第76話 出発
カインはとりあえず、頭の中を整理する為に家に帰った。
蟹座、クラビス・オールメスはタダで死んだわけではなかった。
クラビスは30人の『闇の幻影』に襲われたのだ。
クラビスが魔術師なので、多人数で攻めた方が良いと思ったのだろう。
魔術師は基本、後方支援。
1対30等、幾ら13星座の一人と言えど、勝ち目はかなり低かったのだ。
しかし、先程も言ったようにタダでは死ななかった。
29人を道連れにしたのだ。
そして、残った1人に発信魔術を付けたのだ。
発信魔術とは、ものの居場所を特定の受信機に発信するという物。
そのおかげで、『闇の幻影』のアジトの場所の特定が出来たのだ。
そして、明日、大地を照らす13星座の総力を挙げて『闇の幻影』を叩く事になった。
それに、13星座の部下の破動輝流士も参加する事となった。
つまり、『アース』のカイン、リーフ、カレン、クラウン(スランは負傷の為参加せず)や『聖冠団』のアルバシスや、ダルトも参加する事となったという事だ。
「ただいま」
カインは力なく挨拶をして、家に上がる。
すると、リリカが誰にでも解る位焦って走ってきた。
「カイン!大変!!」
「どうした?」
「スランが!いなくなったの!!」
「……別にアイツなら大丈―――――」
その時気付いた。
もし、スウェルの部屋での会話を全て聞いていたとしたら。
いくらリリカが治療したとはいえ、完治どころか、深い傷は激しい動きをすればまた開いてしまうだろう。
彼は恐らく、止められると思ったのだ。
いや、実際に止めるが。
今回の件は、スラン自身に大きく関係している。
自分には何も関係が無いのなら、無理して行こうとはしないだろうが、今回ばかりは違うのだ。
「あのバカ……!!」
カインは家を飛び出す。
スランを見つけるのはかなり難しいだろう。
彼の耳の良さは正直、捜す方としては厄介だ。
なんせ、足音を聞きわけ、近付いても逃げられてしまう。
だが全て、万全の状態だったらの話だ。
とは言っても、見つけるには苦労した。
あの傷では遠くまでは行けないだろうと、高を括って近くから捜し始めたのだが、案外遠くに居た。
「捜したぞバカヤロー……」
「捜すなよバカヤロー」
スランはベンチに座っていた。
顔色が悪い。脇腹は血が滲んでいる。
「傷開いてんじゃねぇか。ほら、帰って治療してもらうぞ」
「こんなのツバ付けときゃ治る」
「よし、じゃあさっさと付けろ。そして帰って治療してもらうぞ」
「お前はオレの何なんだ?母親か?」
「せめて父親だろ」
「世話を焼かすな」
「お前がな」
頭に血が回ってないのかもしれない。
いや、普段からこんな感じと言えばこんな感じなのだが。
「……全部、聞いてたんだろ?」
「それはどうかな。オレは何も聞いてないし、何もしていない。無罪だ」
「全て聞いてるし、実際に逃げ出してる。有罪で執行猶予なしだ」
二人は睨みあう。
スランは脇腹を抑えながら立ち上がる。
カインが支える為に近付こうとするが、顔の真横を音の衝撃波が飛んで行った。
「分かってんなら誤魔化さなくて良いか。そうだ、全て聞いてた。そして、オレは行くぞ」
「勿論俺は止める」
「言っとくが、説得しようと思ってんなら無駄だぞ」
「だろうな。だから―――――」
カインは右手に青い炎を灯して言った。
「ぶん殴って止めてやる」
結果だけ言うと、ドローだった。
というのも、スランがすぐに貧血で倒れたからだ。
「ただいま~……」
カインはスランを背負って来たのだが、男一人を運ぶのが案外辛かったようで、スランを下ろすと、そのままうつ伏せに倒れた。
「きゃぁぁっ!!!」
「あ?」
カイン達を見たリリカが叫び出した。
正確には、カインを見たリリカが叫び出した。
「何だよ」
「な、何って……背中大丈夫なの?」
「背中?」
背中を見てみると、スランの血で真っ赤だった。
ここまで背負って来たのだから当たり前だ。
しかも、この状態で倒れていた為、背中をザックリやられたと思ってしまったのだろう。
「俺は普通に大丈夫だからスランの治療を頼む……」
「だ、大丈夫じゃないわよ!」
どうやら、台詞的に重傷を負っていると本当に思われてしまったようだ。
この後、誤解を解くのにおよそ10分掛かったそうだ。
翌日。
「ほんなら、準備はエエか?」
スウェルが振り返った先には、カイン、リーフ、カレンがいた。
「……で、何でクラウンはおらんの?」
「いや、俺は知らねぇけど」
「私も同じく知りません」
「つーか、アンタが知らねぇのに俺達が知るかよ」
「それもそうやな」
このまま待っていると、時間に遅れるので出発する事になった。
しかし、ここでの彼の不在は、この後、色々な波乱を起こす事になってしまう。
「ほな、行くで」
「ああ」
「ええ」
リーフ、カレンに続いてカインも無言で頷く。
そして、四人は歩き出した。
(雪龍)
「あ~、この章も長いよ~」
(カイン)
「では訊こう。予定では何話だ?」
(雪龍)
「今回入れずに12~14!」
(カイン)
「長ッ!何故だ!」
(雪龍)
「バトルの後も数話会話が続くような展開の予定~」
(カイン)
「マジか」
(雪龍)
「しかもバトルなんて色々省いて9話予定だよ?」
(カイン)
「おぉ……しかも今回は13星座のバトルがあるからな」
(雪龍)
「……ふぅ、未来の話はやめよう。えーっと、行間章のアイディア待ってます。なんなら活動報告の方に書いてもらっても良いんで」
(カイン)
「次回もお楽しみに」