第25話 檻の恐怖
「「「誰だっけ?」」」
三人が同時に言うと、部屋にいた男は思い切り顔面からずっこけた。
「何だね!カイン・クリーク!!貴様だけは忘れてはいかんだろ!!」
「えっ?俺だけ?」
「そうだ。貴様だけは……」
「カインさん、何したんですか?」
カインは顎に手を当て、目を閉じて考える。
そして何かを閃いたように、目を開く。
「もしかして、アポン・カスタマイゾ・ヌべルボッチャー君?」
「誰だいそれは!!」
「違うわよ。あれは『せせらぎの宿』の人でしょ」
「ああ、そうだっけ?」
カインは先程と同じ姿勢で再度考える。
そして思い出したのかと思いきや…。
「誰だっけ?」
「結果それかい!!」
「いや~、ごめん。俺人の顔と名前覚えるの苦手なんだよ」
カインは笑みを浮かべる。
そして、男は歯軋りをする。
「僕の名前は、エーゴイル・サムレングス。貴様に父を殺された男だ…!!」
「サムレングス?ああ、あのクズの子供か……」
「カインさんが……人を殺した…?」
「ああ、そうだ。そいつは人殺しだ」
リルはカインの方を見る。
カインの目は、怒りに満ち溢れていた。
「そうか……どっかで一回だけ会ったな」
「ようやく思い出したか」
「お前に用はねぇ。失せな」
「こっちはそう言う訳にはいかないんだよっ!!」
そう言って、エーゴイルは服の袖にしまっていた鉄の棒を取り出し、カインに殴りかかる。
それをカインは、炎を灯した手で受け止め、棒を溶かす。
武器を失ったエーゴイルは一度離れる。
「貴様にも大切な人を失う辛さを教えてやろう…!!」
そう言うと、エーゴイルは指を組む。
「輝力奪略の檻!!」
カインの立っている場所の上空に、鉄格子の檻が現れ、カインを閉じ込める。
「まさかこれは…!」
「これで貴様は動けない」
「っ!二人共逃げろ!!今のこいつは―――――」
「俺の能力が使える!!」
ここはとある一室。
「もうやっとるのか…」
「エーゴイルはカインに強い恨みを持っておるからの」
「しかし、あなたも悪いお方だ。あんな事を言って……」
「ふっ、別にいけない事は無いだろう。そう言えば、主もカインと戦いたいのではなかったか?」
「宜しいので?」
「構わんよ」
それを聞くと片方の男が出ていく。
「アイツの方は……まだお話し中か」
リーフのいる部屋。
「何でお前がこんな所に……」
「会いたかったよ。リーフ」
「質問に答えろよ、アシード」
アシードと呼ばれた銀髪の青年はニッコリと微笑む。
「そんなに僕と話すのは嫌かい?」
「違う!!何でお前がこんな所に―――」
「正直に言ったらどうだい?」
アシードの顔が冷たいものに変わる。
「『何でお前が…」
リーフが少し動揺する。
額から脂汗がにじむ。
「生きているんだ?』ってね」
アシードの顔がまたニッコリとした表情になる。
「少し話をしようよ……リーフ」
その言葉がリーフにはとても重く感じられた。
「カインさんの能力が使えるって……」
「今の俺とアイツは、言ってしまえば二人で一つみてぇなもんだ!俺の輝力はあいつのもんになってる!!」
その言葉に、エリサは笑みを浮かべて前に出る。
「という事は、アイツを倒せばアンタを倒したようなもんなんでしょ?丁度良いわ。この場で、どっちが強いかはっきりさせる」
「絶対にカインさんを助けます!」
「カイン、貴様は目の前で仲間が死ぬのを見ることになるぞ」
エーゴイルはカインの方を見て、手に炎を灯す。
「アンタみたいなのに私達は負けないわよ」
「そういうことです!」
エリサは指を組み、詠唱を始める。
エーゴイルがエリサの方に向かうが、リルがエリサの前に立つ。
「行きます!!」
リルが手を前に出すと、手からシャボン玉が数個出てきた。
「シャボン・ランチャー!!」
シャボン玉が、エーゴイルの方に向かい体に当たった瞬間爆発した。
「ぐっ、何だっ!!」
「これは……」
「スウェルさんに扱い方を教えてもらってたんです!」
「雷散!!」
詠唱を終えたエリサの手から、いくつもの雷がエーゴイルを襲う。
「ぐはっ!くそが……死ねぇッ!!」
手に灯していた炎が大きくなり、そして傷も治っていく。
それに合わせてカインが苦しそうにする。
「カインさん!」
「輝流を使わずに輝力だけ奪われているんだ。さぞかし辛いだろうなぁ」
そう言って、更に炎を大きくした。
「ぐっ…はぁ…はぁ…俺は、いいから…」
「許さない…」
リルの手からシャボン玉が大量に出る。
「それ以上カインさんを苦しませないで!!」
「やだね」
今度は左手にも同じくらいの大きさの炎を灯す。
「ぐぁっ!…くはっ…はぁ…うっ!」
カインは地面に膝をつく。
「やめてっ!!」
シャボン玉がエーゴイルに向かっていくが、炎でかき消される。
「……リルちゃん」
「な、何ですか?」
「作戦があるの」
エリサはリルに耳打ちをする。
リルは一度頷き、数個のシャボン玉を出す。
「さて、私達の連携を見せてやりましょ」
「はい!」
「掛かって来いよ。あんまチンタラやってるとカインの輝力を全部使うぞ?」
第二ラウンドのゴングが鳴った。
(雪)「ヤバいヤバい…」
(リ)「どうしたんですか?」
(雪)「いやぁ、つくづく文才ないなぁと思って」
(カ)「そりゃ元からだろ」
(雪)「そうだけど…」
(リ)「?」
(雪)「これ続けてたらもうちょいマシになると思ったのに」
(カ)「考えが甘かったな」
(雪)「スイマセン…」
(リ)「次回予告だけでも…」
(雪)「次回はリル&エリサvsエーゴイル決着です!」
(リ)「それでは次回もお楽しみに」
(雪)「リルがいるとまともだなぁ」
(カ)「俺がいないとまともにできないみたいな言い方だな」
(雪)「そうですけど!?」