第40話 発端
カインとリーフが修行に行ってから早くも三ヶ月ほど経った。
何故もうそんなに経ったのかって?
まぁまぁ、そんな事は置いといて。
「まだですかね……」
「まぁ、今日もまだ始まったばっかりだし」
そう、近々二人が修行から帰ってくるのだ。
「ちょっと気晴らしにお出掛けする?」
「でもカインさん達が帰って来た時に私達がいなかったら……」
忘れていたが先程から話しているのはリルとミラだ。
「大丈夫よ!それに何かプレゼントでもあった方が良いでしょ?」
「そう…ですね。行きましょう」
二人は早速外に出かけた。
これがこれから起こる出来事の発端だった。
「やっと帰って来れたな……」
「ああ、死ぬほどきつかったな」
「ロアールめ……」
カインとリーフはそう言いながらも家の前まで歩いてきていた。
因みに行きと同様、リーフが荷物を全て持っている。
「ただいまー」
「あっ、おかえりなさい」
中から出て来たのはリリカだけだった。
「リルとミラは?」
「なんかプレゼント買うとか言ってどっか行っちゃった」
「そうか……」
とりあえず三人は家の中で二人を待つ事にした。
だが数十分待っても帰って来ない。
家を出てからで言うとおよそ二時間程だ。
「遅いわね……一体どこまで買いに行ったのかしら」
その時玄関が開く音がし、部屋にミラが息を切らして入ってきた。
何故かリルがいない。
「どうしたんだ?」
「リルが……」
カインの胸に不安が圧し掛かってきた。
「リルが……どうしたんだ?」
恐る恐る訊く。
自分で訊いたのに答えを聞きたくない。
不安で胸がいっぱいだ。
こんな感じ初めてなった。
「リルが…攫われた……」
「なっ…!」
胸の中が真っ黒になった。
リルが仲間だから、こんな気持ちになるのだろうか。
「攫ったのは誰だ……」
「……『聖冠団』」
答えはカインの予想を裏切らなかった。
その答えを聞いた時、カインの中で何かが切れた。
「間違えないのか…?」
「あの紋章を間違える筈がないよ……」
『聖冠団』の紋章は交り合う二本の剣の上に王冠が載っているデザインだ。
「そうか……」
カインは部屋を出て行こうとする。
それをリーフが腕を掴んで止めた。
「まずはボスに伝えんのが先だ。というよりテメェが行っちゃ駄目だ―――――」
「うるせぇ……!!」
リーフはカインに気圧される。
カインは振り返って言った。
「何を言われようと何されようと俺は行くぞ……」
「だけどな……」
「我慢なんねぇ、あいつ等…許さねぇ…!!」
それを聞いてリーフは溜め息をついた。
「テメェを一人で行かせる訳にはいかねぇ。俺も行く」
「!!」
「一人でかっこつけんな。リルは俺達の仲間……いや―――――」
「俺達の家族だろ」
「………」
カインは何も言わずに外へ行く。
「わ、私も」
「お前らは来るな」
着いて来ようとするミラとリリカをリーフが止めた。
「大丈夫だ。リルは……俺達が連れ戻してくるから」
そう言うとリーフも出て行った。
「ここか」
二人はエルバムという都市にやって来ていた。
ここはシゼルディアスの首都で、最も栄えている都市だ。
その中心部には堂々と城と『聖冠団』の本部が立っている。
カインとリーフの二人はその本部の前に来ている。
「さて、行くか」
「まぁ、待てよ」
後ろから二人を止める声がする。
二人が振り返った先には
「テメェらだけでケリつけようとしてんじゃねぇ」
エリサ、イグルス、シュード、リアン、スラン、カレン、レックス、佐祢丸、アイシュ、ヒルグの『アース』のメンバー10人がいた。
皆、手に手紙を持っている。
「何でお前ら……」
「これですよ」
そう言ってリアンが手紙を開く。
その手紙にはこう書かれていた。
《お前達の仲間、リル・コークレインは預かった。返して欲しければ『聖冠団』本部に来い》
「リルちゃんは僕達の仲間だし、家族みたいなもんだからね」
「家族を奪われたら黙ってられないッス!」
「てな訳でオレ達も連れてけ」
カインは驚いたふうに目を見開く。
そして誰にも見られないように振り返り、笑みを浮かべる。
「さっさと行ってさっさと取り返すぞ」
『おう!!』
第四章一部―――総力戦ゲーム編、開幕
(雪龍)
「次回からやっと『聖冠団』が出ます!」
(カイン)
「けっ、俺あいつら嫌いなんだよ」
(雪龍)
「そう言うと思ったよ。近々イラストを載せてあげるから」
(カイン)
「いや、期待してねぇから」
(雪龍)
「……やっぱり?」
(カイン)
「次回もお楽しみに~」
(雪龍)
「強引に終わらせるの久し振りだね……」