第60話 PARTING
祝60話記念!
なんてものは無いよwww
アルバシスはかれこれ3時間ほど無言で椅子に座っていた。
カインが何も喋らなくなり少しおかしいと感じたが、大人しくするならそれで良いと思った。
(……寝てんのか?)
アルバシスは何も気づいていなかった。
『聖冠団』の危機にも、カインが既にこの部屋に居ない事も。
カインはどこかの地下室の様な場所に居た。
監禁されていた部屋に抜け道があったのだ。後ろの壁が出口になっていた。
因みにこの抜け道はサボリ癖のあるスランが作ったものである。
いつもここから逃げ出して何処かに行くのだが、誰もそんな事は知らなかった。
「ここはどこだ?どっかの牢屋みてぇだな」
途中で分かれ道がいくつかあったが、ずっと真っ直ぐ進んだ。
「この声、カインか…?」
「スラン?おい、どこだスラン!」
カインはスランの声のした方に走る。
スランは牢屋の中で手枷を嵌められていた。
「一体何があったんだ!?」
「それより前に何故お前がここに居るんだ?」
質問に質問で返すスラン。
カインはここに来た経緯を話した。
その時スランが「思わぬ所で役に立ったな……」と呟いていた。
「俺はこれから王の所に行こうと思ってんだが……ここは城だろ?」
「そうなんだが王の所に行くのは見当違いだ。アイツを裏で操ってる奴がいたんだ」
スランはその者が『聖冠団』の団長になる事も言った。
カインは驚きもあったが怒りの方が大きかった。
「………!!」
怒りのあまり声も出なかった。
カインは走り出そうとする。
しかしスラン「オイ」が呼び止める。
「ここから出したら手伝ってやる」
スランの笑みは天使の物か、悪魔の物か。
「カイン、飯の時間だ。入るぞ」
アルバシスが夕食を持って入る。
しかし、そこには誰もいなかった。
「いない…!?クソッ!」
アルバシスは眼帯をしている左目に手を添える。
そして出てきた黒い球を握り潰す。
頭の中に映像が流れ込んでくる。
「…!!マジかよ」
アルバシスは走り出した。
カインは炎を灯した手で門を破壊する。
ここはサムレングス家の屋敷だ。
かなり広く、この中からブライソルを見つけ出すのは難しいだろう。
だがここにはスランがいる。
「スラン、屋敷の状況とアイツの居場所は?」
「……ブライソルを含めて32人。奴の居場所は……こっちだ」
スランはブライソルの居る方に走り出す。
カインはそれに付いていく。
途中で雇われている傭兵らしき者達が来たが、スランが意識を奪い取っていく。
標的はブライソル唯一人である為、他の人物は殺しはしない。
ブライソルがいるであろう部屋の扉を破壊する。
中には二人が探していた人物がいた。
「ブライソル…!!」
「おや、誰かと思えば脱獄囚と私の部下ではありませんか」
「誰が部下だ…!」
「カイン、オレは外から来る奴の相手をする。コイツはお前に任せる」
そう言うとスランは部屋の外に出る。
「さて、一体何の用ですか?」
「解ってんだろ。テメェを殺しに来た…!!」
「……本当に野蛮ですねぇ。やはり団員は全て変えねばなりませんか」
「安心しろ。テメェは今から死ぬんだよ」
「何を安心すればいいのやら」
カインは一度深呼吸し、心を落ち着かせようとする。
「一つ聞かせろ。何故団長を殺した」
「私は殺していませんよ。ただ命令しただけです」
「……じゃあ聞き方を変える。何故『聖冠団』を乗っ取ろうとしたんだ?」
「ゴミが処分できたんだ。これ以上の事は無いだろう?」
その瞬間、カインの中で何かが切れた。
最も切れてはいけない物だ。
それはカインにとって切れてはいけない物ではない。
世界にとって切れてはいけない物だ。
「クズは燃やしつくしてやる」
カインの髪の色が白く変色していく。
その時点でカイン自身の意識が途切れた。
「何だ…?」
「I burn it exhaustively(燃やしつくしてやる)…!」
カインの体から溢れ出るのは黒い炎。
禍々しく、決して果てる事のない闇の炎。
「な、何者だ貴様―――!!」
「The waste disappear quickly(クズはさっさと消えろ)……」
「くっ、輝力封印の枷」
「It is useless(無駄だ)」
黒い炎は枷を燃やしつくした。
「なっ、何なんだその炎は…!!」
「Burn out(燃え尽きろ)」
カインは焼け焦げた家の残骸の中心に立っていた。
先程までの記憶はおぼろげにしか残っていなかった。
ブライソルの死に際に放った技のせいで力が使いにくくなった感覚がある。
「俺は……」
「カイン!!」
アルバシスが走ってくる。
だが時は既に遅い。
「お前……」
「団長の…敵は取った……」
「……『聖冠団』は一週間後からお前を要注意重罪人として指名手配する」
カインは一瞬目を見開いたが「わかった」と返事をした。
アルバシスも言いたくて言ったわけじゃない。
どんな理由があるにせよ、人を殺めたのだ。
これはもう仕方ない事だ。
「なら、オレもだな」
「スラン…!お前まで」
「オレはカインに付く。文句は言わせない」
アルバシスは奥歯を噛みしめる。
そして踵を返して歩き出した。
「早くこの街を離れろ」
「……ああ、今までありがとう」
こうして、カインとスランは『聖冠団』から離れて行った。
タイトルが英語だったのはカインの力が目覚めようとした時からでした。
そして今回覚醒!黒い炎。
これが後々の物語にどう影響するのか!
次回からは『聖冠団』を出て『アース』に入るまでの話と殆ど、カイン達が抜けてからの『聖冠団』の話が少しあります。
ここまでだいぶ急展開でしたがどうでしたか?
是非感想をください。
では、次回もお楽しみに。