第54話 家族の為の最終決戦
「俺は『聖冠団』第3部隊隊長、ケイスト・リンク。お前はカイン・クリーク。間違いないな?」
「あ、ああ」
カインは第6演習場に来ていた。
あの後ミナスと別れたカインは団長室に向かっていたのだが、その過程でここに来たのだ。
「俺はお前を倒す。裏切り者のお前をな」
「随分な言われようだな。裏切り者って」
ケイストの容姿は、茶髪で前髪は目にかかる位、後ろは肩にかからない位の長さ。
そして目は青く、身長はエリサと同じ位。(エリサは165㎝)
見た目からして恐らく15~16歳位だろう。
「俺はお前を排除する。『聖冠団』のために」
「ああそうか。なら俺もお前をぶっ飛ばす。リルを助ける為に」
カインは手に赤い炎を灯す。
「……破動は使わないのか?」
「やっぱ知ってんのか」
「そう言えば使えないのだったな。あの人を殺した時に付けられた刻印でな」
カインはその言葉をバカにするように笑った。
「グダグダ言ってねーで来いよ。それともビビってんのか?」
「……面白い。完膚なきまでに潰してやる」
ケイストの手から手が伸びる。
解り難かったならもう一度言おう。
ケイストの手から手が伸びる。
「な、何だぁ!?」
ケイストの出した手は光っており、ただの手で無い事は見ただけで解る。
「行け」
ケイストの命令で二本の手がカインに向かっていく。
迫りくる二本の手をカインは炎で燃やそうとする。
「そんな炎など無駄だ」
しかし二本の手は炎で燃え尽きる事なく、カインへと迫る。
「っ!!」
二本の手はそれぞれカインの肩を掴む。
「拘束完了」
「何だこの手、全然離れねぇ!!」
「俺の能力は『光触手』。俺の思い描いた通りに触手は動き、形や色を変え、敵を殺す。半径5m以内ならどこにでも出せる。因みにその触手は粘着性だ」
カインはそれを聞いて動くのを止める。
無理に動くと余計に絡みついて動けなくなると思ったからだ。
「お前を殺せば今捕まっている娘は何て言うだろうな」
「そうだ、聞き忘れてた。リルは無事だろうな?」
「俺は知らないが恐らく大丈夫だろう。団長はゲームが好きでな。ルールはちゃんと守る」
そう言うとケイストのいる場所の間横の地面から一本の光っている棒(?)の様な物が現れた。
「……何だそれ?」
「触手だ」
「嘘つくなぁ!どう見ても手じゃねぇだろ!!しかも手から出てねぇぞ!!」
「さっき自由に形を変えられると言った筈だが……」
その言葉にカインはビクッと震え、冷や汗が頬を流れる。
実は肩に付いた触手を取ろうとして話を半分も聞いていなかったのだ。
聞いていたのは能力が触手という部分と、肩に付いている触手が粘着性という部分だけ。
だがカインはなめられる訳にはいかないのだ。
相手が『聖冠団』というのもあるが、何より年下になめられるというのは絶対に嫌らしい。
「あ、ああ、聞いてた。メッチャ聞いてたよ。ただそういうアレはソレだと思ったから……」
「聞いてなかったなら聞いてなかったと言えば良いだろ。情けない」
カインの超が付くほど下手な演技にケイストは呆れる。
結局カインの努力(?)も水の泡となった。
「まぁ良い。お前は……死ね」
地面から現れた光の棒が鋭くなり、カインを貫こうと向かっていった。
「ん、ここは……」
「目が覚めた?」
「きゃっ!」
ここは『聖冠団』団長室。
リルはソファに寝かされていた。
いきなり青年が目の前で話しかけてきたので驚いていた所だ。
「あ、あなたは誰ですか?それにここは……」
「僕はウィンツ・ジェイレーン。『聖冠団』団長にして大地を照らす13星座の双子座さ」
その言葉にリルは驚く。
目の前にいる青年が大地を照らす13星座で『聖冠団』の団長だとは。
「……って、『聖冠団』?」
「あれ?知らない?うーん……ん?」
ウィンツが後ろを振り向く。
するとボロボロのアルバシスがドアの前に瞬間移動で現れた。
