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「追放された雑用係の俺、《真理の鑑定眼》で隠れた天才を集めたら最強パーティになっていた」  作者: きりざく


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第21話タイトル:拾うべき才能——欠陥の根

いつも読んでいただきありがとうございます!!


第21話は「拾うべき才能」回――敵は殴るより先に、紙で縛って折ってきます。

だから今回は、“欠陥の根”を公的に切る。しかも現場で、即。


新規スキル発現で「紙に勝つ速度」も上がり、外から見える勝ち(印が三つ並ぶ)まで一気に持っていきます。

そして最後に、嫌な“前兆”が混ざりました……。


それでは、第21話をお楽しみください!!

監察本隊の保管室は、紙の匂いが濃かった。


乾いたインク。

金具の冷たさ。

そして、印章の鈍い音だけが、やけに大きい。


「封緘番号、二十四。呼出状。欠番なし」

ヴァレルが淡々と読み、机へ置いた。


赤い滲みが残る。

シール・オブ・セキュア(封緘札(ふうけんさつ):剥がすと痕が残る)。


触れば終わり。

剥がせば終わり。

終わり方を、こちらが決める。


ギルドマスターが腕を組む。

「これで役職線は固定した。だが——現場は、まだ荒れる」


「荒れさせない」

俺は言う。

「荒れる前に、紙で先に殺す」


刺さる一文。

紙は、暴力より先に届く。


ハルトが小さく頷いた。

セリアは、視線だけで周囲の気配を拾う。

俺は保管棚の背に背を預け、息を整える。


ここは、戦場だ。

剣じゃなく、文書で殴る戦場。



呼出状の相手は、鍵庫の末端。

名は呼ぶ直前で止める。役職線だけで縛る。


会議室の扉が開き、若い女が入ってきた。

職員の見習い。

制服の袖が擦り切れている。


座る前に、視線が床を探す。

逃げ道の有無を確認する目だ。


ヴァレルが言う。

「立会い三名。監察、ギルド、治安隊。ここでの発言は記録される」


女は小さく頷く。

頷いたが、喉が鳴った。


怖いのは、俺たちじゃない。

この場の外にいる誰かだ。


「お前が触った箱は、封緘番号二十六」

俺は言った。

「鍵庫から小倉庫へ運んだ。命じられたな」

「……わ、私は……」


声が割れる。

嘘をつくには弱い。

でも、全部を吐くには怯えすぎている。


ヴァレルが紙を一枚出した。


「これは処分通知ではない。保護申請だ」

「……保護?」

「証言者保護。命令を受けて動いた末端が、上位者から切り捨てられる前に、こちらで押さえる」


女の目が揺れた。

処分されると思っていた顔だ。

それが、守られるかもしれない顔に変わる。


ここで、拾う。


「お前は実行者だ」

俺は続ける。

「だが、命令者じゃない。なら、命令線を出せ。出せば、役割が変わる」


「役割……」

「罪を隠す側か。証言する側か」


女は膝の上で手を握る。

指先に、紙の切り傷があった。

何度も封筒を扱った手だ。


セリアが気づき、そっと言う。


「……痛そう」

「平気です」

女は即答した。

平気なわけがない答えだ。


ハルトが顔をしかめる。

「末端にやらせて、失敗したら切る。よくあるやつだな」

「よくあるから、先に潰す」


俺は机の上へ封緘札を置いた。


「シール・チェッカー(封緘検査(ふうけんけんさ):封緘痕の触られた順を特定する)」


封緘札の縁に、淡い光が走る。

触った順番が、薄い線になる。


最初に触ったのは、女。

その前に触った者がいる。

封緘する直前、命令書と一緒に渡した手。


大きい手。

指の腹に、剣だこの跡。


「お前に渡したのは、男だな」

女の肩が跳ねた。

「……」

「剣を握る手。事務方じゃない」

「……はい」


ヴァレルが記録する。


「所属は?」

「知りません」

「顔は?」

「布で……」

「声は?」

女が唇を噛む。

「低い声で……『欠番を作るな』って」


