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Sacred Flame of Darkness  作者: カラクリ/あわぞー
第三章 千年万華鏡編
37/83

第35話  たった五文字の言葉

「起きてー、朝よー」

 

 部屋の外から女性の声がする。

 別に驚きはしない。

 聞き慣れた声だ。

 

「リルー、朝だってば」

 

 女性が部屋に入ってくる。

 リルはゆっくりと目を開けて女性を見る。

 

「……おはようございます。リリカさん」

「うん、おはよう」

 

 リリカは挨拶を済ませると部屋を出て行った。

 あの事件からもう三日経った。

 カインもリーフもあれから仕事には行っていない。

 ずっと家にいる。

 

「早く起きないと……」

 

 布団から出て部屋を出て下に降りる。

 下には既にリリカとミラと誰かがいた。

 

(あれ…?)

 

 その誰かはソファに座り何かの本を読んでいる。

 

「えーと……」

「リル」

 

 ミラがリルに近寄って小さい声で話しかける。

 

(あの人、カインとリーフの知り合いらしいけど、リルも知ってる?)

(いえ……たぶん知りません)

「うぃーす、おっ、二人ともおはよう」

 

 後ろから挨拶してきたのはカインだった。

 その後ろにはリーフもいる。

 

「あれ誰だ?」

「え?カインさん達の知り合いじゃ…」

「起きた?遅いなお前ら」

 

 誰かは本を閉じてこちらを向く。

 その人物の正体は―――――

 

「折角ロアール様が迎えに来たってのにお前らは何なんだよ」

「「何でアンタがっ!!」」

 

 ロアールの顔を見てカインとリーフの二人は同時に叫ぶ。

 リルも何も言わなかったが驚いている。

 

「何でって魚座ピスケズに頼まれたんだよ」

「……何を?」

「何って……」

 

 ロアールは満面の笑みでこう言った。

 

「黒髪左目と金髪の修行?」

「「何故に疑問形!?」」

「とりあえず、お前らは力の使い方の勉強をしないとならん訳だ」

 

 ロアールはツッコミを完全に無視し説明を続ける。

 

「普通ならこんな事はしないんだが、お前らの場合ちと面倒なんだ」

「面倒?どういう事だ?」

「ちょっとー!せっかく早く起きてるなら早くご飯食べてよ!」

 

 一同の耳にリリカの声が響く。

 とりあえずカイン、リーフ、リル、ミラの四人は椅子に座った。

 

「……俺は魚座の所にいっから。早く来いよ」

「あれ?食べて行かないんですか?」

「ああ、そんな事より良いのか?急がないと置いて行かれるぜ?」

「リーフはそんな事はしません!!」

 

 リリカは顔を真っ赤にして叫ぶ。

 ロアールは笑顔で手を振りながら家を出た。

 

「リリカさんとリーフさん、どこかに行くんですか?」

「ええ、ちょっとね。リーフ、あなたは遅刻を許すって」

「そうか」

 

 そんな事言ってないけどね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、行くか」

 

 カインは手ぶらで家を出ようとする。

 

「何も持って行かないんですか?」

「大丈夫、大丈夫」

 

 リルはカインの言葉に首を傾げる。

 カインが出て行くと、今度はリーフがパンパンになるほどの荷物を入れた、大きなリュックを背負ってやって来た。

 

「あの……その荷物は?」

「俺とカインのだ」

「えっ!ちょっとカインさん!自分のは自分で―――」

「いや、良いんだ」

 

 リルの言葉を遮ったのはリーフだった。

 

「でも……」

「これは修行だ。修行だ……」

 

 リーフは洗脳でもされたかのように、修行だと連呼しながら一歩、また一歩と歩く。

 リリカはその後ろを歩いているが、かなり不安そうだ。

 

「リーフさんとリリカさん……何処に行くんでしょうか」

「さぁな」

 

 カインはそう言うとリーフ達とは逆の方に歩き出した。

 

「カインさん!」

 

 リルの声にカインが振り返る。

 

「行ってらっしゃい」

「……ああ、行ってくる」

 

 カインは踵を返し、また歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれか……」

 

 リーフとリリカはどこかの丘に来ていた。

 その丘には立派な墓石が二つ。

 そしてその墓石には字が彫られている。

 

「久し振りだな、セルシア」

 

 リーフ達から見て左側の墓石にはセルシアと彫られている。

 セルシア、彼女はリーフとリリカの昔の友人で今はもういない。

 明るく元気で、空のように澄み渡った色の髪の少女だった。

 

「リーフがこの場所を選んだんでしょ?」

「ああ、二人ともここが好きだったからな」

 

 もう一つの墓石にはアシードと彫られている。

 彼も二人の友人でセルシアと同様、今はもういない。

 彼は少し内気だが優しい心を持った、雲のような銀髪の少年だった。

 

「二人とも久し振り」

 

 リリカは二つ墓石に向かって笑顔で言う。

 

「もう一度で良いから皆と一緒にいたかったな」

「何言ってんだ」

 

 リリカはリーフを見る。

 リーフは墓石の前にしゃがみ込み手を合わせ目を閉じる。

 

「アシード、セルシア。お前達の心は俺達が連れてってやる。だから……」

 

 リーフは閉じていた目を開き言った。

 

「俺達の事、笑って見てろ。ずっとな」

「リーフ……」

 

 リーフは立ち上がり踵を返す。

 

「また、来るからな」

 

 リリカもリーフの後をついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人は気付いていない事が一つあった。

 それはあの墓石にもう一つ彫られているという事。

 それは誰がいつ彫ったのか、彫った本人しか分からない。

 しかも裏に彫られているのだ。

 それはたった五文字の言葉だった。

 

 

 ―――――ありがとう

(雪龍)

「皆さん、今回はどうでしたか?」

(カイン)

「何で突然家に戻って来てんだよ。訳分かんねぇ」

(雪龍)

「いやさ、どうせ帰る時の話なんて書いたって楽しくないじゃん」

(カイン)

「だから色々すっ飛ばして帰って来たと」

(雪龍)

「そゆこと」

(カイン)

「駄目だな。コイツ」

(リル)

「次回からは『アース』のメンバーの日常等です」

(リーフ)

「勿論カイン抜きだな」

(カイン)

「お前もだよっ!!てか、俺の出番がまた無くなる!!」

(雪龍)

「お楽しみに~」

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