第84話 クラスメートの事情
着々と新入生歓迎パーティーに向け、ドレススーツレンタルサービスの準備が整ってきた。一人一人の意見を聞いて、ドレス髪型アクセサリーを決めていった。はじめは希望していなかった人たちがレンタルしたいという人も出てきた。その人たちの対応もこなした。
自分のお母さまやお祖母さまの思い出のドレスのお直しもした。素材・型を活かしつつ装飾などを追加して気にいったドレスに仕上げた。
男性陣は、お兄さま達生徒会メンバーにお手伝いを頼んだ。王族のカイデール殿下には今回ご遠慮いただいた。平民の人たちが萎縮してしまう。特に新入生なんて、王族は雲の上の人だろうと思い、申し訳なかったがご遠慮いただいた。しかしなぜかカイデール殿下はすごくやる気があり、変装と阻害魔法をかけてまで手伝いをしていた。最初と最終判断は私とテッシーなので、特に着飾り過ぎになることはない。みんな楽しそうに選んで試着していたのでよかった。
パーティが近づいてきたある日のことだった。
「ごきげんよう。初めてお話をさせていただきます。シャロン ドット アンドリューと申します。こちらは、ロッティ カプス ホープマン、モニカ ケッテル クラットンです。モンテスキュー侯爵令嬢様、少しお話を聞いていただいてよろしいでしょうか?」
同じクラスだか初めて喋る侯爵令嬢と子爵令嬢と男爵令嬢だったかしら?
シャロン ドット アンドリュー侯爵令嬢
ロッティ カプス ホープマン子爵令嬢
モニカ ケッテル クラットン男爵令嬢
「ごきげんよう、アンドリュー侯爵令嬢様、ホープマン子爵令嬢様、クラットン男爵令嬢様、どうかなされましたでしょうか?」
完璧な令嬢言葉、どうよ?とマリアナとルーの方を見たが、首を振られた。
「あ,あのモンテスキュー侯爵令嬢様?折り入って相談がございますの。レンタルサービスを私どもにも提供していただけないでしょうか?料金も貴族設定と平民設定があると聞いているのですが、お金を工面することが難しくできれば平民設定の方でなんとかできないでしょうか?お願いいたします」
どういうこと?うちの昔のような貧乏というわけではないわよね。話を聞くしかないわよね。
「ここでは話しづらいと思いますので、どこか別室で聞きますわ。今日授業が終わりましたら、どこか集まってお話しいたしましょう」
「それでしたら、私、ロッティ カプス ホープマンと申します。私とこちらにいるモニカは寮に入っております。部屋は小さく、綺麗とは言えないですが、そこで話すことができます。いかがでしょうか?」
寮があるのね?うちは郊外にタウンハウスがあるけど、お二人はタウンハウスがなく、通えないから寮なのかしら?貴族社会がいまいちわからない。
「わかりました。お二人の寮にお邪魔させていただきます」
「私達も行ってもよろしいかしら?アイリだけでは心配だから、よろしくて?」
なぬ?私だけでは心配とは?ルーとマリアナがくるの?
