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Sacred Flame of Darkness  作者: カラクリ/あわぞー
第五章  『せせらぎの宿』編
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第67話  木製人形の逆襲 後編

 根っこは蒼い炎に包まれ燃え尽きる。

 

「くそッ!くそッ!くそォッ!!」

「カインさん!」

 

 カインは根っこを全て燃やしつくそうとしている。

 文字通り、根絶やしにするつもりだ。

 

「何で!何でだよ!」

「カインさん!落ち着いてください!もう根っこはいません!」

 

 どうやら怒りで周りが見えていなかったらしい。

 このままでは先程リルに言われた言葉を守れない可能性がある。

 ―――――勢い余って宿屋ごと燃やさないでくださいね?

 

「……笑い事じゃねぇな」

「落ち着いてください。まだ皆生きてるかもしれません。いや、生きてます」

 

 年下の女の子に諭されるとは思わなかったろう。

 

「……そうだな。あのバカ共がこんな所で死ぬわけねぇよな」

「そうですよ」

 

 その時だった。

 今立っている床が根っこによって破壊されたのだ。

 そのままカインの足に絡みつく。

 

「なっ!ここ一階だぞ!?何で下から……そう言う事かよ……」

 

 そう、そんな事は関係ない。

 根っこは普段土の中で栄養分や水を吸収している。(土の外にあるのもあらしいが)

 下から攻めてきてもおかしくはないのだ。

 

「くっ……」

 

 カインは炎を体に纏うが、燃え尽きるより早く、根っこが体全体を覆ってしまった。

 

(……ち、くしょう………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひとーつ、ふたーつ、みーっ……

 

「―――つ!!!」

「グブッ!!」

 

 カインは頬への衝撃と奇声と共に目を覚ました。

 視界がぼんやりする。

 

「やっと起きたか。カインはホンマよー寝るなぁ」

「ボス…?」

 

 目ではあまり確認できていないが声からしてスウェルだという事は解った。

 頬への衝撃はスウェルのビンタによるものだろう。

 

「これ、夢か…?」

「起きとんのに夢見とんの?器用やなぁ」

「夢じゃない?じゃあ何で……」

 

 根っこに覆われてからの記憶が無い。

 ドアが開いて当然のようにアポンが入ってくる。

 

「え?アポンま―――でっ!?」

「呼び捨てはねーだろ。クソガキ」

 

 アポンの鉄拳制裁。

 

「ちょっ、えっ?何で?何で普通に出てきてんの?前回のラストであんなカッコ良く俺達を守って根っこにやられたのにのに何で普通に出てきてんの?」

「うるせーな、オレが折角守ってやったのにテメェは結局やられてんじゃねーかよ」

「途中からアポン君本気出しとったやないか」

「えー?何か言った?スウェルさん(・・・・・・)?」

「な、何も言うてへんよ」

 

 アポンがこう呼ぶ時は逆らってはいけないのだ。

 

「ど、どういう事?説明してくんない?意味解んないんだけど」

「しょーがねーな。じゃあしっかり地の文読めよ」

「地の文?コイツ何て事言いだしてんの?」

 

 そうだよ。何で僕が……

 

「何か言った?」

 

 ……何でもないです。

 説明しよう。

 今回考えていた行事とはドッキリもどきである。

 内容は『根っこで襲うふりをする』という物。(年下にのみ実行)

 起きた者から順に引っかけていたのだが、カインとリルが中々起きなかったのだ。

 そこで、アポンはリルを根っこで突いて起こしてカインの部屋に突っ込むように誘導したのだ。

 

(リルって普段早起きなんだけどな……相当疲れてたんだな)

 

 因みに途中からアポンは本気でカインを倒そうとしていた。

 

「おい!どういう事だ!?」

「そういう事だ。解ったか?ああ、解んねぇか?その落ち葉並みの頭じゃ」

「生き物ですらない上に枯れてんじゃねぇか!!」

「どーでもエエけどとりあえず宿に帰らへん?お腹空いてもうたわ」

「そーだな。カインとか言う落ち葉の事は放っといて帰るかー」

「落ち葉は断定なのか!?」

 

 カインが寝過ぎていた為、戻れたのは夜の8時だったのだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、『アース』一行が帰る日。

 

「ほんならあたしらはもう行くわ。また半年後やな」

「おー、客なんて滅多に来ないからいつでも来いよー」

 

 それはどうかと思うが。

 

「ほななー」

 

 そう言って手を振りながら遠ざかっていく。

 やがて全員見えなくなる。

 

「さーて、半年グータラするかなー」

「すいません、宜しいですか?」

「ん?」

 

 アポンが宿に入ろうとすると、後ろから声をかけられる。

 声からして女性だ。客だろうか。珍しい。

 

「おい、人と話す時くらい笠取れよー。その辺に生き埋めんぞ?」

 

 話しかけてきた少女は笠を被っており顔はよく見えない。

 長い銀髪が風に揺れている。身長はアポンと同じ位だろう。

 しかし、客に対していきなりこんな事を言うとは…。

 

「申し訳ありません。日差しが苦手でして、それに―――」

 

 少女は踵を返す。

 手にはいつの間にか長い刀が鞘に納められて握られていた。

 

「血の雨も苦手なもので、ね」

 

 少女が言うと、アポンの体が―――――

 

 

 

 

 

 縦に、両断された。

(カイン)

「おい……アポンやられてんぞ」

(雪龍)

「大変だね」

(カイン)

「ああ、大変だ」

(雪龍)

「そう言えば次回からは行間章だよ。カイン君、暫しの間休憩だよ」

(カイン)

「そうか」

(雪龍)

「あれ?何も言わないの?」

(カイン)

「最近こう思うようになったんだ。俺にも休憩が必要なんだって」

(雪龍)

「そうなんだ……でも行間章でも君の出番が全くないわけじゃないんだよ?」

(カイン)

「そうか。まぁその時まで休憩しとくよ。では、次回もお楽しみに」

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