第16話 静かなる音 後編
「またお前かよ…」
カインとリルは待ち合わせ場所まで来た。
そこでのカインの一言がこれだ。
ちなみにそこにいたのは、お馴染スラン。
「オレだってメンドイし行きたくはねーよ」
「おいおい」
「ただ最近金欠ぎみで参ってんだよ」
「サボリまくってるからだろーが」
カイン曰くスランは生粋のサボリ魔らしい。
だが、このセーブに解雇は無い。
「とりあえず知ってるかもしれないけど、オレはスラン・フォン・フォニムだ」
「よろしくお願いします」
「ん、よろしく」
一通り形だけの自己紹介を終えた一行は、スランがとりあえず歩きながら説明をする、と言ったので、今回の目的地に向かう事にした。
「そろそろ良いか」
そう言い振り返るスラン。
「これから行く所には闇族が絡んでる可能性がある」
「「!!」」
闇族という言葉に驚くカインとリル。
闇族とは、以前カイン達がコーライ城に潜入した時に出会ったとてつもなく強い種族の事だ。
「ちょっと待て!何でお前が闇族の事を知ってんだ!?」
「……五年前、『第一次闇転戦争』ってのがあった」
スランは遠くを見ながら呟くように続ける。
「それは輝流士と闇族の戦争だった。その時に世界から集まった輝流士の中で、最も強かった13人を大地を照らす13星座と呼んだ」
「そんな話聞いたことねぇぞ」
「世間には発表してない。いわば抹消された記録ってやつだ」
「そんな事が……」
カインは信じられないようにスランの方を見る。
だがスランはそれに気付かず、否、気付いていたかもしれないが無視して、そのまま続けた。
「そしてその戦争にオレも参加してた」
「なるほどな。だから闇族を知ってんのか……でも何で闇族がいるってわかるんだ?」
「闇族の紋章があったんだよ」
そう言って一枚の写真を出した。
そこには黒い髑髏を模した模様が描いてある壁があった。
「これが……でも大丈夫なのか?この前のは手も足も出なかったぞ?」
「それはお前が破動を使わなかったからだ」
「破動…?」
リルは何の事だかさっぱりだが、カインは苦笑し、あっそと言う。
「まぁ、上級闇族なら仕方ないけどな」
そう言いうとまた前を向いて歩きだす。
一行はとある村に来ていた。
だが
「なんだこりゃ…」
カイン達の前に広がる景色は火の海だった。
「燃えてるってことは襲撃されて時間はあまり経ってない」
「まだいるかもしれねぇな」
「それより人はいないんですかね……」
周りを見回してリルは人を探そうと言った。
前回の様な事があるといけないので、スラン一人とカイン,リルの二人に分かれて探すことにした。
何故スラン一人なのかというと
「一人で十分だ」
と言ったからだ。
―――――スランサイド―――――
「……人の呼吸や心音が聞こえてこない」
彼は今ヘッドホンを外している。
「もしかして、ここの奴らもう…」
誰一人いないのではないのか?
