第17話 交わる斬撃 前編
半分位家でのお話です。
「ふぁ~、もう朝か…」
窓から光が差す。
時計を見てみると、7時26分だった。
カイン的には早く起きた時間だ。
まだ虚ろな目を擦りながら、一階に下りていく。
「もう起きてんのか」
そこにはエプロンを着た人物がいた。
どうやら朝食を作っているようだ。
大方リリカだと思っていたが、しかし
「……リル?」
「へ?うわぁっ!」
朝食を作っていたのは、リルだった。
リルは突然話しかけてきたカインを見て、かなり驚いた。
さすがに驚き過ぎではないのかというぐらいに。
「どうしたのリルちゃん、ってカイン!?今日は随分と早いのね」
「二人してそこまで驚かなくてもいいだろ」
今度こそはリリカだった。
そして驚く。
カインは心の中で、俺が早く起きるのがそんなに珍しいか?と考える。
自分からしたらそうでもないと思うが、周りからしたら雨が降るのではないかと思う人も少なくない。
「つーか、お前等も十分早ぇだろ。何してたんだ?リルは朝飯作ってたみたいだけ…ど……」
そこまで言ってやっと気付いた。
二人が早く起きた事にではない。
リルが朝食を作っていた事にだ。
「お前何で飯作ってんの?」
言い終えて言い方が少しまずかったかと思ったがそうでもなかった。
「最近リリカさんに習っているんです」
と嬉しそうに言った。
どうやらリリカから聞いた話によると、日々この家でお世話になっているので、恩返しも兼ねて何かしたいと言い出したのが始まりらしい。
「なるほどな。いつから始めたんだ?」
「一昨日からです」
一昨日と言えばいつもと何ら変わりはなかった。
それはリリカの教え方が良かったのか、それともリルの筋が良かったのか。
「今日は何作ってんだ?」
「それは出来てからのお楽しみです」
何故か勿体ぶられてしまった。
まぁ、カインも追及はしなかったが。
「「カインが俺(私)より早く起きてる!?」」
「その反応もう飽きたわ!!」
ただいま8時。
起きてきたのはリーフとミラ。
「珍しい事もあるもんだな。もしかしたら雨が降るか―――」
「それ以上言わなくて良いからな」
リーフの言葉を遮って椅子に座る。
その隣にリーフ、そしてカインの前にミラが座った。
「「…………」」
「別に黙れとは言ってないぞ?」
「「いや、隣(前)にカインがいるのが珍しくて」」
「あっそ」
カインはふて腐れたように頬杖をつくと、リルがお盆を持ってやってきた。
「朝ご飯でございますわ」
「ど、どうした?」
「トルージュさんの物真似ですよ」
「何故にっ!?」
「毎朝誰かの真似してくれるのよ。似てるでしょ?」
ミラは自分がするわけでもないのにどこか楽しそうだ。
とりあえずリルは持ってきた物を机に置く。
本日の朝食はご飯、味噌汁、目玉焼き、その他諸々。
「さ、召し上がれ♪」
「やらされてるわけじゃ…ないよな?」
「「……………」」
リリカとミラは黙って顔を背ける。
カインはその様子を見て
「やらされてんのかよ!てかリルも嫌なら断われよ!!」
「別に良いじゃない。かわいかったでしょ?」
リリカの言葉に何を言っても駄目な事を悟ったカイン。
「それより早く食べよっ。いっただっきまーす!」
『いただきます』
ミラの言葉を筆頭に全員が言った。
カインは目玉焼きを食べてみた。
何故か女性陣が凝視してきた。
きっと感想を求めているのだろう。
そこでカインは思った感想を口にした。
「すごいおいしい。リル」
しかも満面の笑みで。
カインファンが言われたら卒倒間違いなしだろう。
「良いなぁ。私も頑張ってみよっかなぁ」
ミラはボソッと呟いた。
だがリルはそれを聞き逃してはいなかった。
「何をですか?」
「リルちゃんには負けないって事」
「?」
リルはわけが分からないので首を傾げるだけで終わった。
こうして朝食は終わっていくのだった。
「前置き長くねぇか?」
カインとリルは今回の待ち合わせ場所に来ていた。
「まだあのバカとも会ってねぇんだぞ?」
「あのバカとは無礼だぞ!」
今回も突然後ろから話しかけられた。
だが今日のリルは一味違う。驚かなかったのだ。これが慣れという物なのか?
