第62話 もう誰も失わないように
夢を見てた。
何処かの戦場、何時かの戦争、その中心にカインはいた。
光の者達も、闇の者達も全て等しく燃えている。
燃えていないのはカインだけ。
「お前…何者だ?」
金髪の男が話しかけてくる。
その周りには12人いた。
「俺は―――――」
カインは目を覚ました。
何処かのソファ。傷は応急処置はしてくれている。
「一体誰が……」
「お、目覚ました?元気?……元気な訳ないか」
長い赤髪で眼鏡を掛けている女性が話しかけてくる。
恐らく彼女が治療してくれたのだろう。
「待っとってーな。さっきリリカ呼んでんやけどまだ来ぇへんねん」
「ここは…?」
「ここはあたしんちや。マンガとはちゃうで?」
「何…言ってんの?」
カインは起き上がって女性を見る。
一見隙だらけのようで全く隙がない。
「あんた……何者だ?」
「ちょっ、命の恩人にその言い方はないやろ。川に流れとった君を引き上げて折角助けたったのに。まぁええわ、あたしはスウェル・マクシード。セーブ『アース』のボスやってんねん」
セーブという言葉にカインは反応した。
もしかしてリーフが所属しているセーブではなかろうか、と思ったのだ。
「なぁ、リーフ・クリークって奴知ってるか?」
「君リーフの知り合い?知ってるけど……君一体誰や?」
「カイン・クリーク。リーフの兄貴だ」
「おぉ!君がカイン君ね。『聖冠団』におるんやなかったっけ?」
「訳あって追われてる」
「訳って……言えへん事?」
「いや、別に」
カインはこの前あった事を全て話した。
何故かこの人なら話しても良い気がした。
会ってすぐのこの人を信用した訳では決してない。
「『聖冠団』にそんな事があったとはなぁ……」(ウィン君も大変やろなー)
ほぼ同時刻、『聖冠団』。
団長室のソファに黒髪の少年とアルバシスが向かい合わせで座っている。
「今日から僕が団長になるから。よろしくね」
「えーと……ウィンツさんですよね?」
「おっ、知ってたか。そうそう、そのウィンツさんだよ」
「何故こんな所に?」
アルバシスはウィンツの事を知っている。
あの戦争に参加していたのだから大地を照らす13星座の事位なら知っている。
「いやぁ、今回の事件で国王直属の部隊じゃなくなっちゃったじゃん。でさ、大地を照らす13星座の中で何か部隊を持ってないのって僕と獅子座だけなんだよ」
「……だから団長になると?」
いくら大地を照らす13星座と言えどもこんなふざけた理由で団長にする気はなかった。
しかもこの人なら追い返した所で怒ったりなどしないだろう。
「そんな理由で団長にさせる訳ないでしょう。いくら貴方でもね」
「いやいや、それは二の次だよ。本当の目的は君達を纏める事だよ」
「……?」
「団長、副団長、第二部隊団長、第三部隊団長が一気に居なくなったとなったら全員そわそわしてるんじゃない?」
そんな事は誰もが解る。
だがそんな時だからこそふざけた理由で団長にする気はなかった。
「後さ、事件の事皆に話しちゃったよね?」
「はい、まぁ」
「それは良いんだけど。カイン君達を助けたいなら事件があった当時の隊長以外の記憶を書き替えて」
「なっ!?それはどういう……」
「僕の予定だとカイン君は魚座のウェルちゃんの所にいる筈なんだよね。数年後、そこのセーブと本格的なゲームをしようと思う。そこでみんなの記憶を戻せば良い」
ウィンツはテーブルのコーヒーを少し飲む。
そして苦そうな顔をした。
ブラックは苦手だったようだ。砂糖を大量に入れている。
「それでカイン達を助けられると?だが彼らは『聖冠団』には戻って来ないでしょうよ」
「そりゃそうでしょ。だって重罪人だよ?」
「なら助けるとはどう一体…?」
「炎の子を覚醒させる鍵を渡すだけさ」
ウィンツは不敵な笑みを浮かべた。
(果たしてこれが世界を助ける事になるか、滅ぼす事になるか……)
「すいませーん、ボス、来ました」
「早速やけどこの子治してくれへんか」
「解りました」
リリカが治癒系の魔術を発動させる。
するとカインの身体から傷がみるみる治っていく。
「そう言えうちに変な人達が来たんですよ」
「変な人達?」
「はい、何でもリーフのお兄さんの知り合いだっていう男の人と女の子です」
(スランとミラか……)
「そのカイン君がこの子なんやけど」
「えぇ!?貴方がリーフのお兄さん!?何であんなに傷だらけだったんですか?」
「色々あった」
カインはとりあえず君の家に連れて行ってくれと頼む。
もちろん、断る意味がないので連れて行こうとする。
「ちょお待ちぃや。あたしがタダで君を助けたと思うてんの?」
「ちょっ、ボス!」
「いや、良い。それで何が必要なんだ?金か?」
「金ならぎょーさん持ってるっちゅうねん」
スウェルはカインの両手を握って笑顔でこう言った。
「君、あたしのセーブに入らない?」
「……は?」
「要するに『アース』に入ってって言うてんねん。言うとくけど拒否権無いで?」
「……俺はもう、そういうのはごめんだよ」
「……仲間を失いたくないんか?せやから仲間を作らんのんか?それは違うやろ」
スウェルは笑顔から真剣な表情になる。
「仲間を失いたくないんなら守ればええ。ちゃうんか?」
「俺にはもう誰かを守れる力なんてねぇよ」
「ならこれから力を付ければええやんか。誰も失わんように。誰も傷つけんように」
「……俺にそんな事が出来るとは思えねぇよ。けどま、ここまで言われちゃ逃げれねぇよな」
スウェルはカインの手を少し強く握る。
そして再度笑顔でこう言った。
「『アース』にようこそ」
はい!超グダグダ展開だった過去編も今回で終了です!
ふぃー……次回からは少し行間章です。
『アース』のメンバーの普段の生活や、『聖冠団』の内部事情等が見れちゃうかも?(あくまで予定です)
更に新たな大地を照らす13星座も……。(あくまで予定です)
では、次回もお楽しみに!感想待ってまーす。