第55話 過去物語、はじまりはじまり
「ここだよな……」
カインは団長室の部屋のドアの前まで来ていた。
カインはよし、と意気込むと手に炎を灯す。
「リル大丈夫かッ!!!」
そしてドアを破壊した。
その中の情景を見て驚いた。
「あ、カインさん」
リル、ウィンツ、アルバシスの三人でトランプをしているのだから。
「カイン君、おめでとう。君の、君達の勝利だよ」
カインが「コイツ誰だ?」と聞いたのでリルにした時と同様にカインにも自己紹介した。
するとやはりカインはリルと同様に驚いた。
「それで、ちゃんと帰らせてくれるんだろーな」
「当たり前田のクラッカーだよ」
正直古いです。
「でもま、その前にリルちゃんには君の過去を全部教えちゃおうと思ってるんだ」
「え…?」
「………」
カインは何も言わずただウィンツを睨む。
「団長良いんすか?大地を照らす13星座に怒られません?」
「大丈夫、大丈夫。ちゃんとロアールにも許可取ってっから」
恐らくロアールは適当に了承しただろう。
彼の性格からしてまともな判断は下していない…だろう。
「えっと、その前にカインさんに渡したいものがあるんです」
リルはソファの後ろから箱を持って来る。
拉致したにも拘らずちゃんと荷物も持ってきてくれるとは中々に優しい。
「コ、コレなんですけど……」
箱の中身は赤いマフラーだった。
そう、カインの炎のように真っ赤なマフラー。
「スウェルさんに聞いたんです。その首巻は破動の暴走を抑える為の物だって」
「何でまたそんな事言ったんだ?あの人」
「わ、私が聞いたんです。でも修行をしたら首巻が無くても大丈夫なようになるだろうって」
確かに、今となってはこの首巻はただの飾りとなっている。
「その……えっと……」
リルは意を決して言った。
「おかえりなさい」
「…ああ、ただいま」
カインは自分がしている首巻を取って貰ったマフラーをする。
結構似合っていると思う。
「うん、良い感じな所悪いけどまだ仕事が残ってるんだよね」
そう言うとアルバシスがカインの前に来る。
そしてカインの頭に手をかざす。
もちろんカインはその手を掴んで止める。
「何する気だ?」
「さっき団長がお前の過去を伝えるって」
「何でリルだけなんだ?」
カインの聞いている事はもっともだ。
リルに伝えるなら、『アース』の全員に伝えても良い筈。
「君が今一番近くにいる人に秘密は良くないと思うだけだよ」
ウィンツはそう言っているが明らかに何かを隠している。
「早速だが、すまねぇな」
アルバシスはカインの頭に手を置く。
すると魂が抜けたように倒れた。
「カインさん!!」
「すまねぇな」
アルバシスは自身の眼帯をしている左目に手をかざし、手を閉じる。
そしてその手を開くと黒い球体があった。
「過去旅行へご案内だ」
その黒い球体をリルの頭に当てる。
黒い球体はそのままリルの頭に吸い込まれるように入っていく。
「一体何を……うっ」
リルは頭を抑える。
激しい痛みと共に意識がシャットアウトした。
―――よぉ!カイン元気か?
それはかつての友の声。
―――貴様はガサツ過ぎるのだ。
懐かしきあの日々。
もう帰ってくる事は無い。
―――良いから全員走れぇ!!
友はその時何を思っていただろうか。
今となっては解らない。
考えれば考えるほど、虚しくなるだけ。
―――何故、何故貴様はっ…!!
友は囚われる。
しかし、その後彼の姿を見た者はいない。
―――オイ、ここから出したら手伝ってやる。
そこで出逢うは光か闇か。
―――ゴミが処分できたんだ。これ以上の事は無いだろう?
その時、彼の中に、何かが生まれた。
次の瞬間には周りは火の海。
―――クズは燃やしつくしてやる。
少年には誰の言葉も届かない。
そう思われていた。
―――君、あたしのセーブに入らない?
―――『アース』にようこそ。
その言葉を、聞くまでは…。
これは三年前のお話。
「おい、カイン!起きろ!」
今の時刻は朝7時。
少年は重い体をゆっくりと起こしていく。
「ふわぁ~……もう朝かよ」
「何してるんだ!早く起きろ!」
「起きてるよ。ったく」
「貴様は『聖冠団』第二部隊隊長なのだぞ!」
「わぁってるよ」
少年は部屋に入ってきた少年に言った後、着替え始めた。
「ったく…準備が済んだら団長室に来い」
「朝飯は?」
「起きるのが遅い奴に飯は無い」
「7時は早ぇっての」
「文句を垂れるな!カイン」
カイン・クリーク15歳
『聖冠団』第二部隊隊長
第四章二部―――炎の子の過去物語編、はじまりはじまり
今回からカインの過去の話です。
予定では5~7話位。
長くても8話だと思います。
一応予定なんでね?
因みに今日はクリスマスなのでプレゼントのくだりがあったんです。
だから前回投稿した時にはもう予告してたんですよ。
最近言ってなかったんで言います!
感想くださいッ!!