第32話 次元を超越した刃
シルゴートはダイダラボッチに駆け寄る。
七つの剣はシルゴートの周りを浮遊する。
そして、手に持っていた『天叢雲剣』で斬りかかる。
ダイダラボッチは避けるが、剣閃から光が出て、光の斬撃が肩を掠める。
「光の斬撃か……」
「まだですよ」
今度は紫色の剣の『神戸剣』で斬りかかる。
すると剣から炎が出てくる。
炎は当たらなかったが、剣が少し掠る。
「炎の斬撃……」
シルゴートはニヤッと笑い、『神戸剣』で斬りかかるが全て躱される。
「躱して全ての能力を把握しようとしても無駄ですよ」
「それはどういう事だ?」
「全ての能力を使った時、あなたはもう死んでますから」
シルゴートはニコッと微笑みながら言う。
顔だけ見たら爽やかな青年というイメージだが、言ってる事はえげつない。
シルゴートは緑色のレイピアの様な『布都御魂』を握り構える。
「次は何だ?」
シルゴートは剣を地面に突き刺す。
するとそこから木の根っこの様なものがダイダラボッチへと向かって行く。
「こんなものでどうにかできるとでも―――――!!」
ダイダラボッチは躱そうと足を動かすが、紫色の蛇に絡みつかれ動けなかった。
そのうち根っこも腕や腹に絡みつく。
「なっ!」
「どうしたんですか?全然攻撃してきませんが……まぁ、それはそれで良いんですけどね」
『布都御魂』で斬りかかる。
その時、ダイダラボッチから黒い光が放たれ、シルゴートの腹を貫く。
「かはっ…!」
「油断したな…その一瞬の隙が死を招くという事も知らずにな」
ダイダラボッチは力づくで根っこをや蛇を引きちぎる。
「剣には剣で止めを刺してやろう。闇の錬葬剣」
手に闇の力を纏わせ、シルゴートを斬りつける。
しかし手応えはなく、シルゴートは霧のように消えた。
「何っ!?」
「これであなたに隙が生まれましたね」
「がっ、あぁあぁぁあ!!!!」
いつのまにかシルゴートはダイダラボッチを貫いていた。
剣を引き抜くとダイダラボッチは膝から崩れ落ちる。
「何故だ……」
「あなたは『神戸剣』の能力を炎を出すものと言いましたよね」
ダイダラボッチは何も答えない。
「けど、それは全然違うんですよ」
「どういう…事だ…!」
「『神戸剣』の能力は斬りつけた相手に幻覚を見せるというもの。つまりさっきの僕は幻覚だった」
「くっ…小癪な…」
「小癪で結構。では、そろそろ消えてください」
シルゴートは神戸剣を振りかぶる。
ダイダラボッチがニヤッと笑みを浮かべると、黒い光がまたもやダイダラボッチを包む。
「今度は何だ…?」
黒い光はどんどんでかくなっていく。
そして光が消えるとそこには、10mほどの巨人の姿をしたダイダラボッチがいた。
「ココマデ追イ込マレルトハナ…」
「巨人になったら片言?設定を盛らないでください」
「……思ったんだけど、アイツさっきから何でナレーションとか設定とか言ってんの?」
リーフの些細な突っ込みは誰も聞いてくれなかった。
ダイダラボッチはシルゴートに向かってパンチする。
シルゴートは反応が遅れ、剣で防ぐが衝撃までは受け止められずに壁まで吹き飛ばされる。
「シルゴート!!」
「終ワリダ。モウ死ンダ」
ダイダラボッチの笑いが部屋を包んだ。
カインサイド
「何で俺が行っちゃいけねぇんだよ!!」
「せやから言うたやん。あんたが行っても無駄なんやって」
「それでも…!!」
カインはその時何かに感付いた。
「まさか、俺が行っちゃ不都合な事でもあんのか?」
「え!?いや、そんな訳ないやん。もう、何言い出すのこの子は~…」
そう言ってスウェルは目を逸らす。
それを見て、カインは何かあるのだと確信する。
スウェルは嘘をつき通すのが下手ならしい。
「ボス、後ろにUFOが…」
「そんな手が通用する思うてんのか」
「いねぇよ」
「おらんのかい!!」
スウェルは思わずずっこけそうになる。
そして、腕を組み話し出す。
「あのな、行きたいのはわかるんやで?でも、行かせたらあたしが怒られんねん……聞いとる?―――」
スウェルが振り返ってカインに尋ねたが、そこにカインの姿はなかった。
