第6話 カインvsコーライ そして発動せしリルの能力
私は夢でも見てるの?リルは前に立っている青年を見て思った。
何故なら青年の手に―――――――――
炎が灯っていたからだ。
「てめぇなんか…てめぇなんか…」
「てめぇなんか…何だって?」
「1話で終わらせてやる!!」
罠のことについて怒っているのだろう。たぶん…。
1話で終わらせる、と意味不明な言葉を発するカイン。
「お前も輝流士か」
「お前もって事はあんたも輝流士なのか?盗賊団のボスさん」
「あぁ、武具士だ」
背中に差していた双剣を構えて喋り出すコーライ。
「武具士?変形させれんのか?」
「そこまでは出来ねぇよ」
「そりゃそうか、出来てリゃこんなことしてねぇか」
(輝流士…?カインさんがホントに…?)
リルは困惑していた。
(じゃあエリサさんも…?)
下を俯いて、肩を震わせていた。
その様子に気づいたエリサが声をかけた。
「リル大丈夫?」
「輝流士、カインさんも……」
――――――も?
エリサは語尾が気になった。
だが、リルの異常な状態の方が気になったエリサはリルの近くに行った。
「どうしたの?リル」
「ほんとに?…ぅぅうぁああ!!!」
リルはしゃがみこんで叫び出した。
すると、リルから野球ボールくらいの大きさの泡が7個出てくる。
エリサはそれに驚き、後退した。
「リル!?」
カインは気になって後ろを振り返りどうしたのか尋ねようとしたが、リルの周りにある泡を見てやめた。
そしてカインは、リルの方に歩きだす。
しかし―――――――――――
ザシュッ!という音と共に背中に激痛が走った。
「敵に背中見せちゃ駄目だろ、若い侵入者君よ」
コーライはカインの背中を☓字に切りつけていた。
「敵はこっちだぜ?…」
ギロッ、と効果音が付きそうな剣幕で、カインは後ろでニヤニヤ笑っていたコーライを睨みつけた。
その気迫に圧されてかコーライは後ずさる。
それを確認するより早くリルの方に歩き出す。
そしてリルの前に立つと、優しく話しかけた。
「どうしたんだ?」
「!! うあぁぁぁ!!!」
リルが叫ぶと泡が一斉にカインに向かって飛んで行く。
そして泡はカインに当たった時、パンッ、と破裂した。
「ぐっ!」
「カイン!!」
混乱しているリルは周りが見えておらず、さらに泡を生み出す。
そして、当たって破裂する。
だが、いくら当たってもカインは倒れなかった。
いくら破裂しようと、いくらボロボロになろうと、決して倒れない。
それどころか、逆にリルと同じ目線までしゃがみ込む。
そして――――――――――
「安心しろ…大丈夫だ」
「……っ!!」
優しく抱きしめた。
強すぎず、かといって弱すぎないくらいの加減だ。
「何があったかは知らねぇけど、今此処には俺とエリサがいる」
「……カインさん」
「辛くなったり、傷ついたりしたら俺達が守ってやる。俺たちは仲間だからな」
その時、リルの目から1粒の雫が落ちた。
その雫は2粒,3粒と増えていき最後には雨のように流れ落ちる。
「ごめんなさい……ありがとうございます」
(チャンスだ!死ねぇ!!!)
コーライは動き出していた。
カインの真後ろまで近付いてきている。
「カインさん!後ろ!!」
「遅ぇ!」
鋭い刃がカインに近づく。
しかし―――――――――
「なっ!がぁぁ!!」
カインの背中から炎が噴き出した。
「待つこともできねぇのかクズが」
「はっ、知ったことじゃねぇ!」
コーライは右腕をひどい火傷をしていた。
「そうか。来いよ、ちゃっちゃと終わらせてやる」
だが、そうは言ったものの内心焦っていた。
何故なら先程の、泡での攻撃と背中の傷が痛むからだ。
血もかなり出ている。
(ちょっとまずいな…)
そんな事を考えているとコーライは切りかかってきた。
それを避けたつもりだったが、少し左肩に掠ってしまう。
(あっぶねぇ…あれ?)
掠っただけのはずが予想以上に傷が深かった。
(そういやぁ、武具士だって言ってたな…)
武具士は、自分に会った武器を輝力で強化できる。
つまり、コーライは剣の切れ味を上げていたのだ。
「どうした、動きがとろくなってるぜぇ!」
その後も少し掠っては血が飛び散りの連続だった。
先程からまだ1分ほどしか経っていない。
なのにカインの体は切り傷だらけになってしまった。
(やっぱり私のせいで…)
先程自分のしてしまったことを思い出し俯いてしまうリル。
それに気付いたのか、エリサが話しかける。
「安心してリル、あいつは負けないから」
「…そう、ですね」
少し安心したのかリルは顔を上げる。
(とは言ったものの…大丈夫かな?)
今度はエリサが心配になる番だった。
「はぁ、はぁ…」
「さっきまでの威勢はどうした?」
「うっせぇ……デケェの準備してたから時間掛かったんだよ」
カインは何かの準備をしていたようだ。
そして、その準備が整った。
「そろそろ楽にしてやろう」
「お前が楽になる方だろ?」
「……どういう意味だ?」
「俺がおまえを倒すって事だ」
その言葉に少し反応を見せるコーライ。
「それじゃあ…やってみろやぁっ!!」
そう言って双剣を構えなおし、突っ込んでくるコーライ。
これで勝負を決めるようだ。
カインは両手の炎を大きくし、低く構えた。
「燃え尽きろ…」
「?」
「灼熱の火炎によって!!」
「狼炎烈衝撃!!!」
カインが両手を前に突き出すと、狼をかたどった巨大な炎がコーライを襲う。
「ぐわぁぁぁぁ!!!!!」
コーライはそのまま吹き飛ばされ、壁に激突した。
そのままカインは倒れそうになったが、誰かが支える。
リルだった。
「お疲れさまでした」
「あぁ…」
3人は完全に安心しきっていた。
しかし、誰も気づかないが、コーライからどす黒い靄が出ている。
そう、まだ終わりではなかった。
第6話終わりました。
みなさんどうでしたか?
(カイン)「どうでしたか?じゃねぇよ」
(雪龍)「なんで来てんの!?」
会話の場合は、上の様になります。
(カ)「何でって…暇だったからだよ」
(雪)「駄目でしょ!!てか何しに来たの!?」
(カ)「次回予告に決まってるだろ」
(雪)「そなの?まぁそれくらいなら良いや」
(カ)「えーと次回はなんとあのおっさんの正体が明らかに!」
(雪)「おっ、良いじゃん!」
(カ)「てことで今後もよろしく!」
(雪)「えっ、終わり!?」