「あ、あの王女殿下様がいらっしゃるような部屋ではありません。本当に小さくて綺麗とは言えないのです」
「大丈夫ですよ。この学園にいる時は皆平等です。一緒に行ってもいいですか?」
これはハイとしか言えない雰囲気だよ、ルー。
「は、はい。本当に小さい部屋ですが、すみません」
授業が終わり、ロッティさんとモニカさんの寮の部屋へお邪魔した。確かに、10畳を2人で使っているかんじだ。机、本棚、ベッド、クローゼットがあり、隣に簡易キッチンとバス、トイレがある。簡易キッチンがあれば自分で作れるじゃない。
そこで話を聞くと、3人とも共通は家族に冷遇されていること。
侯爵令嬢のシャロン様は前妻の子だけど、後妻が愛人だった人で同じ年の子供までいたというやつだ。婚約者だった人は同い年のその妹と結婚することになったらしい。最悪だな、その家族と婚約者。妹はCクラス。クラスが違っただけでもよかった。妹は新しいドレスを買ってもらっている。自分には用意されていなかった。あなたはレンタルサービスがお似合いよ。私はすでに新しいドレスを婚約者に買ってもらったから、レンタルサービスなんて人が着たものよ、絶対いやよ、それに型が古いだろうし、そんなの使う人は平民ぐらいよ、でも、あなたにはお似合い。借りればと言われたらしい。
子爵令嬢のロッティ様は兄夫婦の子だったが、両親が亡くなり、叔父である弟が爵位を継いでそこに居候、肩身が狭い。
男爵令嬢のモニカは前のうちと一緒の貧乏ということだ。通えないので、どうにか寮に住んでいるということだった。
3人とも学園を卒業したら、働き口を探さなければいけない、なければ高齢の人のところに嫁に行くしかない。その方が家に支度金が入るということだった。本人達は勉強を頑張り、なんとか働き口を探したいらしい。
「モンテスキュー侯爵令嬢様、家からは新しいドレスを用意することはありません。新入生歓迎パーティのドレスを平民価格の方で貸していただきたいのですが、無理でしょうか?」
切実な3人の想い。実家からは援助が求められない。この寮も平民が使っている方の寮で価格は安い。男性の方は、冒険者ギルドに登録して、学校が休みの日はギルドの依頼をこなし稼いでいる子達もいる。この学園に通う女性で冒険者登録をする人は少ない。騎士を目指す女性は冒険者登録している人がいるらしい。しかし、女性が稼ぐことは難しい世の中だ。
お兄さまの友達のリンド、パーシバルのように優秀だったり、フランのように料理など突出した特技があればいいのだけれども、何もなければ、雇うことはできない。冷たいようだがそこはシビアにならないと、商会の利益にならない。
「事情はわかりました。レンタスサービスは誰でも受けられるサービスなので大丈夫ですよ。私のことは今後アイリと呼んでください。モンテスキュー侯爵令嬢様というのはなんだか長たらしいので、アイリでいいですよ。それでは時間がある時にドレスを試着しましょう」
「「「ありがとうございます。アイリ様」」」
家の事情で嫌な思いをしている人たちがいる。こればかりは口出しはできない。でも、どうにか道を作ってあげたいとも思うけど、まだこの子達がどういう人だかわからない。それは追々付き合っていけばわかるでしょう。まだ学園は始まったばかりなのだから。これからよ。
数日後、レンタルドレスを試着してもらい、シャロンの腹違いの妹が用意したドレスより見栄えのする中古と思えないほどのドレスを作り上げた。ふふふっ、バカにするなよ、シャロンの腹違いの妹と元婚約者よ。ドレスに飲み物をわざとかけられないように、撥水の付与を施した。
「アイリ様、ありがとうございます。あの子のドレスは見ているので、それよりもすごくデザインが良いドレスです。何をされても、躱すことができるドレスなんてすごいですね」
シャロン様の妹は自分がシャロン様より上と見られないと機嫌が悪くなりそうだし、何されるかわからないから徹底的に対策をしないとね。
「意地悪されることを想定して色々付与したので大丈夫だと思うけど、私たちと一緒にいた方がいいわよ。こっちにはルルーシェ様という大物がいるから、盾にしてしまいましょう」
「アイちゃん、盾って酷くない?」
「ルー、ここで王女という肩書を使わないでいつ使うの!」
「今でしょ??と言えばいいのぉ?アイちゃん?」
漫才になってしまった。
「あ、あの王女殿下様を盾にとかできません。申し訳ございません」
「なるべく一緒にいましょう。楽しいじゃない?その妹と家族や婚約者がどう反応するか」
ルーの顔が悪役顔になっているよ。
「ルー、悪役っぽい」
「えー、やだっ。ここだけの話にしてね」
「ルルーシェ王女殿下様、アイリ様、マリアナ様ありがとうございます。本当にありがとうございます」
今までシャロン様は1人で頑張ってきたのよね。盾ぐらいになりますよ。
さぁ、もうすぐ新入生歓迎パーティ。楽しみだなぁ。




