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Sacred Flame of Darkness  作者: カラクリ/あわぞー
第六章  咎めの闇編
82/83

第80話  『アース』の人間は皆

「こぉぉんにぃちはぁぁぁぁ!!」

 

 カレンとダルトが部屋に入ると、いきなり大声で叫ばれた。

 叫んだのは地面に付くほど長い白髪の男だ。

 前髪で顔は全く見えない。

 その隣には鼻から左頬にかけて傷跡がある、セミロングの赤い髪の女性がいる。

 

「来たね来たよ来まぁしたねぇぇぇ!」

「うるさいぞ、ローデスク。これ達はあれ等を倒すだけだ。少し黙れ」

「はっはぁぁい!了解しまぁしたぁぁぁ!リィィオォナさぁぁん!」

 

 ローデスクと呼ばれた男は相も変わらず黙ろうとしないが、元から本当に黙らせる気は無かったのか、リオーナと呼ばれた女性はそれ以降何も言わない。

 

「殺し合いを始めようか。ああ、別に名乗らなくても良い。物の名など一々覚えている暇はない」

「……何なのコイツ等」

 

 カレンが呟いた瞬間、部屋が真っ二つに割れた。

 否、分裂した。

 

「―――――っ!」

「な、何だ!?」

「『セットアップルーム』。ローデスク、それは任せたぞ」

「まぁぁかさぁれ―――――」

 

 最後まで言い終らぬうちに、部屋は完全に二つに分裂した。

 

(幻覚……では無さそうね。だとしたら物を分裂させる能力……?)

「考えている暇は無いぞ」

 

 リオーナが言った瞬間、カレンの足元から刃が飛び出し、カレンの足を貫く。

 これは比喩ではなく、本当に刃が飛び出したのだ。

 

「なっ―――――!」

「これの力は最強だ。これには勝てない」

「……あー、めんどくさっ」

 

 刃から足を引き抜く。

 血が溢れ出る。

 

「最強?なら私は最最強よ」

 

 案外子供っぽい返しをするカレンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう片方の部屋で強烈な音が響く。

 そしてローデスクが吹っ飛ぶ。

 

「がっはぁぁぁ……痛いぃぃぃ……!」

「……何だコイツ……弱いな」

「だけど負けるわけがナァッシィィング!」

 

 ダルトにとって、ローデスクはあまり得意なキャラではなかったのだろう。

 

「……一気に終わらせる」

 

 初っ端から破動を使った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地面から飛び出す刃を躱しながら、カレンは少しずつだがリオーナに接近して行く。

 

「案外避けるのだな」

 

 これはカレンをバカにした言葉ではない。

 先程足を貫かれたにも拘らず、ここまで動ける事に驚いているのだ。

 

(何故此処まで動ける……?)

「くら―――」

 

 カレンは槍を振りかぶる。

 まだリオーナとは5m程距離がある。

 

「えぇッ!!」

「………?」

 

 その場でカレンは槍を振り抜いた。

 というより、素振りをした。

 当然当たる訳が無い。

 カレンの槍は約2m、腕の長さを入れてもリーチは約3m。

 

「何をして……」

「隙ありぃ」

 

 そう言うや否や、カレンは動き出していた。

 槍を地面に落としての全力疾走。

 そして、全力疾走の勢いをそのまま拳に乗せ、リオーナを殴り飛ばした。

 

「よしっ!」

「ぐっ……、貴様……!」

「ん、それはやっと私を人間と認めてくれたって事なの?」

「………ゴミが」

 

 一瞬、リオーナの体から黒い靄が出る。

 しかし、突然部屋を包んだ光によって、二人の視界が遮られる。

 その光が小さな爆発を起こすと同時に二つの影が飛び出してきた。

 

「がぁっはぁ……!」

「ッ………」

 

 二つの影はダルトとローデスクだった。

 どちらもボロボロだが、ダルトの方が傷は深そうだ。

 

「もう終わったのか?」

「もうすこぉしでぇぇす!!」

「……そうか」

 

 リオーナもローデスクのテンションは苦手なのだろう。

 一瞬本気で嫌そうな顔をした。

 

「ちょっ、アンタ!大丈夫なの!?」

「大丈夫とは、言い難い……」

 

 カレンはダルトとローデスクを交互に見る。

 二人の様子からして、力はほぼ互角。

 カレンはそう考えたが。

 

「言っておくが、互角なんかじゃない……。途中までは、勝っていた。だが、アイツの能力、アレは相当に厄介だ……一撃で、このザマだからな……」

「……ったく、面倒なのが増えたってことね」

 

 カレンの考察。

 リオーナの能力は、この部屋を自由に扱えるというもの。

 ただし、本気を出していないのか、出来ないのかまでは解らないが、大仰かつ繊細な操作はできないようだ。

 その証拠に、自分が立っている地面以外の全ての場所から刃を出すという、最早最強ともいえる技を繰り出していない。

 

 そしてローデスクの能力。

 これはダルトの話を聞いただけなので、一撃に重点を置いた何か、という事しか解らない。

 だがこれだけで、情報は十分とは言わないまでも、足りている。

 

「つまり、気を付ければ良いのはあの男の攻撃だけ。あの女の攻撃は大した事ない」

「ほぅ、ならば―――」

 

 リオーナは細い目を更に細めて言った。

 

「後は全て、ローデスクに任せよう」

 

 そして、天井が崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大丈夫か?」

 

 ダルトが崩れてきた天井を全て粉々にして、二人は助かった。

 瓦礫の重さで床が抜け、一階まで落ちたようだ。

 と言っても、元いた階は一階だが。

 

