第5話 コーライ現る
「何…これ…」
エリサとリルは目の前の光景を見て青褪めている。
そうなるのは仕方がない。
何故ならそこには、血まみれで倒れている盗族達がいたからだ。
血の海、という表現が最も正しいだろう。
すでに全員息絶えている。
「これ…さっきの奴が?…」
「だろうな」
「ひどい…」
カインはその情景を見てかなり怒りを浮かべている。
「あの野郎……」
カイン達はその場を少し早足で後にした。
そして、ここはコーライの部屋―――――――――
「コーライ様!!」
「何だ?」
「侵入者です!」
今話しかけられている者はコーライ・カッツェル。
カイン達の標的である。
「侵入者だと?門番はどうした」
「倒されました!」
「何だと?」
コーライが驚くのも無理はない。
カインとおっさんがあっけなく倒してしまったが、実はあの門番の2人はコーライ盗賊団の中でも結構な腕利きだったのだ。
本当にあっけなく倒されたが…。
「そうか、面白い…"あれ"をしろ!」
「分かりました、直ちに"カラクリ城"を発動します!」
「"あれ"で通せよ」
戻ってカイン達サイド―――――――
カイン達は先程からずっと黙っている。
だが、その沈黙を破るサイレン音が急に廊下に鳴り響いた。
「何だ?うっせぇな、耳が痛ぇ」
「ほんと、鼓膜が破れそう…」
音量を間違えているのではないかと思うくらい大きな音だ。
そこでエリサはふと思い出した。
「リル大丈夫?あなた耳が良いんでしょ?」
そう、さっき会った時リルは自分で言っていたのだ。
「ふいまへん、無理れふ…止へれ~(すいません、無理です…止めて~)」
「リルーーッ!!!」
リルはあまりの音量に目を回していた。
この音量を耐えるのはリルには不可能だったのだ。
だが少しすると、リルの願いが通じたのかサイレンが鳴り止む。
「ふぅー、助かりました」
「にしても、何だったんだ?」
『ようこそ、我がコーライ城へ』
「「「!」」」
サイレンが止まったかと思うと、今度はスピーカーから人の声が聞こえてきた。
ちなみに、今度は普通の音量なのでリルにも大丈夫だ。
『早速だが、これよりこのコーライ城はカラクリ城へと変化する』
「コーライ城て…ネーミングセンス無さ過ぎ」
「「確かに」」
『ネーミングセンスについてはほっとけ!!』
こっちの声も聞こえるのか、と驚くカイン。
それに対してコーライは少々キレながらも説明を続けていく。
『まぁ良い、では画面越しだが楽しく見させてもらうぞ』
「? 何をだ?」
『カラクリ城化スタート!!』
「まだ話は終わって―――――」
カインは言葉を遮った。
否、遮られた。
どこからか、大きな音が聞こえてきたからだ。
「なんだこの音?」
「ゴゴゴゴゴって音でしょ?私も聞こえるわ」
「だんだん近づいてきてますね…」
「いやな予感しかしねぇんだけ――――――」
そこまで言ってカインは黙ってしまった。
何故なら音の原因が分かってしまったからだ。
「おい、後ろに本気でダッシュしろ」
「何で?」
「いいから!」
カインの気迫に押されてかエリサとリルは走り出した。
「早く!!ダッシュだ、ダッシュ!!」
「ねぇ、何で?」
「それはな……」
「それは?」
カインはそこで一呼吸置いて続けた。
「壁が迫ってきてるからだよっ!!!」
「「えっ!?」」
そう言われて2人は後ろを振り返ってみた。
すると先程までは気付かなかったが確かに壁が迫ってきている。
しかも結構な速さで、だ。
「何で!?」
「! そこ曲がれ!!」
エリサとリルはカインの言うとおりに左に曲がる。
左に曲がったことで何とか助かった。
曲がっていなければ、かなりヤバかっただろう。
「はぁ…はぁ…そういえばカラクリが何とかって言ってたわね」
「今のがそのカラクリですかね?」
「だとしたらまだ大量にあるんじゃねぇか?」
カインがそこまで言い終えると3人から冷や汗がダラダラ出てきた。
今みたいなのが…大量…?
「とりあえず気をつけながら進もう」
その案に残る2人が納得して、歩き始める。
だが――――――――――
「「「うわああぁぁあぁ!!」」」
天井から槍が降ってきた。
「おい…この城どうなってんだ…」
「変な所に金かけてるわね」
「ほんとですね…」
さっきからカラクリという名の罠にハマってばかりの3人。
例えば落とし穴があったり、壁に火炎放射器があったりと、易しい物から下手したら死ぬんじゃないか?という物まで色々あった。
「つーか、何でこんな広いんだよ!城に入ってから3話目なのにまだコーライに会えてすらねぇじゃねぇか!!」
「そんな事言うな!」
精神的にもかなりきついだろう。
だが、まだ終わってはいなかった。
目の前から人影が近づいてきている。
「おい、もうこのパターン飽きたよ」
「確かに、ワンパターンね……」
キーガシャン、キーガシャン――――――――――
それは今までに聞いた事のないタイプの音。
よく見てみると、近づいてきているのはロボットだった。
「コー…ライ?」
「なわけねぇだろ、ロボットだぞ」
珍しくカインが突っ込んだ。
ボケたわけではないのだが突っ込まれたのはエリサだった。
こういうパターンもあるんだ、と素直に感心するリル。
「にしても何だ?これ」
「気をつけて、また罠かも……」
カインがロボットに触れようとした瞬間、突然ロボットが飛んで行った。
「ちょっ、待て!」
「いや、あんたが待て!」
エリサの注意も虚しくカインは飛んで行くロボットについて行ってしまった。
「待てーーー!!!」
必死に呼びかけるがカインはまったく止まらない。
そのままついて行くと、カイン達は広い場所に出た。
「おっ!やっと廊下じゃなくなったぞ」
「ようやく来たか」
前から男の声が聞こえてきた。
カインは、今度は何?という感じで声のする方を見る。
そこに立っていたのは、スキンヘッドで左目の下に刺青を入れていて、背中に剣を2本差している男だった。
「お前がコーライ?」
「あぁ、そうだ」
カインが面倒臭そうに聞くと、コーライが返す。
その時カインは思った。
この声、どこかで聞いたことがあるような…。
「あっ、お前さっきのスピーカーの声の…」
「あぁ、そうだ、なかなかに面白かったぞ」
「へぇ、お前がなぁ…」
言い終えると、カインは下を向く。
少し肩が震えている。
「カインさん、大丈夫ですか?」
「心配しないで大丈夫よ。それに、私もあいつにちょっとイラッときてるからカインにぶっ飛ばしてもらうわ」
はぁ、とあまりよく分かっていない状態のリルはカインの方を見ていた。
「テメ…だ…は…」
「何だって?」
「テメェだけは…」
「?」
「ぜってぇぶっ飛ばす!!!!!」
こうして戦いの火蓋は切って落とされた。
第5話どうでしたか?
いつもは短いんですが、今回は結構長かった気がします。
さて、この前紹介しきれなかった分の能力を紹介したいと思います。
【召喚輝獣】:召喚士
契約している輝獣(主に動物)を召喚する能力。輝獣1匹に1つの召喚用の道具が必要となる。
【破動】:破動――――
輝流の能力を強化させたり、原流士ならば通常より強い能力が使えるようにさせることができる力。だが、破動の素質を持った者でないと、使う事が出来ない。