部屋の空気が止まる。


ギルドマスターの眉が動いた。

ローヴァン副隊長が、壁際で腕を組み直す。


同じ言葉。

同じ狙い。


「欠番を作るな、か」

俺は呟く。

「つまり、箱を消す気じゃなかった。箱を“正しく動いたように見せる”気だった」


ヴァレルが続ける。

「受領記録を生かしたまま、責任線だけすり替える」

「そうだ」


俺は女を見る。


「お前が運んだあと、誰に渡した」

「……倉庫の裏で、別の人に」

「名前は?」

「分かりません」

「合図は?」

「紙片を……見せられました」


紙片。

嫌な単語だ。


「どんな紙片だ」

「黒い線が、何本も……文字じゃなくて、模様みたいな……」


セリアが息を呑んだ。

ハルトも黙る。


俺の視界の端が、わずかにざらついた。

昨日の刻印。

手首の薄い線。

あれと、同じ気配。


まだ見るな。

深入りするには早い。


「その紙片は、触ったか」

「触ってません。見せられただけです」

「正解だ」


女が目を上げる。

俺は短く言う。


「触っていたら、今この場で保護だけじゃ済まなかった」


部屋が冷えた。

言葉にした瞬間、禁忌の輪郭が少しだけ見える。


ヴァレルが筆を止めずに問う。

「紙片の持ち主は、何を言った」

「……『次は、席を落とす』って」

「誰の席だ」

「分かりません。ただ……」


女は声を落とした。


「“補佐はもう要らない。次は主だ”って」


ギルドマスターの顔色が変わる。

ほんの一瞬。

それだけで十分だ。


席の主。

鍵庫監督。

役職線の上。


やっと、根が見えた。


「今の発言を、保護証言として記録する」

ヴァレルが言った。

「証言者名は伏せる。番号で管理する」

「番号……」

「お前の名前を出さずに守るためだ」


女の目に、初めて水が浮いた。

泣く直前の顔。

でも、泣かない。


拾うべき才能。

欠陥の根。


この女は、強いわけじゃない。

賢いわけでもない。

だが、命令を覚えている。

合図を覚えている。

紙片の形を覚えている。


それは、証言として使える。


俺は言う。


「お前は、捨て駒じゃない」

「……え」

「記憶がある。なら、使える。使えるなら、守る」


女の肩が震えた。

一度だけ、深く息を吸う。


「……私、ずっと、言ったら終わりだと思ってました」

「言わないほうが終わる」

俺は返す。

「言える場所を作った。だから言え」


厳しい言い方だ。

でも、ここで優しくすると、言葉が逃げる。


セリアが少しだけ眉を下げる。

ハルトは口を挟まない。

分かっている顔だ。


女は、ようやく言った。


「その人、手首に……薄い線がありました」

「刻印か」

「はい。あと、左手の薬指に、銀の指輪。内側に赤い石」


ローヴァンが壁から離れた。


「それは特徴になる」

「治安隊で拾えるか」

「拾える。装飾品の線からも当たれる」


ギルドマスターが静かに言う。

「鍵庫監督の周辺に、その特徴は?」

「調べる」


ヴァレルが即答した。


その時、女が小さく続けた。


「でも……その人、こうも言ってました」

「何を」

「“鑑定持ちは、紙しか見えない”って」


部屋の空気が、変わった。


ハルトが笑った。

低く、怒った笑いだ。


「なめられてんな」

「なめられてる方がいい」

俺は答える。

「次に、近づいてくる」


セリアが俺を見る。

「罠にするんですか」

「違う」


俺は、机の上の紙を揃える。

角を合わせる。


「向こうが罠だと思って入ってくる場所を、こっちの手順にする」


ヴァレルが頷いた。

「証言保護、封緘証拠、治安隊保全、役職線照会。四つを同時に走らせる」

「逃げ道が足りなくなる」

「足りなくなれば、誰かが足す」

「足した奴を拾う」


ギルドマスターが、低く息を吐いた。


「……拾うべき才能、か」

「才能じゃない。欠陥だ」

俺は言う。

「敵の欠陥を拾う。味方の記憶を拾う。捨てられたものを、こっちの武器にする」