「私は大丈夫だけど、こんな事したらアイツ等……」

「アイツ等が、何ですってぇぇぇ?」

 

 ローデスクは瓦礫の中心に立っていた。

 立っているのもやっと、という感じだ。

 

「………あの女は?」

「リオーナさんですかぁぁ?その辺でぇ潰れちゃってるんじゃあないんですかぁぁ?」

「……あぁ?」

 

 何を言っているんだ、と思った。

 仮にも、いや、仮でなくとも、仲間だったのに。

 

「………のかよ」

「すいまっせぇぇぇん!聞こえませんでぇぃしたぁぁぁっ!」

「……仲間じゃ、なかったのかよ」

「仲間でしたよぉぉ?仲間だからこそ、私にぃ任せてくれたんでぇぇすよぉぉ!」

「お前―――」

「流されるなよ」

 

 ダルトは冷たく呟く。

 だが、それはしっかりとカレンの耳に届いていたようだ。

 

「『アース』の人間は皆こんな奴だから困るんだ」

「……どういう事?」

「自分の仲間がやられたら怒る。これは普通だ。だが、自分達とは全く関係ない奴等も、自分達と同じだと思っている」

「……………」

「つまり、他人が仲間を傷つけたら、怒ってしまう」

 

 一番分かりやすいのはカインだ。

 彼は、『聖冠団』での過去も相まって、"仲間を大切にしたい"という気持ちが強い。

 

「正直怒られる方からしたら、迷惑だし理不尽だし鬱陶しい。自分達の考えを押し付けんな」

「別に、押し付けてなんか……」

「と、ユーレン隊長が言っていた」

「ここで人のせい!?」

 

 ダルト自身も少なからず思っているだろう。

 

「別にどう思われようと構わない。私はイラッと来たからアイツをサクッとぶっ飛ばすだけ」

「それこそ、理不尽だろうけど―――」

 

 右肩を回す。

 ちゃんと動く。

 左肩は……動かせない。

 脱臼してしまったのだろうか。

 

「まぁ、こっちだけ動けば、十分か」

「……準備オーケー?」

「万全じゃあ、ないけどな」

「アイツ、倒すわよ」

「ああ……」

 

 丁度、話が終わった所で、ローデスクが笑いだした。

 全身から黒い靄が出ている。

 

「体の中に、闇族ゲルティアか……」

「来るぞ!」

 

 次の瞬間、ローデスクは跳躍した。

 手には大きな瓦礫。

 

「はははぁぁあぁぁぁあああ!!」

 

 勿論、それを二人に向かって投げ落す。

 

「避けるな!!」

 

 カレンはその言葉通りに、その場を動かない。

 ダルトは右手に力を込める。

 

「はぁぁあああ!!!」

 

 ダルトの突きで、瓦礫は粉々に砕け散る。

 それと同時にダルトの右腕も砕ける。

 だが戦いの最中にそんな事は一々気にしていられない。

 ローデスクが降りて来るであろう上空を見上げる。

 しかし、既にローデスクの姿は空中に無かった。

 

「こっちでぇぇすよぉぉ!!?」

「え……?」

 

 カレンの背後、ローデスクは腕を伸ばしていた。

 ローデスクの人差し指とカレンの背中まで、後30㎝。

 

「そいつに触られるな!!」

「遅いでぇぇす!」

「っ……!」

 

 触れられた。

 ただそれだけで、カレンは吹っ飛んだ。

 吹っ飛んで、瓦礫に激突した。

 

「『カウントカウンター』。自分が受けたダメージを、そのまま返して差し上げましたぁぁ!」

 

 だから、ダルトの方が傷だらけだったのだ。

 ダルトが付けた傷の分を、ダルト自身が返されていたのだから。

 正確には、上乗せされていたのだから。

 

「かはっ………」

 

 ローデスクは血を吐き出す。

 先程までの傷が響いている、訳ではない。

 いや、それもあるだろうが、腹に深々と刺さった槍の傷のせいが一番大きい。

 

「なぁああぁぁ……?」

「ただじゃ、やられない、か……」

 

 重たい右腕を、必死に上げ、外れていた左肩を治す。

 次が、最後の一撃。

 

「いくら返そうと思っても、やられちゃ返せないよな」

 

 左手でしっかりと槍を掴み、逃がさない。

 

「終わり―――」

 

 右腕を振りかぶる。

 痛みなど、関係無い。

 

「だァッ!!」

 

 ダルトの拳がローデスクの顔面に突き刺さり、吹っ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダルトは瓦礫を足でどけて、カレンを捜している。

 

「……大丈夫、か?」

 

 輝力が尽きたのだろう。

 破動が解けて、口調も元に戻っている。

 

「大丈夫とは、言い難い……わね」

 

 そう言う表情は少し笑っている。

 

「終わった、ようね」

「……ああ、終わった」

「あー……なんか、締まらない……勝ち方ね」

 

 納得いかないわ、そう最後を締めくくって、カレンは目を閉じた。

(風見燈環)

「約一ヶ月半も待たせてしまって申し訳ありません。今後も今回の様に遅れてしまう事があると思いますが、ご了承ください」

(カイン)

「理由も言わずにそれは勝手過ぎんだろ」

(風見燈環)

「理由は、学校が忙しくて……」

(カイン)

「何だって?」

(風見燈環)

「学校が……」

(カイン)

「何だって?」

(風見燈環)

「がっ……」

(カイン)

「な、ん、だっ、て?」

(風見燈環)

「……すいませんでした!!」

(カイン)

「まぁ良いや。次回もお楽しみに」

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