第44話 灰色の想いと力
「何者だ?」
「てめぇぇえええ!!!」
ヒルグの手から砂の様なものが大量に出てくる。
砂の様なものを紫髪の男は避けるが、その避けた先にヒルグがいて殴り飛ばされる。
「あと五分だ……」
「…何がだ?」
ヒルグが男を指差す。
「てめぇを殺すまであと五分だ!!」
男に一斉に砂の様なものが向かっていく。
しかし手応えは無かった。
「ふむ、『灰』か……」
「!!」
男はヒルグの背後に移動していた。
「私は『聖冠団』第五部隊隊長、メイゼル・セイホード」
「名乗らなくても良い!!!」
ヒルグの灰が一斉に舞う。
そしてメイゼルに向かっていくが消える。
「なっ!」
「後ろだ」
その言葉通りヒルグの後ろに灰が降った。
一瞬にして移動したのだ。
「私に攻撃は効かない。無駄だ」
「知るか!!」
灰を操りメイゼルに攻撃する。
しかし全てがあらゆる場所に移動してしまう。
「くそっ!!」
「ふむ、私も他を潰さねばならん。終わらせよう」
メイゼルは一瞬でヒルグの目の前に移動し、アイシュの時の様に小刀で切り裂いた。
だがヒルグは倒れなかった。
それどころか力一杯メイゼルの腕を掴んだ。
「捕まえたぞ…!!」
「っ!おのれ…!!」
ヒルグは灰を操り、自分とメイゼルを囲んだ。
「てめぇの能力はいまいち分かんねぇけど物体を遠ざける。けど全方向から向かってきたら流石に無理なんじゃねぇの?」
灰が集まって無数の針が二人を囲んだ。
「一緒に死ぬ気か!?」
「死ぬのはてめぇだけで十分だ!!」
そして一斉にヒルグもろともメイゼルを突き刺した。
アイシュはうっすらと目を開ける。
そこには何かを灰が囲んでいた。
「起きましたか」
声の方を向くと壁にもたれ掛かって座っているヤイトが微笑んでいた。
「ヒルグが……戦ってるの?」
「名前は知りませんが灰色の髪の方でしたよ」
それだけでヒルグだと分かった。
『アース』のメンバーで灰色の髪はヒルグだけだからだ。
「メイゼル隊長の能力に勝てる者はそうそういません。恐らく彼も…」
「あいつの能力って…?」
「メイゼル隊長の能力は『空間転移』。目で見た空間を自由に転移させる事ができる。つまり能力ごと転移させる事ができるので彼に攻撃は当たりません」
「そんなのに勝てるわけ……」
「しかし自分以外の人がいる空間は転移することができません。更に一度に一つの空間しか転移する事ができません」
その時灰が針の様な形になった。
アイシュはそれを見て青ざめた。
「まさか……」
「一緒に死ぬ気か!?」
「死ぬのはてめぇだけで十分だ!!」
その声と同時に灰の針は一斉に二人に突き刺さった。
「ヒルグッ!!」
思わず目を覆いたくなった。
もし生きていたとしても無事では済まないだろう。
涙がこぼれる。
涙が止まらない。
「ヒルグ…!!」
「何だよ……」
アイシュの目の前には血だらけだが、確かにヒルグがいた。
「ヒルグ……」
「安心すんのはまだ早いんだけどな」
そう言って後ろを見る。
そこにはメイゼルが苦しそうに立っていた。
「負けるわけにはいかん……」
「いや、チェックメイトだ」
ヒルグがそう言った瞬間メイゼルの足を灰が固定していた。
「クソがッ!!」
「口調が変わってるぜ。隊長さんよ」
灰を転移させるがその時にはもう遅かった。
ヒルグは今残る全ての輝力を右手に溜めた。
「消え失せよ……」
「焼失せし灰燼で!!」
「ぶっ飛べ。クソ野郎」
全ての力、全ての想いを込めた全身全霊の拳がメイゼルに炸裂した。
メイゼルは吹っ飛び、壁が抉れるほどに激突した。
「あーあ、軽く五分越してんな」
只今の『アース』vs『聖冠団』の戦績
2勝1敗1分け:1勝2敗1分け
残り人数:10対9
(雪龍)
「この章、短くても後10話位だな……長いなぁ」
(レックス)
「まぁまぁ、そう言わずに頑張ろうよ」
(雪龍)
「次回はレッ君。頑張れよ!」
(レックス)
「お任せを~」
(雪龍)
「では次回もお楽しみに」