01 訳ありの彼
わたし・水無月茜には幼馴染がいます。
無口で素っ気ないけど、とっても優しい人。
学校ではイケメンって騒がれているみたい。
本人は嫌がっているけどね。
彼は一人暮らしをしています。
これは、茜が部屋で宿題をやっていたときのこと。
ピーンポーン
「はーい」
茜はチャイムが鳴ったので、ドアを開けた。
平日の夕方頃にお客とは、珍しいことだ。
ドアを開けるとそこには、
「……茜」
「え?凪……君?」
さっき話していた、幼馴染がいた。
茜は動揺しながらも、彼を招き入れた。
今思うと、彼、鳴海凪との生活はこれがはじまりだったのかもしれない。
ーーーーー
「「………」」
茜と凪との間に、少しの沈黙が流れる。
(……凪君がわたしの家に来るなんて珍しい……何かあったのかな。……それにしても空気が重い!なにこれ付き合いたてのカップル!?)
そう考えていると、凪が話しだした。
「……あのさ。茜の家に……居候させてくれないか」
「へっ?」
突然の言葉に驚く茜。
それもそのはず。
幼馴染の、しかも男に急に居候させてくれ、なんて言われたらどうだろう。
答えは一つ、驚く。
「俺さ、今日家燃えちまって。親父が家を用意してくれるらしいけど、相当かかるらしい。しかもカードとかも燃えて……財布とかスマホはあるけど。……今まさしく一文無し状態に近いから」
淡々と話す凪に茜はなぜそんなに冷静でいられるのか呆れた。
そして同時に凪に寄り添いたくなった。
「まぁ、急に言われても無理だよな。ごめん。こんな事言って……」
「いいよ」
茜の言葉に、凪は驚きを隠せない。
「凪君、困ってるんでしょ?だったら少しでもわたしにできることさせて」
茜の真剣ぶりに、凪は少し頬を赤らめた。
「ん?凪君、熱でもある?顔赤いけど……」
そう言って凪のおでこに手を当てようとする。
すると凪は茜の手を振り払い、言った。
「だ、大丈夫だから……」
そう言った凪の顔は、耳まで真っ赤になっていた。
「そう……ならいいけど……」
その言葉で一段落したが、茜はまだ心配である。
とりあえず、茜はお茶とお菓子を取りに行く。
「……鈍感だよなほんと」
ぼそっと凪がつぶやいた。
それに茜は気づかない。
そして凪はくすっと笑う。
「……全然気づいてない」
二人でいても、普通の生活なんだろうな。
このときの茜はそう思っていた――。