「あのボケ!行ってもうたんか!!」
スウェルは急いでカインが行ったであろう方に走っていく。
「絶対カインに蛇遣い座を会わせたらあかん…!!」
「おい!あんたの仲間なんだろ!!」
リーフの叫びにレイルは何も返さない。
「聞いてんのかよ!!」
「……仲間、か」
そこでレイルは口を開いた。
「言っとくがオレ達に仲間意識はねぇ。ま、信用してるけどな」
そう言うと瓦礫の山が一瞬にして無くなった。
そこから出て来たのは傷だらけのシルゴートだった。
手には黒い大剣の『黒漆平文大刀拵』を持っていた。
「なんて事するんですか。危うく死ぬところでしたよ」
「死ンデナイトハナ。頑丈ダナ」
「別に褒められても嬉しくないですよ」
次にシルゴートが手にしたのは青い長い刀『陸奥大掾三善長道』。
「次ハナイ。闇ノ黒柱」
ダイダラボッチは手を前に出す。
するとシルゴートが闇の力に呑み込まれる。
「今度コソ終ワリダ」
「何が?」
シルゴートが刀を振るうと、刀に闇の力が吸い込まれる。
「まだ終わってませんよ」
「ナラコレハドウダ!」
シルゴートは素早く赤い大剣の『鬼丸国綱』に持ち替える。
「闇ニ染マッタ破窮漸!!」
ダイダラボッチは自身の持つ技でも最上級の技を繰り出す。
闇の力は大きな刃の様な形となりシルゴートに迫る。
「まだですよ」
闇の刃に『鬼丸国綱』をぶつけると、闇の刃は消えてなくなった。
それを見ると、今度は黄色い刀の『呉竹鞘御杖刀』に持ち替える。
「これで決めないと終わりですよ」
「ナラバ最強ノ技デ沈メテヤロウ」
「当たると良いですね」
「コノ技カラハ逃ゲラレヌ。闇ニ堕チタ絶望ノ扉!!!」
ダイダラボッチは両手に闇の力を限界まで溜め、一気に解き放った。
何処にも逃げる隙間は殆どない。
「今度コソ終ワリダ」
「勝手に終わらせないで下さいよ」
「ナッ、一体ドウヤッテ…!!」
「この『呉竹鞘御杖刀』の能力は『超速移動』。どんな技よりも速く動いてしまえば意味はない」
その時、シルゴートの周りの刀剣が一点に集まる。
「さて、『天叢雲剣』の『光の斬撃』、『神戸剣』の『幻覚』、『布都御魂』の『植物繁殖』、『黒漆平文大刀拵』の『衝撃波』、『陸奥大掾三善長道』の『吸収』、『鬼丸国綱』の『分解』、そして『呉竹鞘御杖刀』の『超速移動』。全ての能力を使った今、この『七柄之大弥剣』の真の姿へと覚醒する」
シルゴートの手には鞘に入った刀があった。
「あなたが闇族で良かった。これは人に向けて使いたくない」
一本のただの刀。
だが、そこから今まで感じられなかった、途轍もない力が感じられる。
「対闇族用最終奥義―――無次元連塵斬!!」
刀を一気に振り抜き、また鞘に戻す。
刃は全く届いていなかった。
「……残念ダッタナ。全ク当タッテイナイゾ」
「急かさないでください。ちゃんと―――――」
ダイダラボッチの腕から血が噴き出す。
そこには斬り傷があった。
「当たってますから」
その瞬間、空気ごと斬れた感じがして、ダイダラボッチがバラバラになった。
「次元を超越した刃はどうでしたか?」
シルゴートの目が、鋭く光った。
(リル)
「今回は少し長めでしたね」
(雪龍)
「そうだね。いつもよりかは長かったね」
(リル)
「それはそうと、カインさんの姿が見えないんですが…」
(雪龍)
「暴れそうだったから縛り付けておいたよ」
(リル)
「何故暴れるんですか?」
(雪龍)
「出番が(ほぼ)無かったから」
(リル)
「あぁ…」
~『アース』の一口コーナー~
(リアン)
「今回はリアン=ヴァンパイアと」
(カレン)
「カレン・イルジーナでお送りします」
(リアン)
「さて、僕から質問良いですか?」
(カレン)
「ん、何?」
(リアン)
「この小説って人気あるの?」
(カレン)
「あるわけないじゃない♪」
(リアン)
「じゃぁ、やってる意味あるの?」
(カレン)
「もちろんよ。人気が無いとはいえ、読んでくれてる人がいる限りね」
(雪龍)
「僕の心が深く傷ついた…」
(リル)
「え、えっと、感想などお待ちしております。次回もお楽しみに~…」