スランはマイナスなイメージしか浮かんでこない。
するとどこかから叫び声が聞こえてきた。
「今のは…あの子か?」
スランは急いで叫び声がする方に向かった。
―――――時は少し遡ってカイン&リルサイド―――――
「全然見当たりませんね……」
「もしかすると―――」
カインが思っていた事を言いかけると前に人影が現れた。
「大丈夫ですか!!」
リルが人影に向かって走っていく。
「待てッ!リルッ!」
「えっ?」
リルが振り返ると、突然視界が上にあがった。
どうやら首を掴まれたらしい。
「おい、リルを離せ!!」
「キシャシャシャ!ヤダネーだ!」
そう言って腕の力を強める男。
「うぐっ!うあぁぁあぁ!!!」
「てめぇ…!!」
「おぉっと、それ以上近づくなよ…首へし折っちまいそうだぜ」
そう言って更に腕の力を強める。
だがいつのまにか手の中からリルの姿は消えていた。
「あ、ありがとうございます。スランさん」
「誰だテメェはっ!」
スランに気付いた男は怒り叫ぶ。
「誰って、聞いてなかったの?今この子が言ったろ?」
「…!、お前は…」
「やっぱ知ってんじゃねぇか。中級闇族か?」
男は頷く。
それを見てリルの前に立つスラン。
「じゃあ逃げないで大丈夫か」
「へぇ、俺とやるのか?」
「安心しろ―――――」
スランは一度眼を閉じ一呼吸置いて続けた。
「生きて帰しはしねぇよ」
スランは手を前に出す。
「音導弾―――円舞曲」
スランの手から無数の音の衝撃波が出て男に襲いかかる。
だが男はそれを避け、手に闇の塊を造り放つ。
「闇の連皇弾!!」
「音導弾―――回旋曲」
闇と音の衝撃波がぶつかって相殺される。
スランはその隙に男の正面まで高速で移動し
「音響裂断」
「ぐはっ!!」
手刀で斬りつけた。
「なっ、ただの手で何故ここまで斬れる…」
「オレは音を操る……つまり振動を手に纏っていたんだよ」
それで納得したのか男は手に黒い靄を集めた。
細かく振動している事で、斬れ味を上げたのだ。
いや、本来、手刀で人は斬れないのだが。
「死ねッ!闇の緋皇弾!!」
闇の塊がスランに迫る。
だがスランに当たる前にそれは消えてしまう。
「な、何故消えた!!」
「空気を振動させて中和させたんだよ」
スランは男に近寄っていく。
「さて、そろそろ終わりにしてやる。破動の力でな」
「くそがっ!」
男は先ほどよりも大きい闇の塊を造り出す。
「死ねぇぇ!!闇の冥王漸弾ォォ!!!」
「永遠の揺籃歌」
音の衝撃弾が闇の塊を呑み込み、そのまま男に向かって飛んで行く。
「奏でろ…」
「ちくしょおぉぉ!!!」
「至高の旋律を」
「ま、さか…破動、輝流士だった…なんてな…」
男は途中荒い呼吸をしながら喋り続ける。
すると男の身体が黒くなっていく。
「あれが闇族の末路だ」
「はっ、ベイルゲード様の、復活も…近い」
「なっ、闇王が!?」
そこまで言うと男は消えてしまった。
珍しくスランが声を挙げた事に驚くカイン。
「……報告しないといけない事ができた」
そう言うとカイン達の返答も聞かずにスランは先に帰った。
「スランさんすごかったですね」
「あ、あぁ」(あいつがあそこまで取り乱すなんてな…)
その後カイン達が村人探しを続けたが、誰一人見つからなかった。
ここは『アース』本部兼スウェルの部屋。
「おい、やばいことになってきてる!」
「なんやなんや、騒がしいなぁ」
スランは荒い呼吸を整え、今日あった事を話した。
「そうか…闇王が…」
「また戦争になるかもしれないな」
「そうなる前に止めへんとな」
そう言うとスウェルは紙を取り出し何かを書き始めた。
やがて書き終わるとそれを机の端に置いた。
「それは?」
「大地を照らす13星座への召集状や。あっ、もう帰ってもええで」
それを聞くとスランは何も言わずに出て行った。
「……ちゃんと全員来るやろか」
そう言うと紙を持って外に出ていく。
「まずは獅子座からやな」
スラン・フォン・フォニム
Slan.Fone.Phonem
【性質:音(破動輝流士)/22歳/男/181㎝/68㎏】
赤髪で常にヘッドホンをしている青年。
『アース』の二大不可視輝流士の一人。(単に神出鬼没なだけ)
常に無表情で何を考えているのか分からない時がある。
そしてデルスと同じで常に冷静で、あまり感情を表に出さない。
ちなこにカイン曰く「生粋のサボリ魔」
5年前にあった「第一次闇転戦争」にも行っていて、その頃にスウェルと知り合った。
決め台詞は「奏でろ、至高の旋律を」




