前に世を震撼させたゲームである『Wild On-line RPG Lotus Dream』というネットゲームにはまっていた。否、はまり過ぎであった。
通称『WORLD』と呼ばれるこのゲームは自由度の高さが売りであった。世界感はファンタジー一色、自分の分身となるキャラは原則一体まで、とそこまでは一般的なネトゲーと変わりはない。
しかし、自キャラの設定においては選択可能な種族が数え切れない程であり、検索エンジンが搭載されている。
例えば『悪魔』と入力すると古今東西あらゆる悪魔がヒットする為、正確な種族を入れなければならない。勿論一般的なイメージの『悪魔』もあるが。
容姿に声までもが自由に選択可能、勿論種類は恐ろしく多い。
つまりは自分の理想が出来る。
ゲーム内では他のRPG同様に魔物を狩るのもよし、店を経営してもよし、擬似的に家庭を持つもよし、とやりたい放題だ。
しかし一番の特徴は、限界がない事、ステータスが多い事、魔法や特技の開発が出来る事である。
限界がないというのは、レベル上限がない事を意味する。レベルアップに必要となる経験値とステータスが上昇値の割合が種族別に決まっている、という関数が組み込まれているだけだからだ。
しかし、隠しステータスとして戦闘経験というものもあり、レベルアップ時にこの数字の多さでステータスの上昇値が増えるといったものだ。基本的にはたくさん戦えばたくさん蓄積される。
ステータスが多いというのは、体力、力……などあるが、力一つをとっても腕力や握力や脚力などがS、A、B……Kとランク付けされている。
また、装備品には例えば重量が独自に設定されていて、それによって高レベルの鎧などの装備はレベルが低いと動けなくなるといった様な補整がかかったり、と面倒なレベルに達する。
魔法の開発とは、文字通りだ。魔法は正確には名前とMP消費量と効果をGMに申請、後に許可が下りて設定すれば使える。勿論、運営側が作ったものもいくらかあるが。
特技の開発は少し違う。このゲームには補助スキルしかない。一定時間足が速くなる、一度に複数魔法を使える、などだ。
特技はスキルや魔法の組み合わせを一体化し名前を決める事で容易にでそれらを行える様になるショートカットみたいなものだ。なので特技を持たずにアナログで行う者も少なからずいる。
さて、彼はというと有名なプレイヤーであった。古参の割には低レベルであったがステータスだけは破格。特技はなし。とまでは一般的な見解。
彼は周りに隠し、たった一つの魔法を開発し、それ以外は運営側の開発した魔法しか使わなかった。
そんな彼はある日謎の昏睡状態に陥り、そのまま息を引き取った。
そして、目覚めると赤ん坊であった。
「あぅ?(ここはどこだ?)」
自我とともに前世の記憶が蘇った彼は眠ってしまったのであった。