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Sacred Flame of Darkness  作者: カラクリ/あわぞー
第四章一部  総力戦ゲーム編
51/83

第49話  凍て付きし少年

水漸狼牙アクアセイバー!」

「―――――を凍らせる」

 

 言葉通りブラウドの水の刃をシュードが凍らせる。

 先程から何度これを繰り返しているだろうか。

 

「貴様、自分からは攻撃しないのか?」

「良く言ってくれますね。攻撃しようとすれば近付けないようにするくせに」

 

 シュードはそう言いつつ、小さな氷の塊を大量に放つ。

 それを水で壁を作り防ぐ。

 

「えーと……リルちゃんは団長さんの所にいるんですか?」

「さぁ、どうだろうな」

「団長室の場所を教えてくれません?」

「誰が教えるか」

 

 ブラウドは地面に水を撒き散らす。

 

「大体俺を倒してもいねぇのに何でそんな事を聞くんだ?」

「うーん、倒してから聞けないから」

「へぇ、もう俺を倒す気でいるのかよ……」

 

 ブラウドが撒き散らした水が、蒸発する。

 シュードはもう一度氷の塊を放つが、ブラウドが出した水に触れるとすぐに溶けてしまった。

 

「てめぇは血祭り決定だ…!!」

「何を怒っているんですか?カルシウム足りてないんですか?」

 

 シュードは口では余裕ぶっているが、実際の所かなり不利な状況だ。

 相手は自分の攻撃を防げるが、自分は防げるかどうか分からない。

 それだけでも不利であるが、それ以上に今のブラウドが出している水が厄介だ。

 

(湯気が立っている……。熱湯か。それも尋常でない温度の)

 

 そう、今ブラウドが出しているのは熱湯。

 温度はおよ200度。

 触れたら火傷なんて生易しいものではないだろう。

 

水葬煉摩アクアソウ!!」

 

 大きな水の斬撃をシュードは躱した。

 凍らせず、躱した。

 

「どうした?さっきみたいに凍らせてみろよ」

「結構無茶言いますね」

 

 この高温の熱湯を凍らせる事自体は可能だ。

 しかし、どうしても時間が掛かってしまう。

 凍らせても間に合わず、攻撃を喰らってしまう、それでは本末転倒だ。

 

「今なら半殺しで許してやるがどうする?」

「大差ない気がするんで一人で勝手に言っててください」

「ぶっ殺す!!」

「あの『聖冠団』副隊長ともあろうお方ががそんなに易々と殺すとか言って良いんですか?」

 

 全くシュードの言う通りなのだが、今のブラウドにそんな事を聞く耳は無い。

 

「流石にこれ以上暑くなるのは嫌なんで冷やしますかね」

「やってみろ屑!!」

 

 ブラウドが熱湯の波をシュードに浴びせかけようとする。

 まるで熱湯の津波の様だ。

 

「屑かどうかはこれを見て言って下さいよ」

 

 部屋の壁や床が凍りつく。

 その後、熱湯の津波はシュードに近付くと一瞬で凍ってしまった。

 

「なっ!」

 

 ブラウドは本当に凍らされるとは思っていなかったのでかなり驚く。

 それもそうだ。

 本来、あの高温の熱湯を凍らせるのは無理なのだから。

 

「どうやって…!!」

「凍らせたんだ、ですか?そんなの簡単ですよ」

「まさか、てめぇ…っ!!」

無限凍宮アブソリュート・オーバー。部屋を凍らせ熱湯の温度を下げ凍らせました」

「いつの間に…!!」

 

 部屋が凍らされるという事は、室温ももちろん下がる。

 それにブラウドは気付かなかったのだ。

 それは何故か。

 

「熱湯に囲まれていたから、だから室温の変化に気付かなかった」

「なんだと…!?」

「それに頭に血が上って水温の辺からも気付かないとは……驚きですよー」

「くそっ…!」

「まだですよ」

 

 シュードが言うとブラウドが足元から凍り始める。

 数秒後、首より上だけを残してブラウドは凍りついた。

 

「どうします?負けを認めて団長さんの居場所を教えてくれるなら全身ズタズタで許しますけど」

「はっ、誰が教えるかよ!」

「……別に僕は良いですけど、このままだと凍傷で死んじゃいますよー?」

「誰が……死ぬって?」

 

 ブラウドは全身から熱湯を放出して氷を弾き飛ばす。

 そして凍りつく前にその場を離れた。

 

水突槍アクア・リッパー!!」

 

 ブラウドは手から水を放出し、シュードに向かって走り出す。

 放出されている水は走っている間に凍り、氷の槍となった。

 

