第19話 魅惑の槍使い
「騙された…」
待ち合わせ場所に来て今回のお相手を見た途端、リーフは溜め息をついて言った。
そう、リーフが。
何故リーフが来たのかそれは約12時間前に遡る。
「リーフー」
カインはリーフを呼び止めた。
呼ばれたので当然リーフは振り返る。
「何だ?」
「明日お前暇?」
「ああ、暇だけど」
それを聞いてカインはホッとした表情を見せる。
「明日俺の代わりにリルと仕事行ってくんない?」
「は?」
こいつは何を言っていやがる、などと思ったが、口には出さなかった。
「何故だ?」
当然そう聞くだろう。
理由も無しに、頼んでいるなら拒否してやろうと思ったからだ。
「え、えーと、ほら…」
何故かうろたえている。
かなり怪しい。
「明日の仕事はさ……あの、お前が行った方が都合が良いんだよ!じゃあな!!」
そう言うと、急いで自分の部屋に戻って行った。
「まぁ、良いか」
それ以降特に何も聞かずに、了承してしまった。
それが間違いだった。
―――――その結果がこれだった。
今回一緒に行くのは、腰まである青い長い髪と、男性でも女性でも憧れる見事なプロポーションが特徴の女性だ。
「騙されたとは随分な言い様ね」
「生憎その言葉しか出てこなくてね」
リーフはこれでもかと言う位にげんなりしている。
理由は後々分かるのだが。
「えっと、そっちの子は…」
「リル・コークレインです。よろしくお願いします」
「ん、わたしはカレン・イルジーナ。よろしく」
一通り自己紹介を済ませるとカレンはリーフに向き直り尋ねた。
「来るのはカインだって聞いてたけど?」
「ああ、どっかの誰かさんに苛められるからってドタキャンだよ」
「……まあ、良いわ。リーフも面白いし」
カレンのテンションは上がっているが、逆にリーフのテンションはだだ下がりである。
「で、どんな仕事なんだ?」
「レッツ潜入大作戦よ!」
「意味分からん」
「まぁ、とりあえず着替えてもらうから」
そう言うと有無を言わせず、リーフは連れて行かれた。
―――――10分後
リルは絶句した。
なんとそこには女装をしたリーフがカレンの後ろに隠れていた。
かなり見えていたが。
「じゃっ、行きますか」
「覚えてろよ、カインの野郎…!!」
今この場にいないカインに向かってかなり怒っていた。
あの後深追いしなかった自分にも多少なりとも責任はあるのだが、今のリーフはそんな事を考える余裕が無かった。
「てか、本当にこの格好で行くのか?」
「そうだけど?嫌なの?」
「当り前だ!!大体なぁ」
「あ~、つべこべ言うなっ!新連載のせいだかなんだか知らないけど、出番が中々来なかったから早く暴れたいのよ!!」
「そんな事情知るかっ!!」
その後、結局リーフはボコボコにされて連れて行かれた。
「何だここは…!」
一行は只今ヘンテコと言う単語が最も店に来ていた。
どうやら二階は誰かの家らしい。
「この店は女性しか入れないの」
「だからこんな格好なのか?」
「そゆコト」
(こう言うのはリリカかミラに頼めよな……)
一行は店に入った後、カレンが店員と何か話しだした。
やがて帰ってきていきなり
「上行くよ!上!」
「待て、話が掴めない」
「しょうがないなぁ。上に住んでる奴がなんかここの金を巻き上げてんだって」
「アバウトな回答をどうもありがとう」
上の階にはたくさんの傭兵がいた。
だが素早く背後に回り込み一人ずつのしていった。カレンが。
「あー、面白くないわぁ。何ここの連中」
「戦闘狂の血が騒ぐってか」
「やっぱ兄弟ね、あんたら」
そんな軽口を叩いていると、前方から傭兵が大量にやってきた。
「面倒だから一気に終わらせようかな」
そう言うとカレンは手を前にかざす。
するといつの間にか手には槍が握られていた。
「いきなり行っちゃうわよ~。魔錬具強化改造!」
光がやむと槍は炎を灯していた。
カレンはそれを数回回し構えた。
「蓮派槍!」
傭兵達に向かって鋭い突きを浴びせる。
「灸旋邦臥!!」
槍を思い切り振り回す。
「次でラスト!!」
カレンは傭兵達に向かって走っていく。
「貫く…」
「鋭き槍術によって!!」
「秋漸覇王閃!!!」
一気に傭兵達はカレンの槍の餌食となってしまった。
「かわいそうに。こいつに当たったのが運のつきだな」
「情けは無用よ」
「はぁ、恐ろしいな」
「さあて、金も取り返せたし帰りますか」
傭兵達を倒した後、金を巻き上げていた奴をカレンが脅して、金を返してもらった。
もとい奪い取ったのだった。
「まぁ、楽勝だったかな」
カレンは一人先頭を歩いていた。
「破動使うまでもなかったし」
その呟きはリルにさえ聞こえないとても小さな声だった。
「ただいま」
「おい、カイン何処だ…!!!」
リーフはズタズタと足音を立てながら、部屋に入っていく。
自分の格好も気にせずに。
「リ、リーフ!何て格好してるの!?」
「あ、着替えるの忘れてた」
「……でも妙に似合ってるのは何でかしら」
リーフはそれを聞いてかなり妙な気分になった。
「とりあえずカインをシメてくる」
「待って!今カメラ持ってくるから!」
「いや、撮らなくてもいいから!」
リーフにとって人生で最も忘れ難い一日になったとさ。
カレン・イルジーナ
Karen.Ilgena
【武具:槍/21歳/女/172㎝/52㎏】
青い長い髪の女性。
戦いが大好き。(リーフ曰く戦闘狂)
普段からカインを恥ずかしい目にあわせてやろうと企んでいるが、毎回失敗に終わる。
魔錬具強化改造ができる。
決め台詞は「貫く、鋭き槍術によって」
(雪龍)「はぁ、今日はかなり頑張ったなぁ。14日になっちゃったけど」
(リーフ)「それは良かったな…!!」
(雪)「あれ?リーフの後ろに黒い物が…」
(リ)「次は俺の出番だよなぁ…」
(雪)「いや、今のところそんな予定は―――」
(リ)「俺だよな…?」
(雪)「は、はい!そうでございます!」(怖ぇよ…)
(ルイス)「何?楽しそうじゃん」
(雪)「ルイス!お前こっちには来ちゃ駄目だろ!!」
(ル)「良いんだよ。只今強化月間だから」
(雪)「そんな事許すか!強制終了!!」
(ル)「おい、勝手に終わらせんなよ!」
(雪)「こっちはいっつもされてんだよ!!!!」