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【完結】あざ顔女官の宮廷アロマテラピー〜鋼鉄の皇太子を香りで骨抜きにしました〜  作者: あまNatu


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原因究明

「戻ったよ」


「おかえりなさーい」


「おかえりなさいぃぃぃ! 香華無事でよかったー!」


「美琳! 凰輝様も、待っていてくださったんですね」


 抱きついてきた美琳の頭を撫でながら、凰輝に頭を下げた。


「いやいや。全然大丈夫そうでよかったよ」


 凰輝はそう言いながら、顔を白龍の方へ向けた。


「一応禁軍動かす準備はしてたんですけどね。さすがにそこまで馬鹿じゃなかったようで」


「……彼らの様子はどうだった?」


 白龍からそう聞かれた凰輝は、答えることなく片方の口端だけをあげた。

 そのニヤリとした笑みを見た白龍もまた、同じような表情をする。


(本当に禁軍動かせるのね……皇太子殿下)


 どうやら禁軍は皇帝よりも皇太子の命令を聞くことを選んだようだ。

 国を割る戦いにならずにすんでよかったと、香華は安堵のため息をこぼした。


「とにかくこれでもう大丈夫なんですよね……?」


「うん。もうなにも言ってこれないと思うよ」


 美琳からの問いに頷いた白龍は、ふう、とため息をこぼす。


「とはいえさすがに疲れたね」


「あれだけでかい守護獣出したら、そりゃ疲れるでしょうねぇ」


 香華の守護獣は蝶のため、出したからといって疲れることはない。

 しかし龍のような大きなものは、気力を使うとも聞く。

 ならば疲れても当然だと、香華は慌てて白龍の後ろに椅子を用意した。


「殿下! お座りください……!」


「大丈夫だよ。そこまでじゃ」


「いいえ! 座ってごゆっくりされてください!」


「う、うん……」


 効果の勢いに負けたのか、白龍は椅子に腰を据えてくれた。

 それならついでにと肩も揉もうとしたが、それは白龍に止められた。


「今は話してるからいいよ。気にしないで」


「ですが……」


 お役に立ちたいのだが、残念ながら今ではないらしい。

 しょぼんとした香華を見て、凰輝と美琳がこそっと話をする。


「なーんか……甘い雰囲気から違うものに変わってる気がするの俺だけ?」


「まるで忠臣のような動き……。香華……! なぜそうなるのよ――!」


 香華と白龍の甘いものを期待していた二人は、今の一連の動きでなにか違うことに気がついた。

 香華はまるで白龍を絶対の主人とするかのような動きを見せ、白龍はそれを優しく断る。

 そこに惚れた腫れたは一切ないように見えた。


「残念すぎるこの二人……!」


 なんて凰輝と美琳が話し合っているなんてつゆも思わず、香華は白龍の前にお茶を差し出した。


「ひとまずお飲み物でもいかがでしょうか?」


「ありがとう。よければみんなも飲んで」


「お! ありがとうございます!」


「わーい!」


 白龍の計らいでみんなでお茶を飲んだ。

 そこでやっと落ち着くことができ、香華は肩から力を抜く。

 これでいろいろ落ち着けたのかとホッとしていると、不意にとあることを思い出した。


「――そうだ! そうだった!」


「どうしたの……?」


 香華は慌ててお茶をテーブルに戻すと、白龍に向かって力強く告げた。


「殿下の不調の原因、わかったかもしれないんです!」


「不調の原因って……頭痛のこと?」


「その大本ということです!」


 白龍はよくわからないと小首を傾げる。


「頭痛もよくなってきてるよ? 香華のまっさーじ、のおかげで」


 マッサージがうまく言えない白龍をちょっとだけかわいいな、なんて思いながらも香華は静かに首を振った。


「ですが根本の解決になっていません。よくなってもすぐに元に戻ってしまっていますよね? なら他に原因があるはずなんです」


「…………そうなんだ?」


「そうなんです!」


 だから、と香華は一歩前に出た。


「殿下。私を信じていただけますか?」


「…………」


 この考えがあっていれば、白龍の頭痛は絶対によくなるはずだ。

 だがそのためには、白龍に信じて身を任せてもらうより他にない。

 だからこそそう願い出れば、白龍は優しく微笑んでくれた。


「信じてるよ。香華のおかげで、僕は今笑ってられるんだから」


「――ありがとうございます」


 その言葉をもらえただけで、もうじゅうぶんだ。

 あとは白龍の苦痛を、取り払ってあげるだけ。

 そしてそれができるのは、きっと香華しかいない。

 ならばと、香華は美琳へと顔を向けた。


「お湯と清潔な布を何枚か持ってきてもらえる?」


「りょうかい!」


 指示にすぐ動いた美琳を見送り、香華は白龍へと向き直る。


「それでは殿下、今からマッサージを行いたいと思います」


「うん。……だけど聞いてもいいかな?」


「はい。なんなりと」


 白龍は不思議そうな顔をしながら、香華へと質問を投げかけてきた。


「僕の不調の原因って、どこなの?」


 香華は待っていましたとばかりに口端を上げると、きっぱりと言い放った。


「殿下の不調の原因。それは――目です」


「…………目? 僕、頭が痛いんだけれど」


「そこの説明もマッサージ中にさせていただきます。では、殿下。ベッドに仰向けに寝転んでください」


「……わかった」


 ベッドに寝転んだ白龍の頭上に、香華も上がる。

 この考えがあってれば、きっと白龍を楽にできるはずだ。

 受けた恩に報いるためにも、絶対にやってみせる。


「――では、参ります」

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