「どったのアル君。そんなボロボロになるような相手いたっけ?」
「クラウン・ジョーカーがスウェルを捜してやってきた。……スウェルは?」
「え?来てないけど」
「何だって…!?」
ウィンツはそんなアルバシスに笑顔でこう言った。
「まぁ、ちょっと休みなよ。丁度"蒼き炎の悪魔"と恐れられた元『聖冠団』第二部隊隊長の本気が見れるからさ」
そう言って宙に浮いている画像をアルバシスに見せる。
それをリルも見る。
そこには今にも何かに貫かれそうなカインが映っていた。
「カインさん!!」
「まぁまぁ、お姫様は王子様が来るまで大人しくしててよ」
バッと立ち上がるリルをソファに座らせてウィンツは微笑んだ。
カインはどうするか悩んでいた。
あと3秒ほどで貫かれるだろう。
(仕方ねぇ。修行の成果、見せてやろうじゃねぇか)
カインは目を閉じる。
すると蒼い炎がカインを包んだ。
「蒼炎の羽衣」
そう言うとカインは蒼炎を纏い、肩に付いている触手を燃やす。
そして蒼炎が勢いよく発射され、向かってくる鋭い触手を燃やしつくす。
「触手が燃えただと!?」(それにあの炎……何故操れる!?)
「蒼穹の炎の特徴は全てを燃やし、造型しやすい。後、何でを操れるのかって思ってるだろ」
カインの背中に蒼炎の翼が現れる。
そしてケイストに向かって飛んでいく。
「くっ!八神楽!」
ケイストの周りの地面から先程の鋭い触手を八本出す。
そしてその全てがカインに襲いかかる。
「俺は優秀な先生の下で修行してきたんだよ。マンガの主人公風に」
カインは全て避けながらケイストに迫っていく。
「クソッ!」
「だからテメェなんざ俺の敵じゃねぇ!!」
グサッ
「っ!?」
カインは自分の腹を確認する。
そこには自分を貫いている真っ赤に染まった触手があった。
「いつ、の間に…!!」
「俺の触手は色も変えることができる。色を失くす事も出来る」
(透明な触手があったってのかよ…!!)
「終わりだ」
その言葉を聞いてカインはニィッと笑う。
「はっ、ここはもう俺の間合いだ」
カインはケイストに右手を突きだす。
する体に纏われていた蒼炎が右手に集まる。
「遅い。百蓮刃」
地面から百もの触手が現れ、先端部分が刃物の様になる。
そしてそれが全てカインに向かっていった。
(終わったな)
ケイストは完全に油断していた。
しかし幾つもの切り傷が出来ていたものの致命傷は避けられていた。
「バカな!!」
ケイストはカインを見て驚く。
それもその筈だ。
カインの身体には赤い炎が纏われているのだから。
炎で少しだけ軌道をずらし、致命傷を避けたのだ。
「原流と破動を同時に使うだと!?そんな事出来る筈が……」
「さっき言ったろ。優秀な先生の下で修業したってな」
右手には既にカインが持つ殆どの輝力が込められていた。
「蒼穹の大炎砲!!」
カインの右手から大きな蒼炎の弾が放たれる。
「燃え尽きろ……」
「灼熱の火炎によって!!」
ケイストは蒼炎に包まれる。
しかし、少しすると蒼炎は消えた。
「消え、た…?輝力が尽きたのか?」
「ちげぇよ、バカ。ただ優秀な先生にもう人を殺すなって言われちまったんだよ」
カインはケイストの方に手を置き言った。
「じゃあ、行かせてもらうわ」
「……クソッ…」
立っているのもやっとだったのか、ケイストはその場に崩れ落ちた。
只今の『アース』vs『聖冠団』の戦績
7勝2敗4分け:2勝7敗4分け
残り人数:3対1
(雪龍)
「次回で終了だい!!」
(カイン)
「良かったな。因みに次回の投稿は25日だ。予告しておこう」
(雪龍)
「珍しく予告なんてしたら雨降っちゃうよ」
(カイン)
「降るなら降れよ」
(雪龍)
「天気に対して何故か強気なんだね」
(カイン)
「まぁな。では次回もお楽しみに」
(雪龍)
(そう言えば最近大人しくなったなぁ…)