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Sacred Flame of Darkness  作者: カラクリ/あわぞー
第六章  咎めの闇編
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第74話  闇の幻影

 スウェルの部屋。

 スウェルがソファに寝転がっている。

 その向かいに座っているのは…。


「ウェルちゃんよー、客人がいるのにゴロゴロしてんのは頂けねーなー」


 アポンだった。

 その隣にはスウェルの知らない少女がいる。


「うっさいねん、あたし今日気分悪いんや。それにアンタに態度について文句言われたないわ」


 尤もである。


「……てかその子誰やねん」

「コイツ?おい、自己紹介しろ」

「はい、私はネラ・サーティンと言います。よろしくお願いします」


 礼儀正しい少女だった。

 何故アポンと一緒に居るのかが謎だ。

 こんな礼儀正しい子が。

 大切な事なのでもう一度、こんな礼儀正しい子が。


「どっから拾ってきたんや」

「拾って来たなんて失礼な。オレを殺そうとしたから、二度とそんな事できねーように調教しただけだ」

「調教だなんて……」

「何で顔あこうなっとんねん。調教の意味わかっとんの?」

「間違えた、雇ったというのが正解だ」


 ネラを雇った経緯を説明しよう。

 その中に何故アポンが生きているのかも含まれている。











「血の雨も苦手なもので、ね」


 アポンの体が縦に両断された。


「しょーもなかったなぁ……」


 少女が踵を返し歩き出す。

 この少女こそネラである。

 三歩目を踏み出した所で、背中に激しい衝撃を感じ、ネラは吹き飛ばされる。


「いきなり一刀両断とか……ご挨拶過ぎんだろー」

「なっ、何故…!?」


 恐怖。

 ただ単純に怖かった。


「何故?それは何故オレが生きてるかって事?それとも何故攻撃されたかって事?」


 アポンは笑みを浮かべてネラに歩み寄る。

 ゆっくりと、ゆっくりと。

 その時間がネラの恐怖を増大させていく。


「優しいアポンさんが、一つずつ答えてやんよー。お前が斬ったのは俺の身代り木製人形(ウッドスケープゴート)。つまりオレの身代りだ」


 よく見れば、先程斬ったアポンはただの木だった。

 慢心からか、ちゃんと確認しなかったのが間違いだった。


「後何故攻撃したかだっけかー?そんなん理由なんてねーよ」


 ネラの目の前までアポンが来た。

 そしてそのままアポンはネラの頭を鷲掴みにする。


「敵だったら攻撃すんのが当たり前だろー?それともアレ?自分が女だから攻撃されないと思ったかー?」

「ひ、ひぃっ!」


 ネラはアポンの手を振り払って立ち上がり、走り出す。

 敵を目の前にして逃げた。

 元々、一発で仕留められなかったら逃げるつもりだったのだ。

 だが、そんな事を考えるよりもまず、怖かった。

 殆ど棒読みで無表情、それだけでも十二分に恐怖心を煽るだろう。

 その上、歩み寄ってくる時の時間。

 その長い時間が、恐怖を増大させたのだ。


(なっ…何だアイツ…!)

