第42話 戦場は紅く染まる
ある部屋にリアンがいた。
「やっほ~、君は初めましてだね」
シュードの前には金髪の清楚な雰囲気がする青年がいた。
「ていうか死神君は俺を選んでくれなかったのか。ざーんねん」
「一人でよく喋りますね。まぁ死神の代わりにヴァンパイアが来たわけです」
そう言ってリアンは右手を噛み、血を出した。
「俺は『聖冠団』第四部隊副隊長、ロウ・ミルダエラ。よろしく」
「僕はリアン。リアン=ヴァンパイアです」
ロウは右手から黒い煙を出す。
それを見てリアンは思い出した。
「黒い煙…死神……あなたがシュード君が相手した方でしたか」
「そゆこと!」
黒い煙はリアンの周りを囲む。
「こんなので……」
リアンが右手を横に振ると。リアンの周りに血の壁ができ、黒い煙を防ぐ。
「俺を倒せると思ってんのか?」
(口調が変わった?)「思ってねぇよ!!」
ロウは手に黒い煙を集め、刀の形にして硬化させる。
それを見てリアンも血を剣の形に変え硬化させる。
二つが交わると金属音がした。
どちらも本物の刀剣並み、もしくはそれ以上の硬度を誇っているのがわかる。
「純血の針」
剣の形をしていた血から突然針が突き出す。
ロウはそれを避けきれず頬を掠ってしまう。
(コイツ下手したら死神君より強いな……)
「純血の鎖」
リアンは左手を勘で新たに血を出し、鎖の形状にしてロウに投げつける。
ロウはそれを避ける。
「純血の連射砲!」
右手の人差し指を噛み切り、そこから血の弾をマシンガンの様に発射する。
ロウは黒い煙を足に纏わせ、浮遊して躱す。
シュードと戦った時と同様、足が黒い煙になっているように見える。
「あっぶねぇ……殺す気かよ」
「中々当たらねぇな……純血の翼!」
リアンの背中から血で出来た翼が生える。
その時少しリアンがふらつく。
(さっさとケリつけねぇと血がもたねぇな……)
リアンはロウへ向かって飛んで行く。
走るより明らかに速い。
リアンは血の刀を逆手に持ち直す。
「速っ!」
リアンは通り過ぎる時にロウの左肩を斬る。
リアンは少し行き過ぎた所でUターンし、もう一度斬りかかろうとする。
しかし、ロウが黒い煙で自分の姿を隠す。
「目暗ましのつもりかよ!!」
「バーカ」
その言葉を不思議に思いつつもリアンは突っ込む。
しかし、黒い煙は壁の様に硬かった。
「カハッ!」
「そのまま燃えちまいな」
黒い煙は燃えだし、その炎がリアンのマントに移る。
リアンは急いでマントを脱ぎ捨て離れる。
「こう言うの……形勢逆転って言うんだっけ?」
「はぁ、はぁ……」(これ以上血を出したら体が危ないな……)
ロウは黒い煙を銃の形に変える。
「辛そうだねぇ……血が無くなっちゃった?」
そう言いつつ、銃から黒い煙を固めた弾を発射する。
その弾はリアンの腹を貫通し、リアンはその場に崩れる。
「そろそろ終わりにしようか」
「なめるな…!!」
リアンは腹から大量の血を出し、地面を満たす。
血が足りなくなりとうとう地面に伏してしまう。
「何やってんの?」
「我が操る純血よ……」
リアンは苦しそうに呟く。
「舞え―――――」
そう言うと地面に流れていた血が空中に浮かびあがる。
そして刃物の様に鋭くなる。
その時リアンが立ちあがった。
「あれ?立てちゃうの?」
「無限純血状態を解放した」
リアンの目が鋭く光る。
「これで僕の血の量は増え続ける。故に血はなくならない」(この後大変な事になるんですけどね……)
そう言うと刃の様に鋭い血がロウを囲む。
「おい、まさかお前…!」
「畏怖せよ……純血の裁きを…!!」
「永続せし純血の大射撃!!」
「なっ!!」
リアンの言葉と同時に一斉に血がロウに飛んでいく。
ロウは多少躱したものの殆ど突き刺さった。
「ウソだろ……」
そう言ってロウは倒れた。
リアンはフラフラと歩き出す。
その時、リアンの体が引き裂かれたかのように血が噴き出す。
「暴走が始まったか…!」
これが無限純血状態の代償。
血が暴走しリアン自身にも止められなくなってしまう。
「くっ……」
リアンは5メートルほど歩いた所で倒れてしまった。
只今の『アース』vs『聖冠団』の戦績
0勝0敗1分け:0勝0敗1分け
残り人数:11対11
何もない部屋にアイシュと短い金髪の青年がいた。
その青年は右目が青く、左目が黄色い。
要するにオッドアイだ。
「初めまして。僕は第二部隊副隊長、ヤイト・ディリクタイです」
「あたしはアイシュ・タイレーン」
アイシュとヤイトは二人してニコニコしている。
「うーん…女の子と戦うのは気が引けるなぁ」
「そっかぁ、でもお姉さん相手にそんな事気にしなくて良いよ」
「失礼だけどもしかして僕より年上ですか?」
「あたしは22歳だよ♪」
ヤイトは17歳。
しかしアイシュもその位の年に見える。
「若く見てくれてありがとね」
アイシュは上着の内ポケットから金槌を取り出す。
それに輝力を込めると大きくなる。
「……リルちゃんは返してもらうよ」
「僕的には返してあげても良いんだ」
「じゃあ通してくれない?」
「それだとクビになっちゃうんだよ。だから……」
ヤイトの目が真剣なそれに変わる。
その時アイシュは威圧感に気圧された。
「女の子でも倒します」
アイシュの頬を嫌な汗が伝い、金槌を持つ手が震える。
それは紛れもない恐怖だった。
(アイシュ)
「ハロー!アイシュ・タイレーンだよ」
(雪龍)
「アイシュの名前はある偉人から取ったんだ」
(アイシュ)
「えっ、そうなの?てか何でこのタイミングで言ったの?」
(雪龍)
「ここ以外で言う機会が無さそうだったし」
(アイシュ)
「まぁ、結構な人がわかってるかもだけど誰から取ったの?」
(雪龍)
「アインシュタイン」
(アイシュ)
「だろうね」
(雪龍)
「ちっちゃい子がアイスの事をアイシュって言ってると笑えて来るんだ」
(アイシュ)
「それはあんま聞きたくなかったな……」