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決意

 私が皇帝の御旗で驚いたのは、何も重要アイテムだからというわけでない。それがアニメオリジナルストーリーのキーアイテムだからだ。


 アニメオリジナルストーリーでは皇帝の遺児がこの皇帝の御旗を手にしてしまい、大きな問題が発生してしまう。


 龍神の復活。


 皇帝派は残党だけでは国軍や近衛軍に立ち向かえないと考え、龍神を復活させるのだ。


 そして私は龍神を再度封印するため命を──。


 まさかそのキーアイテムである皇帝の御旗が出てくるとは。


 うーん?

 アニメオリジナルストーリーはまずゲーム本編の1学期が終わってからのはず。


 そして1学期で起こるメインストーリーが終わってからでないと、アニメオリジナルストーリーは始まらないはず。


「やはり前倒しになってる?」

「どうしたの? 独り言を呟いて」


 シャワーを浴び終えたライザがバスタオルで頭を拭きつつ聞く。


「あ、ごめん。つい」

「何か悩み?」


 ライザは自身のベッドに座る。


「そんなことないよ」


 本当はあるけど嘘をついた。


「食事中もすごい顔だったよ」

「えっ? 嘘?」

「悩み事があるような顔」

「そんな顔をしてた?」


 ライザは頷いた。


「で、実際どうなの?」


 話したいがまさかアニメオリジナルストーリーが違う形できたなんて言えるわけではない。


 けど、この世界のことは外の私ではなく、この世界の住人の方が詳しいはずだし。

 一人でもんもんと考えるより、多少は打ち明けて、彼女からのアドバイスが欲しいところでもある。


 それにライザはあれこれと他人に吹聴しないタイプ。


 私は全てではないけど、話すことにした。


「順番が前倒しになったかもしれない時、どうすればいいのかなって」

「順番?」

「そう。やるべきことがある。でも、その後ですべきことが一緒にやってきたの」

「なら、同時にやる」

(同時か)

 ゲーム本編とアニメオリジナルストーリー。

「どちらかを選べとしたら?」

「難しい」

「でしょ」

「両方はダメなのか?」

「ダメではないけど、大変だし」

「とりあえず両方だな。もし難しいなら手伝うぞ」

「本当?」

 ライザは頷いた。

「それではその時はよろしくね」


  ◯


 翌日、私はひとけのない校舎裏にいた。


「話があります」


 私がそう呟くと、森の茂み側からエイミーが現れた。


「マルコシアス商会が盗まれたのはマジックアイテムだったらしいわ」

「そうですか」

「そして敵の狙いは『将軍の御旗』らしいわ」


 あまり感情を顔に表さないエイミーの眉がぴくりと動いた。


「マルコシアス商会が持っていると?」

「そうらしいですね。そしてそれを皇帝派の残党は狙っているらしいです」

「マルコシアス商会は将軍の御旗を運ぼうとしている」

「ええ。そして今までは相手の出方を知るために偽情報をばら撒いたということでしょうね」

「……分かりました」


 エイミーは一礼して、森へと戻る。


 これで将軍の御旗についてはキースの耳に入る。

 キースがどう動くかは分からないけど、皇帝派の行動に釘を刺せただろう。


 次に私はゲームストーリーを順調に攻略していかなくてはならない。


 ゲームではオリエンテーリングの後、皇帝派がシリウスをおびき寄せるためにアリエルを誘拐する──が、実はこの件は私が以前、学院内の皇帝派をキャサリン生徒会長に匿名で告発したため、発生はしないはず。そしてアニメオリジナルストーリーも。


 けれど皇帝派が動き、将軍の御旗を狙っている以上、アリエル誘拐事件も発生する可能性が高い。


「なら、やることは一つね」


  ◯


 休日、私は私服に着替えて、杖を左袖に入れる。


『ねえ、私も連れて行きなさいよ』


 エリーが念話で問いかける。


『一本で十分よ』

『念には念によ』

『仕方ないなー』


 私はもう一本のエリーを右袖に入れる。


「どこかに行くのか?」


 同居人のライザが聞いたきた。


「ちょっと買い物にね」

「もしかして例の悩み事?」


 まさかの大当たりで私は驚く。


(鋭いな。野生の勘というやつ?)


 ライザは獣人だから、本当に野生の勘というものがあるのかもしれない。


「うん。もしかして手伝ってくれる?」

「ごめん。今日は用があるの。キース副生徒会長に呼ばれた」

「キースが? 何の用で?」

「知らない」


 ライザは首を横に振る。


「そっか。ま、1人でなんとかなるから気にしないで」


 実際、アリエル誘拐事件は絶対に起こるというわけではないはず。学院内の皇帝派はつるし上げたのだから。


「時間があったら駆けつけるよ」

「もし私が遅くまで帰ってこれなかったら、警察……いや、キース副生徒会長に伝えて。ベネットこうにある倉庫B329に私が……連れ込まれたかもしれないと」

「それ危ないこと?」

「うん。キース副生徒会長ならすぐ理解してくれるはず」

「分かった」

「ただ絶対にベネット港の倉庫にいるわけではないと思う。あくまで可能性」


 ゲームストーリーでは皇帝派の拠点はベネット港の倉庫B329だった。


 今はストーリーと少し違うため、そこが拠点とはいえない。


(あれ? そういえばベネット港についてどこかで聞いたような?)


「敵は分かっているの?」

「たぶん皇帝派」

「今からキース副生徒会長に言うのは?」

「それは駄目かな。起こることは絶対ではないから。あくまで可能性。ま、私のパワーなら皇帝派の残党なんて楽勝よ。だから、遅くなったらキース副生徒会長に伝えて」

「分かった伝える」

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