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終わって

「疲れた」


 オリエンテーリングが終わり、寮室へ帰還した私はベッドに力無く横たわる。


「もうダメ。しんどかった」

「うん。僕も疲れたよ」


 ライザも私と同じくベッドに横たわる。


 ゴーレムを倒してからしばらくして教師達が異変をキャッチしてやってきた。

 そこで私達は教師達に簡単な説明をしてその後、ダンジョンを出た。


 が、外でも心身ともに疲労の中で学年主任教師や魔法省役員からあれこれと事情を詳細に詰問された。


 それとだが、あの後でマーガレットはヴェラに礼を述べて、今までの態度について謝罪した。そしてアリエルには明確にライバル宣言した。


 宣言された本人はそれが恋のライバルでなく、魔法のライバルと勘違いしているようだ。


 その後はテントを片付けて、ナスコ高原を出発して夕方に学院に帰ってきた。

 これにてオリエンテーリングは終了。


 ゲームプレイ済みでも、今回は知らぬことも発生して色々と疲れた。

 やはりこれはゲームでは存在しない私がいるからシナリオが変更されたのかな。

 でも、変更といってもゲームシナリオと大きな違いはなかった。


「ふう」


 息を吐くと、どっと疲れが現れた。


 このまま寝ようかなとおもっていたら、ドアがけたたましくノックされた。


「新聞部でーす」

「いますかー?」

「お話いいですかー?」


 新聞部のジニー先輩だけでなく、他の人もいるようだ。


 どうしようかとライザを伺うと、ライザはもう寝息を立てていた。

 私は居留守を決めこみ、目を閉じて意識を深く落とした。


  ◯


「朝の朝食中にごめんね。オリエンテーリングのことで聞きたいことあるんだけどいいかた?」


 翌朝、食堂でライザと朝食をとっていると新聞部のジニー先輩が声をかけてきた。


「食事しながらでもいいからさ」

「まあ、それなら」


 ライザは我関せずと黙々と朝食のバーガーを食べている。


「ナスコ高原のダンジョンで封印されたゴーレムを倒した時に遭遇していたのは本当?」


 もうそこまで話は伝わっているのか。

 いや昨日の夕方には訪ねてきたということは、かなり早く情報が伝わったのだろう。


「お耳が早いですね」

「そりゃあ新聞部だからね」

「あっ!? ちょっとずるい!」


 大きな声が聞こえた。

 声の主は女子生徒でジニー先輩を非難している。


「早い者勝ちでしょ?」


 ジニー先輩はしたり顔で言う。


「ルール違反よ。食事中は活動しないでしょ?」


 そうなの? 私はジニー先輩に視線で聞くとジニー先輩は肩を竦めた。


「私も!」


 するとジニー先輩の右隣に女子生徒が座り、メモとペンを取り出す。


「それなら私も!」


 さらに様子見していた別の女子生徒が現れて、ジニー先輩の左隣に座る。


「もしかしてお二人は新聞部の方で?」

「私は学院広報部」

「魔法情報誌『パルム』よ」

「色々あるんですね」

「で、オリエンテーリングについて質問なんだけど」


 バーガーを食べ終えたライザは無関係の人間を装って、その場を去る。


(おい! 置いてくな!)


「敵の強さは? ゴーレムだったから硬かった?」、「戦ったんでしょ? 怖かった? どんな想いで戦ったの?」、「シリウスがトドメを刺したらしいけど感想は?」


 彼女達は矢継ぎ早に質問を繰り出す。


「ちょっと落ち着いてください」


  ◯


「……ということがあったの」

「そっちも大変だったのね」


 翌日、魔法薬の授業前の教室で昨日の朝食時のことをアリエルとヴェラに話した。


「そっちもということはアリエルも」

「私達は一昨日の夕方にね。クタクタなのに新聞部らが押しかけてきて大変だったわ」

「それ私達のとこにも来たわ。でも居留守を使って無視した」

「こっちは部屋に入ろうとしたところで掴まってね」

「それは災難だね」

「でも不思議。どうして新聞部はオリエンテーリングのことを当日に知ったんだろう?」

「確かに」

「それは魔法省が動いたからよ」


 と、ヴェラが答えた。


「魔法省?」

「ええ。オリエンテーリングのダンジョン探索は魔法省職員監視のもとに行われるからね。何かあれば魔法省に連絡がいくの。魔法省は学院卒業生が多いからね」


 なるほど魔法省職員こと卒業生経由で新聞部達はダンジョン探索のことを知ったのか。


「ん〜。けどたとえ職員が卒業生でも仕事のことをペラペラ喋るかしら? この前、確か皇帝派と繋がりのある教師や生徒達が粛清されたでしょ?」


 アリエルが小首を傾げながら疑問を述べる。


「巨大ゴーレムの封印のことじゃないかしら? その件を2年生に去年はどうだったのかと確認をして、それで2年生達は異変を感じ取ったんじゃないかしら? ここには貴族の子もいるし、親を使って魔法省を突っついたとか。もしくは魔法省で働く親兄弟に聞いたとかかな?」

「なるほど」


 アリエル達は新聞部にどんなことを聞かれたのかなと尋ねようとしたところで魔法薬の教師がやってきた。


 そして少し遅れてマーガレット達が入室してきた。


 魔法薬の先生は遅刻にうるさいから、これは怒鳴られるなと思っていたら、「……お前達か。席に座れ」と、それだけだった。


 なんで?

 マーガレットが貴族のお嬢様だから?


 いや。この教師は貴族だので忖度はしない。

 なら……一体。


 マーガレット達は少し顔に疲れがあった。

 一昨日の疲労?


  ◯


「あれはたぶん供述じゃないかしら?」


 授業後、私はマーガレット達の遅刻の件と教師の対応について疑問を述べるとヴェラが答えた。


「魔法省からゴーレムの封印について詳しく尋ねられたのよ。戦った私達とは違い、質疑応答だけでなく供述調書とかあったんじゃない。学校に帰ってきたのも遅かったはずよ」

「昨日帰ってきたらしいわよ」

「どうしてアリエルが知ってるの?」

「シリウス達もマーガレット達と同じく昨日帰ってきたらしいの」

「シリウスも?」

「戦ったことと、トドメを刺したからだって言ってたわ」

「言ってた……それってシリウスと会ったの?」

「えっ、あの、昨日ね。お礼を言おうとね」


 アリエルは慌てて言う。


「それだけ〜」


 私は怪しいぞみたいな言い方をしてみる。


「もう! それだけよ! 本当よ!」

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