「おいおい、そんな必死に逃げるなんてショックだわー」

「っ―――!!」


 木の枝にアポンが座っている。

 ネラの顔から血の気が引いていく。


「てか、オレのテリトリーに入った時点で―――――」




「逃げられると思うなよ?」


 その言葉を聞いて、ネラは腰が抜けた。

 足に力が入らなかった。

 それ程の恐怖。


「い…嫌だ……死にたくない……」

「あーあ、女の子を泣かせるなんてオレはなんていけない奴なんだろー」

「ゆ、許して……許して、ください……」

「許す、ね。別に怒ってるわけじゃねーよ」


 アポンは木の枝から飛び降りる。

 それと同時に周りにある全ての木が、二人を囲んだ。


「ただ、色々聞こうと思ってさー。それに、お仕置きが必要だし」


 アポンがニィッと笑う。


森羅磐衝しんらばんしょう―――――」











「それでその後色々あってコイツを雇ったんだよ。丁度何でもしてくれる人間・・の従業員が欲しかったからなー」

「色々って……一番気になるんやけど……」

「18歳未満には見せられないような事をした」

「作者18歳未満やけど!?」


 メチャクチャだ。

 アポンにとってそんな事お構いなしだろうが。


「まぁ、そんな事はどーでも良いんだよ。それよりもオレがコイツを何で連れて来たかって話なんだけどな」

「どーでも良いわけやないけど」

「コイツ、あいつ等の下っ端だそうだ」

「あいつ等……まさか……」

「ああ、闇の幻影(ダークネスシェイド)。鬱陶しいゴキブリみてーな奴らだよ」

「……そうか」


 闇の幻影。

 大地を照らす13星座シャイニングゾディアックが総力を挙げて潰そうとしている組織。

 だがその名の通り、幻影のように、あたかも元から存在しないように、直ぐに消えてしまう。

 なので大地を照らす13星座と言えども簡単に潰せないのだ。


「ほんまなんか?嬢ちゃん」

「はい」

「ってことは……嬢ちゃんも?」

「ああ、そう言う事だ」


 闇の幻影は人殺しを繰り返す。

 何の罪もない人、正確に言うと輝流士を。

 しかし、不謹慎な言い方だが、そんな事だけでは大地を照らす13星座は動かない。

 問題は他にあるのだ。

 それは…。


「コイツも、闇族ゲルティアを体に宿している」


 体に闇族を宿している事。

 それが一番の問題。

 闇族と手を組んだ人間。

 同時に人間を敵と見なした者達。


「ま、コイツの場合ギリギリ間に合ったけどなー。でも他の奴らはそんなんじゃねーだろ」

「はい、他の方々は完全に心を支配されています。私はあまり力を使わないようにしていたので……」


 闇族を体に宿した者は、闇族に心を支配されて行く。

 つまり、考え方や感情が闇に堕ちていく。

 だが力を使わなければ、支配されるスピードは遅い。

 ネラの場合、完全に心を支配される前にアポンが闇族を倒したのだ。


「………///」

「アポン君、ほんまに何したんや。何でこの子顔あこうなんねん」

「それはな―――――」


 その時、ドゴォンと激しい音を立て、壁が崩れた。

 スウェルの部屋が破壊された。


「よォよォ、ネラちゃん、何してんのさぁ」


 銀髪のツンツン頭の長身の男が言う。

 手には漆黒の大鎌。


「まさか寝返っちゃったのかい?」

「バ、バレンシー様……」


 ネラの声が震えている。

 そしてその隣でアポンが震えている。


「おい…バレンシーとやら……」

「んん?アレレ、大地を照らす13星座、元蛇遣い座(オフィウクス)のアポンさんじゃあ、あーりませんか」

「お前……バカな事を……」

「はぁん?」


 その瞬間、空気が震えだした。

 スウェルは立ち上がり、眼鏡を外した。


「な、何だこれ……なんつー輝力だよ…!!」

「いやー、残念だったねー、バレンシーとやら。いや、噛ませ犬の方が良いか?」


 一瞬だった。

 バレンシーが潰された。

 正確に言うと潰されたのは両足だけだ。

 右腕は肩から下がもぎ取られ、左手は曲がってはいけない方向に曲がっている。

 内臓は幾つ破裂したかもわからない。

 骨も幾つ折れたか解らない。

 口からは血を盛大に吹きだし、いや、体中から血は吹き出ている。

 人間の体にこれほどまでの血があったのか、と言う位に噴き出している。

 おかげでバレンシーの周りは血の海状態だ。

 それらを総じて、潰された、と表現した。


「あー腹立つわー。どないしてくれんねんコレ。壁は壊すわ、床を血で汚すわ……責任取ってくれるんか?」

(鬼だ……この世の何よりも鬼に近い存在だ……)


 アポンは初めて見るこんなスウェルに、少なからず恐れている。

 ネラに関しては泣き出してしまう始末。


「今日気分悪いのに機嫌まで悪うしてあたしをどうしたいねん、アホ」

(コ、コイツ……まさか、大地を照らす13星座の魚座ピスケズか…?)

(戦争の時でもあんま怒らなかったって聞いてたけど……まさかこんな所で怒るとは)

「ほら、後ろの二人も怯えてもうたやないかい。ホンマどうしてくれんねん。年下の女の子泣かす趣味なんて無いんやけど」


 彼女は自分の部屋、つまり憩いの場を敵に壊された。

 まだ知っている者ならここまで怒らなかったろうが、敵に壊された。

 更に気分の悪さも相まって、完全にスイッチが入ってしまったのだ。

 いや、完全にスイッチが切れてしまったのだ。


「こ…殺、せ……」


 流石にここまでやられては何の抵抗のしようもない。

 いっそ殺してもらった方が楽だ、と考えたのだろう。


「あ?聞こえへんわ、何て?」

「殺―――――」


 グチュッ―――――

 今度こそ、何の比喩でもなく、本当に潰された。

 もう何の跡形も残っていない。


「あーあ、ホンマに殺してもうた。殺す気なんて無かったのに殺せなんて言うからやで?アンタには色々やってもらわなアカン事あったんやで?情報聞き出したり、掃除させたり……」

「お、おい、もう聞こえてねーぞ?」

「あ、そう言えばそうやな。いやぁ、何の責任も取らずに死ぬやなんて無責任な奴やなぁ」


 スウェルは振り返ってにっこりと笑顔で言う。

 ひとしきり暴れてすっきりしたのだろうか。


(ヤベェ、スゲェ怖ぇよ……今度からウェルちゃんに対しての調子に乗った言動はやめとこう……いや、ウソだけど)


 スウェル・マクシード。

 大地を照らす13星座の魚座。

 13星座の中で最も陽気で、最も脅威的な女傑。

 それが彼女だ。

(カイン)

「ボス怖…!」

(雪龍)

「でも滅多な事が無いとあんなに怒らないから、大丈夫だよ」

(カイン)

「その大丈夫の意味が解らないんだが」

(雪龍)

「仲間だととても頼りになるってことだよ」

(カイン)

「ま、まぁそうだな」

(雪龍)

「とまぁ、いきなり急展開でしたが、次回もお楽しみに」

(カイン)

「行間章のアイディアは、この章中はずっと受け付けてるからなー」

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