第11話 歯には歯を 獣には獣を
待ち合わせ場所は時計台の前。
「今日来る人はどんな人なんですか?」
「今日のは……めんどい奴」
それだけ言うとカインは黙ってしまう。
リル達は10分ほど早く来たはずなのだが…
「兄貴ーーーッ!!」
青年がカインの方に向かって突進してくる。
「うぜぇ」
カインはそれを難なく躱す。
そのせいで青年はこけて、その勢いのまま時計台に顔面から激突した。
「毎回毎回その登場の仕方はなんとかなんねぇの?」
「すいませんッス兄貴!!」
「で、いつからいたんだ?」
「30分前からッス!!」
「早ぇよ」
青年は起き上がりダッシュで戻ってきた。
青年は白髪でヘアバンドをしている。
その青年はカインの横に立っていたリルに気付き睨む。
それに気付いたのかカインは青年の頭を叩く。
「怖がってんだろーが」
「すいませんッス!……で、この子誰ッスか?」
「こいつはリルだ。連絡いってんだろ?」
「新しく入った子ッスね!」
「リル・コークレインです。よろしくお願いします」
「俺はイグルス・ルイゼンバーン!こちらこそよろしく!!」
一通り自己紹介が終わるとカインはイグルスに質問をした。
「で、仕事は何?」
「はい、えーと――――森の獣の暴走を止める事ッス」
「なるほど、な。そりゃ、お前に打ってつけだわな」
「それってどういう…」
「それは見てからのお楽しみ」
カインは勿体ぶって教えてくれない。
そして、さっさと行こうと歩き出した。
「おーい、さっきから何考えてんの?」
「うわぁっ!」
「いや、そんな驚かなくても」
「すいません…」
カインはこれは参ったな、という顔をしている。
「兄貴!駄目じゃないッスか、女の子を困らせちゃ」
「うっせぇ。おっ、森が見えてきたじゃねぇか」
確かに見えてきた。
あれが―――――
「リース・ベットの森ッス」
そんな名前はカインもリルも初耳だったが、それはほっといて、リース・ベットの森に突入。
「ここの獣達はずっと暴れまわってんのか?」
カインはなんとなくこんな事を聞いてみた。
「いや、最近かららしいッスよ」
リルはだんだん森の薄暗さに怖くなりだした。
そんな時、ガサガサッ、と草むらが揺れる。
「きゃぁぁあああ!!」
リルは物音でより怖さが増して、何かにしがみついた。
その何かというのが―――――
「どうしたリル?怖いのか?」
カインの腕だった。
リルは急に恥ずかしくなって、カインを突き放すように離れる。
だがカインは―――――
「…怖いならさっきのままでも別に良いぞ?」
「えっ!///」
「兄貴大胆~」
本当に大胆だ。
カインはレックスとは違って、こういう話題には疎いのだろうか。
結局断れずリルはカインの腕にしがみついた。
「……………/////」
「どしたリル、顔真っ赤だぞ?」
カインは少しニヤッと笑ってそう言う。
(カインさん…絶対わざとやってる)
「いちゃついてたら来ましたよ、兄貴!」
「空気読んでほしいな」
そう言い終わると大量の狼のような獣達が前から近づいてきた。
「命知らずだな…」
そう言うとイグルスはポケットからブレスレットを取り出し腕にはめた。
すると、ブレスレットが光り出した。
「出でよ、水天の怪鳥ケプロトス!」
イグルスが叫ぶと光の中から青い大きな鳥が出てきた。
「殺すなよ、ケプロトス」
『分かりました…』
怪鳥―――ケプロトスは女性のような綺麗な声を出した。
「イグルスは契約した召喚輝獣を呼び出し戦う召喚士だ」
カインが前回に引き続き大雑把に説明をした。
「行くぜ!ケプロトス!!」
「ふぅ、ありがとよケプロトス」
『いえ、それでは主人』
ケプロトスは光に包まれ消えた。
周りには、ケプロトスが倒した獣達。
全て死んだわけではない。
「さて、後はボスを倒して終わりッス」
イグルスは倒れている獣達を踏まないように慎重に歩いて行った。
「あいつがここのボスらしいッスね」
「じゃ、ちゃっちゃと頼むよイグルス君」
イグルスが歩いていった先には、先程の獣が数段大きくなったような獣がいた。
「大丈夫でしょうか、イグルスさん」
「大丈夫だ。まだ本気出してなかったし」
先程のでも本気ではないらしい。
ちなみに先程の獣達は手も足も出ていなかった。
「出でよ、獅子の帝王デレビスク!」
再びブレスレットが光り出しその光の中から獅子が出てきた。
「行け、デレビスク」
『グルアァァ!!!』
獅子と獣が激突する。
力はほぼ互角だ。
「お楽しみはここからだぜ!」
「……ふぅ、もう十分遊んだろ?終わらせていいぞ」
『まだ始まったばかりなのに…しょうがねぇなぁ』
デレビスクは少し愚痴った後、もの凄い速さで獣に近づいた。
ちなみに言うと、戦いが始まって5分位は経っている。
「噛み砕け…」
『獅子王絶技…』
「獅子の牙で!!」
『獅子王飛驚砕牙衝!!』
デレビスクが獣に飛びついて噛み砕き、勝敗が決した。
「これで終わりッス」
とりあえず、獣の応急処置を済ませたイグルスが振り返る。
「よーし、じゃあ帰ろうぜ」
そう言ってカインとイグルスは歩き出す。
だがリルは座ったままで立つどころか動く気配がない。
「何やってんだリル、帰るぞー」
「すいません…立てないです」
どうやら腰が抜けたらしい。
今になって恐怖が甦ってきたのだろう。
「しょうがねぇなぁ」
カインはリルの前まで行って腰を下ろした。
「ほら、乗れ」
「えっ!///」
再びリルは顔を真っ赤にした。
このままだと日が暮れてしまうから、という理由でカインの背中に乗った。
カインの背中は温かく一定のリズムで揺れるので―――――
「ありゃ、寝ちゃいましたね」
「そうだな」
カイン達はまだ昼間の道を歩いて行った。
イグルス・ルイゼンバーン
Igls.Ruizenburne
【召喚士/17歳/男/176㎝/65㎏】
白髪でヘアバンドをしている青年。
召喚士で現在怪鳥『ケプロトス』と獅子王『デレビスク』が出てきている。
語尾に~ッスを付けるのが口癖で、カインの事を兄貴と呼ぶ。
決め台詞は「噛み砕け、獅子の牙で」(デレビスクの時)