第28話 憎しみの完成
アシードは光に包まれながら昔の事を思い出していた。
―――憎い、憎い。何もかもが…。
今から八年前の事。
「お前ら!アシードを虐めるな!」
「ヤベッ!リーフだ!逃げろ!!」
リーフは虐めっ子を追い返す。
当時九歳だったリーフは、虐められっ子を守るヒーローのような子だった。
「リーフ、いつもありがとう…」
「気にすんな。俺達友達だろ?」
「……うん」
「リーフー、アシードー」
「おっ、セルシアとリリカだ」
リーフ達に向かって走ってくる少女が二人いた。
一人は栗色の髪の大人しそうな少女。
もう一人は水色の髪の活発そうな少女。
「アシード大丈夫!?また虐められたの!?」
「だ、大丈夫だよ。リーフが助けてくれたんだ」
「そういうこった」
リーフは胸を張って言う。
「そっか。リーフがね……」
リリカは少しからかう様な目でリーフを見る。
「何だよ!」
「いやぁ、リーフも変わったよね」
「そうそう、昔はどっちかというと虐めっ子の方だったのにね」
「む、昔の事は忘れた」
それを聞いてリリカとセルシアは笑う。
そんな三人を見てアシードも微笑む。
「よし、今日は何して遊ぼうかな」
「あの丘に行こうよ!」
「……セルシアはあの丘好きだな」
「だって綺麗なんだもん!」
セルシアの提案に誰も反対することはせず、丘に行く事になった。
今思えば、それが間違いだった。
丘は森を抜けた所にある。
森は昼でも薄暗く、あまり人は通らない。
「何か出そうだよな。ここって」
「そ、そんな事言わないでよ!」
「あれれぇ?リリカさんは怖いのかなぁ?」
「別にそんな事―――――」
そんな事ない、と言おうとしたが突然草むらが揺れ、思わず驚く。
四人は草むらを見る。
というより睨む。
すると、草むらからウサギが出て来た。
「な、なんだ、ウサギか…」
「分かったなら、離してくれ」
「あっ、ご、ごめん」
リリカはいつの間にかリーフを抱きしめていた。
あまりに強く抱きしめていたものだからリーフは少し苦しそうに言った。
それに気付いたリリカは顔を真っ赤にして離れる。
「お二人さん、こんな所でイチャイチャしなくても……」
「「イチャイチャなんてしてない!!」」
「息もぴったりでお熱いわねぇ」
リーフとリリカは幼少時代からこんなだった。
セルシアは結構マセていた。
そんなこんなやっていると四人は丘に着く。
花は咲き乱れ、風はそよそよと吹く。
「ホントに綺麗よね!ここ」
「そうだね」
セルシアとアシードは向こうの方で遊んでいる。
リーフは気にもたれ掛かって昼寝をし、リリカは花で冠を作りリーフの頭に乗せていた。
「良い感じに出来たわ」
「zzz……」
「ねえ、セルシア、この花はなんていう花なの?」
「それは『イエローレッド』っていうお花よ」
「黄色…?赤…?」
四人は思い思いのことをして楽しんでいた。
やがて、日は暮れて空には点々と星が輝きだす。
「あっ、大変!もう夜になっちゃう!」
「早く帰ろうぜ」
四人は急いで森を抜けようと思い走った。
走っていると、行きの道と同じように草むらが揺れた。
どうせまたウサギだと思った四人はまた走ろうとした。
しかし、草むらから出て来たのは2m程の大きさの熊だった。
「くっ、熊!?」
「とりあえず逃げろ!」
「リーフはどうするの!?」
リーフは近くに落ちていた木の棒を拾って答える。
「ちょっと時間を稼いだらすぐ行くから!早く!!」
リーフは後ろを向いて叫ぶ。
その一瞬が命取りになり、リーフは熊に前足で殴られる。
そのまま吹っ飛び、樹に激突し崩れ落ちる。
「リーフ!!」
「く、くそぉ!!」
アシードは石を拾い、熊目掛けて投げつける。
すると、それは運よく熊の目に当たる。
「い、今のうちに!」
アシードはリーフの元へと走る。
しかし、熊が暴れ、振るっていた腕がアシードに当たり、アシードは吹っ飛ぶ。
アシードはそのまま後ろにあった崖に落ち、熊は草むらに走って行った。
「アシードォ!!」
「リーフ、大丈夫!?」
「それより、アシードを……」
リーフ達は回り道をして崖の下へと向かった。
「う…僕は…」
アシードは目を覚ました。
しかし、体中が痛み、動くことができない。
『お前はじきに死ぬ……』
「君は…誰…?」
『私はお前の中の憎悪だ』
「ぞう、お…?」
『そうだ。お前はこんな目にあって、少なからず憎悪を抱いているはずだ』
「そんな、事は…ない…」
『本当にそうか?お前だけこんな所で死にかけて……自分の運命を憎んでいるのではないか?』
アシードは目を見開く。
そして、今までの思い出が甦る。
「僕は…リーフ、リリカ…それに、セルシア、皆に会えたんだ……そんな運命を、憎んでなんか…ない」
『その皆は今お前を助けてくれているか?』
「もうすぐ、来てくれるはずだ……」
『いや、奴らはお前を見捨てて帰った』
「!! 嘘だ……」
アシードの声は震えている。
しかし、追い打ちを駆けるように声は止まらない。
『信じたくないのも分かる。だがこれが事実だ』
「そんな…」
『憎いだろう?運命も、友達も』
「……………」
『私の手を取れ。そうすれば、お前は運命から決別することができる』
アシードは手を差し伸べられる。
その手をゆっくりと掴み返す。
「……僕はこの運命を許さない。絶対に」
『そうだ。共に行こう…』
アシードは黒い靄に包まれた。
その後、リーフ達はアシードを朝になるまで捜した。
しかし、とうとうアシードは見つからなかった。
街では、アシードは死んでしまった、という事になった。
それきり、セルシアは部屋を出なくなり、病気になってしまった。
その病気は治る事はなく、どんどん悪化していき――――――
「そうだ……僕は、裏切られて……」
『思いだしたか。今こそ奴に思い知らせてやれ』
「……ああ」
アシードは自分を呑み込んでいた光を消し飛ばす。
リーフはそれに驚く。
アシードからは黒い靄が出ている。
「お前に本当の恐怖を教えてやろう…」
「……お前、アシードじゃねぇな」
「気付いたか。私はアシードであってアシードではない」
「……どういうこった?」
「私はこいつの中の憎悪。そして今完成した」
リーフは何の事だと尋ねる。
すると、アシードは高笑いする。
「私は闇族として完成したんだよ!!」
そう言うと、アシードの口から黒い靄が一気に放出され、アシードはその場に崩れる。
靄は一点に集まり、人の形をなしていく。
「テメェがアシードを……」
「私はエルセドメス。もうアシードではない」
「……初めてだ……」
「?」
次の瞬間、リーフからものすごい量の輝力が溢れ出る。
そして、その輝力はリーフの右手に集まり銃になる。
「ここまで何かを壊したいと思ったのは―――――初めてだ!!」
(カ)「おい、俺の出番はいつ来るんだよ」
(雪)「さぁ…」
(カ)「てか、ちゃんと出番来るんだろうなぁ」
(雪)「それは安心して。ちゃんと来るから」
(カ)「まぁ、そう言うなら…」
(雪)「次回もお楽しみに!」
(カ)「最近強制終了が無いな」
(雪)「良い事だと思うよ?うん」
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