「自分の能力と同じ氷で死ね!!」

 

 その氷の槍をシュードの腹に突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここはとある廊下。

 カレンは壁にもたれ掛かって少しずつ移動していた。

 

「いたた……」

 

 カレンは壁にもたれ掛かって座る。

 その時、何かを感じた。

 

「……シュード?」

 

 カレンはシュードの事をよく知っている。

 ある人物に聞いたからだ。

 

「まさか…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シュードの腹を貫通し、氷の槍は血で赤く染まっていた。

 

「終わりだな」

 

 ブラウドはシュードから槍を引き抜き、氷の槍を破壊する。

 シュードはその場で動かず、俯いている。

 

「……立ったまま死んだのか?」

「………な訳ないでしょう?」

 

 シュードもお返しだと言わんばかりに、氷の槍を手に纏わせ、ブラウドを切り裂いた。

 

「がっ…!!」

「残念でしたね。もう傷口は凍っちゃいましたよ」

 

 言葉通りシュードの出血は止まっている。

 ブラウドの出血もすぐ凍って止まったが。

 

「もう交渉は無理そうなので倒しましょうか」

 

 ブラウドは違和感を感じていた。

 出血は止まったとはいえ、流石にあれだけの傷を負えば少なからず表情が変わる筈だ。

 だが、シュードは全く表情を変えない。

 まるで何も感じていないかのように。

 

「まさかお前……痛覚が無いのか?」

「半分位正解です。正確に言うと感情が殆ど無いんです」

 

 つまり、面白いと感じる事もなければ、悲しい、苦しい、痛いと感じる事もないのだ。

 

「どういう事だ?お前、人間か?」

 

 ブラウドは自分の仲間に人間ではない者を一人知っている。(その者をシュードも知っているが)

 ただ彼はヒューマノイドだ。

 

「僕は人間ですよ。とある実験でこの力を得た代わりに、感情を失ってしまっただけです」

 

 ある実験、それは『人工輝流士製造計画』と呼ばれている。

 輝流を得る代わりに自分の何かを失ってしまうのだ。

 

「僕に感情は無い。だから、自分が傷つくのも人を傷つけるのも怖くない……。いや、怖いという感情すら無いんでしょうね」

 

 そこまで言うとブラウドの足がまた凍り始める。

 だが先程と違ったのは既にシュードが動き始めているという事。

 シュードはブラウドの下まで行くと、首を掴んだ。

 そしてその逆の手には氷で出来たナイフが握られている。

 

「まずは一発」

 

 そう言うと氷のナイフをブラウドの腹に突き刺した。

 

「ガハッ…!!」

「さて、苦しむのも嫌でしょうし、心臓を一突きに……」

 

 

「凍て付け…」

 

 

「清冷の氷塊で」

 

 

 シュードがナイフを振りかぶる。

 その時、誰かに腕を掴まれた。

 

「ふぅ~、間一髪で間に合った」

 

 シュードの腕を掴んだのはカレンだった。

 どうやらボロボロの体を引きずって何とかここに来たらしい。

 

「てか、寒いから早く元に戻してくれない?君も負けたって事で良いよね?」

 

 ブラウドは何も返さない。

 氷が段々と溶けていく。

 

「とりあえず何故貴女がここにいるんですか?」

「デルスに頼まれてたのよ。アンタが人を殺しそうになったら止めろって。ったく、皆私に任せ過ぎなのよね」

 

 先程のレックスの事と今の事をひっくるめて言っているのだろう。

 

「私はもう……することが無いから休むわ」

「それが良いでしょうね」

「言っとくけどアンタもよ」

「はーいはい」

 

 

 只今の『アース』vs『聖冠団』の戦績

 6勝1敗1分け:1勝6敗1分け

 残り人数:7対5

 カレンとシュードは戦線離脱

(雪龍)

「はい、今回はちょっとした裏話です」

(佐祢丸)

「待て!次回は拙者じゃろ!?」

(雪龍)

「そうだけど一応言っとかないといけないことが一つあるんだよね」

(佐祢丸)

「一体何の事じゃ?」

(雪龍)

「レックスの事なんだけどさ。今回カレンが出てきてレックスが置いてけぼり状態になってるじゃん?」

(佐祢丸)

「確かにそうじゃな」

(雪龍)

「実はあの場にヒルグとアイシュが来てレックスを任せてシュードの下へ行ったのでした」

(佐祢丸)

「……あっそ」

(雪龍)

「あれ?興味なし?」

(佐祢丸)

「次回もお楽しみに」

(雪龍)

「そしてシカトっ!?」

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