「その登場の仕方も飽きたんだよ。リルも驚かなくなってきてるし」
「ぬぬ……何処までも無礼な。カイン・クリーク」
カイン曰くあのバカ―――黒い髪を後ろで束ねていて、武士の様な格好をした細目の男―――は一度溜めてカインに向かって叫んだ。
「カイン・クリーク!決闘じゃ!!」
「やだよ、めんどくせぇ」
「なぬっ!?」
だがカインはそれを簡単にあしらった。
「めんどくせぇ」の一言で。
「決闘じゃ~!!」
そう言うと男は腰に下げていた日本刀を抜いてこちらに向けてきた。
「やめとけ佐祢丸。リルが怖がってんだろーが」
「むっ、そなたがリルか。拙者は如月佐祢丸と申す」
「初めまして、リル・コークレインです」
独特な喋り方をする人だとリルの中で認識された。
「今回は何すんの?」
「うむ、拙者達はさすらっている者を蹴散らしに行くのじゃ」
「「……は?」」
カインとリルは一斉に首を傾げる。
だがそんな事は気にせずに、佐祢丸はさっさと歩きだしてしまった。
今一行はコーライ城跡地に来ていた。
よくよく聞いた話によると、さすらっている者というのは巷で噂なのかは知らないが、『辻斬りヤグモ』というらしい。
それにしても何故こんな所かというと
「ここがさすらいの名スポットなのじゃ」
カインは『さすらいの名スポット』って何だよと言おうとしたが言わなかった。否言えなくなった。何故なら
「マジでいんのかよ」
上記の通りいたからである。
「拙者の情報網をなめるでない!」
「どうせアダンにでも聞いたんだろ?」
カインが言うと、佐祢丸の肩がビクッと跳ねた。
「図星か」
「ち、違う!!拙者は―――」
「雨は私を照らす…」
突如さすらいの男は詠いだした。
「何言ってんだ?」
「雨がやむと、空が歌いだし―――」
そこまで言うと男は目にもとまらない速さで佐祢丸に近づき斬りかかる。
「虹となり、幻影の刃となって襲う」
だが、刃は身体に当たる前に止まり、その代りに金属がぶつかる音が響いた。
佐祢丸が自分の刀で防いでいたのだ。
「随分な挨拶じゃの」
「ふむ、私の刀を防ぐとは見事。貴様、名は?」
「拙者の名は如月佐祢丸。お主が『辻斬りヤグモ』じゃな」
「いかにも」
二人は間合いを取る。
そして佐祢丸は刀を鞘に納める。
「お主を切り捨ててくれる」
「望むところだ」
二人は構えなおし睨みあう。
そして―――――
「えっ?次回に続くの?」
カインは溜め息をつくのであった。
(佐祢丸)「・・・・・・・」
(雪龍)(ヤバい、どうしよう…すっごい睨んでくる)
(佐)「そこのお主…」
(雪)ビクッ「は、はい…」
(佐)「一話で終わらなかったではないか」
(雪)「んっ?えっ?そ、そんな事?」
(佐)「拙者は一話でかっこ良く終わらせたかったんじゃあ!!」
(雪)「えっ、ちょっ、待て!刀を納めろぉぉおおお!!!」
(佐)「問答無用!!!」
(雪)「うおっ!誰か助けてくれ~!!」
(カイン)「作者がどっか行っちまったんで俺とリルが予告をするぜ」
(リル)「はい!!念願の初登場!」
(カ)「それはお前の感想だろ!予告だ。よ・こ・く」
(リ)「えーと、次回はなんと佐祢丸さんの能力が明らかに!」
(カ)「まぁ、大体の人が分かってると思うけど」
(リ)「…とりあえず、次回をお楽しみに!」
(カ)「作者が斬られて打ち切り…なんて無いよな?」
(リ)「…佐祢丸さんを止めに行きましょう!!」
(カ)「ああ!!」