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学院生活

 全寮制の朝は早い。


 この世界には目覚まし時計がないため、朝の起床は自己責任。

 魔法で起きる人も結構いる。


(目覚まし魔法。いいな)


 一応、朝の6時には学校の鐘が、そして7時になると食堂の鐘が鳴る。

 学校は離れているので鐘の音は小さいため、魔法以外で起きる学生は主に食堂の音で目を覚ます。


  ◯


 私は目を覚まして、室内の洗面所で顔を洗い、歯を磨く。それが終わると同居人のライザを起こす。


「ライザ、起きて、時間よ」

「ん、んん」

「起きなさい!」


 私はシーツをひったくる。


「……ううん、朝?」

「そう朝よ。ほら、顔を洗ってきなさい」


 ライザをベッドから出して、洗面所へと背中を押す。ライザが顔を洗っている間、私は制服に着替える。

 ライザが戻ってきて、次はライザが制服に着替える。

 私は洗面所に戻り、櫛で髪をとかす。


 部屋に戻るとライザが寝ぼけまなこでベッドに座っていた。


「寝癖がひどいわよ」


 私は自前の櫛でライザの髪をとかす。


  ◯


 学院の授業は大学のように履修した科目の授業がある教室に学生が入室して授業を受けるシステム。

 そのため初日は広い学院内をさまようこともしばしば。


 だけど1番大変なのは授業内容。

 魔法の授業なんて初めてのことだからちんぷんかんぷん。


 しかも科学と違って、規則とか曖昧なためちょっとしたことで大変なことにも。

 例えば加護の人形も少し間違えると呪いの人形になる。


 そうだ。呪いについて1つ。


 授業後の廊下で副生徒会長のキースが呪いについて面白い本が図書館にあったと私に教えてくれた。


 キースも美形でファンが多いため、声をかけられた後、女子生徒が何の会話をしたのかと詰め寄られた。まさか呪いについて話をしていたなんて言えないため、図書館についての話をしたと言った。まあ、完全に嘘というわけではない。


 それから1週間後に新しい杖が入荷したというしらせが届いた。

 杖は一応持っているが、これは杖になった妖精。それゆえ一応購入した。


『まさか乗り換える気?』


 エリーが念話で話しかけてきた。


『そういうつもりはないけどあんたが元に戻ったら杖なしになるじゃん。それとも戻る気ないの?』

『戻る気はあるわよ! そういえばキースから面白い呪いの本があったわね。確かめに行かなきゃあ!』


  ◯


 その日の深夜だ。


『ちょっと、起きなさい』


 眠っているとエリーに念話で起こされた。


『何よ』

『ライザが起きた』

『で?』

『様子が変よ』

『トイレじゃないの?』

『外に出たわ』

『夜風に当たりにでも行ったんでしょう。眠いから起こさないで』


 少し気にはなったが、眠気が勝ち、私は気にするのをやめて眠りに入った。


 そして翌朝、起きてみるともう1つのベッドにはライザがいる。

 たぶん寝付けないからちょっと風にでも当たりにいったのだろうと私は考えた。


 洗面所で顔を洗ってからライザを起こそうとしたら、ライザは目を覚ましていた。


「おはよう。今日は自分で起きれたのね」

「うん。今日はすっきり」

「いつもすっきりなら助かるわ」


 私達は身支度を整えて、朝食を食べに食堂へ向かう。


 その食堂はいつもより騒がしかった。もちろん、普段からおしゃべり騒がしいけど、今回は雰囲気が違う。皆、食べることよりも喋ることに集中しているみたい。


 私とライザは朝食を載せたトレイを持って、席に着く。


「ねえ、何かあったのかな?」

「さあ?」


 ライザはどうでもいいという風だ。


 そこで私は近くにいた顔見知りのクラスメートに尋ねた。


「ねえ、何かあったの?」

「知らない? 深夜にクレバリー寮の近くで誰かが争ったらしいのよ」


 クレバリー寮とは主人公アリエルがいる寮だ。私達の寮からはアルマンド寮を挟んで向こうにある。


「争いって……襲撃とか?」

「そうじゃないっぽい。誰かと誰かが争ったんじゃないかって」

「……深夜に」

「そうらしいよ。それで庭の東屋が1つ壊れたんだって」


 私とライザは朝食を食べ終えて部屋に戻るため廊下を歩く。


「ねえライザ、昨夜、部屋を出たよね? 何か見た?」


 そう聞くとライザは驚いたように目を開く。そして目を逸らして、前を歩く。


「ねえ」

「起きてたの?」

「え、うん。なんかゴソゴソしてたから目を覚ましたの」


 正確には妖精のエリーに教えられた。


「昨夜のことは誰にも言わないで」

「どうして?」

「面倒だから。疑われたりするの嫌だし」

「分かった。それでライザは何か見た。向こうの寮になんか行ってないから知らない」

「ちなみに何してたの?」

「……散歩」

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