第59話 BROKEN JUSTICE
シエンとスランは城の門に来ていた。
そこで兵に止められる。
「王に話がある」
「幾ら『聖冠団』副団長といえど会いたいで会わせる事は―――――」
「つべこべ言わずに会わせろ」
シエンが言うと同時にスランが兵の首に手を突きつける。
通常の人間なら何をしている、で済むのだろうが、スランは手を高速振動させている。
このまま振りきればこの兵の頭と胴体が離れることになる。
「私達は気が長くないぞ?」
「そーそ。今にも首すっ飛ばしそうだ」
「き、貴様ら、こんな事してただで済むとでも―――――」
その瞬間、シエンが兵を殴り飛ばした。
兵は吹っ飛び、門に激突し、動かなくなる。
「五月蝿いんだよ」
そのまま二人は門を壊して入っていった。
『聖冠団』の副団長と隊長だと言っても、流石にこれは反逆罪ととられてもおかしくない。
だが、これがカインだったら城ごと燃やしているかも知れない。
「……出せよ。もう暴れたりしねぇから」
カインは外に居る人物に話しかける。
しかし外に居る者は何も言わない。
カインは窓がないドアがあるだけの独房の様な所に閉じ込められている。
「お前だってことは解ってんだよ、アルバシス。ここから出せ」
「副団長命令でお前を出すなって言われてんだよ」
外に居る人物とはアルバシスだった。
アルバシスはカインが出て来ないように外で見張っているのだ。
「本当に何もしねぇよ」
「何もする気がねぇならここに居ても良いだろ」
「こんな暗ぇ所、息が詰まってやってられるかよ」
「火で明るくしたらどうだ?」
カインはどうにかして出れないかと考えていた。
ここを出たら真っ先に王の下へ行く。
「言っとくけどここから出ても『聖冠団』総出で捕えろって副団長命令だ」
「そうかよ」
カインの中で怒りが溜まっていく。
この怒りが爆発しないうちはまだ冷静でいられる。
自分は昔から感情の抑制があまり出来ない。
そんな自分がここまで暴走しない事に一番驚いているのはカイン自身だ。
(アルバシスがここから離れたら……一気に抜けよう)
アルバシスではまだ勝てないだろう。
しかし、彼以外ならまだ勝てる可能性がある。
その時を狙っている。
その時、カインが何かに気付いた。
(ん…?何だ?)
床のブロックが少し動いた。
(これは…!!)
シエンとスランは廊下を歩いていた。
彼らを止めようとしてくる兵達を倒しながらここまで来ていた。
その証拠に彼らが進んで来た廊下には兵達が何人、何十人と倒れていた。
もちろん殺してはいない。
「……ここだな」
今二人は玉座の扉の前まで来ていた。
入って来た時からそうだが、もう捕まっても言い逃れはできない。
スランが扉を蹴破る。
玉座には王が堂々と座っていた。
「こんな所までやってくるとは……死にに来たのか?」
「いえいえ、そんな訳ではございません。先日頂いた依頼の依頼先で兵の軍団に襲われたそうなんです」
「それを私が命令したとでも言うのか?」
「はい」
「はっ、馬鹿馬鹿しい!何故私がそんな事を」
「団長が貴方の誘いを断りましたよね?」
「ああ、断られたな。まさかそれで私が殺したとでも?」
「……私は"襲われた"とは言いましたが"殺された"とは一言も言っていませんよ?」
スランが音速で王の下に移動し、首に手を突きつける。
先程と同じように高速振動をさせている。
「テメェがしたって事は解ってんだよ」
「……それがどうした?」
「あぁ?」
王はハッと笑い飛ばした。
「そうだ。私が命令した。それがどうしたと聞いているんだ」
「テメェ……自分が何言ってんのか解ってんのか…?」
「ああ、解っているさ。だがそれを知ってどうする?私を殺すか?」
「っ!テメェ…!!」
スランが手を振り切ろうとする。
しかし、途中で手に力が入らなくなる。
腕を見ると三本ナイフが刺さっていた。
「なっ……に…?」
「王を手に掛けようとする等……やはり野蛮な連中ですねぇ」
「ブライソル…サムレングス…!!」
壊れたドアからブライソルが入ってくる。
手には数本のナイフが。
「貴族である貴方が何故ここに?」
ブライソル・サムレングスは高級貴族である。
白髪で片眼鏡をしており、気品が漂う格好をしている。
「輝力封印の枷」
ブライソルが言うと、シエンの腕に枷が嵌められる。
「しまった…!!」
「シエン!!」
「今の内にそいつを捕えてください」
何処に隠れていたのか、兵がスランを囲む。
片腕が使えない上に、人質を取られている為、何もできず、スランも捕まってしまった。
「団長と副団長、更に第三部隊隊長を抑えました。これで私を『聖冠団』の団長にして頂けますね?」
「は…?何言ってんだ…?」
「ああ、あんな屑共の集団などくれてやる」
「ありがとうございます」
「何故貴様が団長に…!?」
「連れて行け」
王が命令するとスランとシエンは連れて行かれる。
「それでは副団長、いやもうあなたはただの人間だ」
「何故貴様が団長に…!!」
「さようなら。もう会う事は無いでしょう」
「何故、何故貴様はっ…!!」
スランは牢へ、シエンは別の場所へ連れて行かれた。
この時『聖冠団』は一度、崩壊した。
え~、どうもです。
またまた急展開ですがちゃんと付いて来れてますか?
ちなみに僕が置いて行かれそうです!(何でだよ)
タイトル、二話連続英語でしたがこれにはちゃんと意味があります。
それが解るのは数話後です。
次回もお楽しみに~。
あ、あとこれだけは言わせて下さい。
感想、求ム。