女が、俺を見ていた。

怯えはまだ消えていない。

だが、さっきより目が前を向いている。


「私は……何をすれば」

「思い出せ。順番で」

「順番……」

「誰に呼ばれた。どこで紙片を見た。どの道を通った。誰に渡した。言葉は何だった。匂いは。足音は。指輪は。全部だ」


女はゆっくり頷く。


「……はい」


ヴァレルが新しい紙を出す。

表題は、保護証言録。

その下に、証言者番号。


名前じゃない。

番号。

それが今は、盾になる。


「証言者番号、付与」

ヴァレルが言う。

「封緘証言、開始」


女が話し始めた。


最初は途切れ途切れ。

次に、少しずつ順番が戻る。

倉庫裏。

黒い紙片。

低い声。

銀の指輪。

赤い石。

市場裏の抜け道。

古い井戸。

腐った木箱の匂い。


匂い。

そこで、俺の鑑定眼が反応した。


「古い井戸?」

「はい。もう使われてない井戸です。そこを曲がれって」

「水の匂いは?」

「……水じゃなくて、鉄の匂いがしました」


鉄。

血じゃない。

錆びた鉄。


俺は地図を引き寄せた。

倉庫街の裏道。

古井戸。

市場裏。


線がつながる。


「ギルドの表の動線じゃない。古い搬入口の線だ」

「使えるのか?」

ローヴァンが問う。


「使えない。普通は」

俺は答える。

「だから、使った奴がいる」


ギルドマスターが机を叩きそうになり、途中で止めた。

怒りを紙に落とさないためだ。


「古い搬入口の鍵は、誰が管理している」

「鍵庫監督の管轄だ」

ヴァレルが言う。


根が、また一つ太くなる。


女は、そこで震えた。

自分の言葉が誰かを落とすと気づいた顔だ。


俺は言う。

「怖いなら、それも言え」

「……怖いです」

「記録する」

「え?」

「証言者が恐怖を感じている。理由は上位者からの報復可能性。——これも盾になる」


ヴァレルがそのまま書く。


女が、初めて泣いた。

声は出さない。

涙だけが落ちる。


セリアが温かい茶を渡した。

「飲め。睡眠不足は判断を鈍らせる」

女は両手で茶を包み、震えを落ち着かせようとする。


「名前は?」

ヴァレルが女へ尋ねる。


女が息を吸う。

「……ミーナです」


名が出た。

ここからは、呼ぶ。


ギルドマスターが言う。

「ミーナ。供述は守る。契約は切った。次は——席の主を切る」


俺は頷いた。

「次は証言だ。折れたら終わり」


ミーナが唇を開く。

「……あの箱を運んだ人……通った道、覚えてます」

「全部か」

「はい。市場裏の抜け道も。倉庫街への近道も……」

「十分だ」

俺は言う。

「それが、矢になる」


ヴァレルが淡々と台帳に書き込む音がする。

紙が積み上がる。

盾が積み上がる。


その時。

扉の向こうで、誰かが足音を止めた。


視線の奥が、ざらつく。

ほんの一瞬、世界が白く揺れる。


禁忌の前兆。

まだ小さい。

だが、確かに混ざった。


俺は結論だけ置く。

「……近い」


セリアが息を飲み、ハルトが無言で扉へ向く。

ギルドマスターは一度だけ目を細めた。


紙は、追いつくか。

それとも——間に合わないか。


俺はペン先を止めない。

止めた瞬間に、負けるからだ。

お読みいただきありがとうございました!!


欠陥は性格じゃない。契約だ。

だから、切れる。しかも“公文で”。


ミーナの才能を拾い、鎖の根を断ち、現場で物証化して言い逃れを殺す――ここまでを一気に通しました。

そして新規スキル発現。紙で勝つ速度が、確かに上がっています。


次回は「証言線」を守る回。

逃げ道を“公的に”消していきます。あの白い揺れも、いよいよ無視できません。


続きが気になった方は、ブックマークで応援していただけると励みになります!!

(作品ページ上のアルファポリスのリンクも、もしよければ軽く覗いていただけると嬉しいです)


次話もお楽しみに〜!!

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