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第9話 厨房にて

私は自室に戻り、ベットにダイブした。ああ、みんなに受け入れられたのかな。それとも、本当のアイリのことで悲しがっていないかな。

マイナスなことを考えないようにしよう。アイリとしてこれから生きていくんだから、よし、切り替え切り替え。


少しウトウトとした後、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。返事をし、ハンナがお迎えに来た。


「アイリお嬢さま、厨房の準備ご整いました。ご案内します」


「ありがとう、ハンナ。料理長や厨房の人たち、忙しい時なのに迷惑だったよね」


「大丈夫ですよ。アイリお嬢さま。こう言ってはいけないのですが、以前のアイリお嬢さまは我儘ばかりでしたが、今のお嬢さまは、優しさと大人の優雅さがあります。」


「中身41歳だからね。あはは」


「大丈夫です。見た目15歳ですから」


「「あはははっ」」


「ハンナはいくつ?って、女性に歳を聞いたら申し訳ないかしら」


「私は、38ですよ。アイリお嬢さまより歳下です」


「オーマイガー。歳下なの。もしかして、この家で、トムズの次に年配じゃにいの、私」


「何人か年上はいますよ。料理長は41ですので、アイリお嬢さまと同い年ですよ」


「そうなの。楽しみだわ」

笑いながら、厨房へと向かった。


 厨房に入った。

 料理人たちにギロリと見られた。そりゃそうだよね。侯爵令嬢が厨房に何しに来た、という思いだろう。それも今まで、わがままで、傲慢なお嬢さまが文句を言いに来たのかという感じなのだろう。


「アイリ様、本日は厨房にどういったご用件でしょうか」


「料理長、お忙しいところ、お手を煩わして申し訳ございません。厨房の隅の方で良いので、場所を貸して欲しいの」


「あ、え、いえ、隅の方ですか?」


「ちょっと、やりたいことがあって、りんご、いえ、アップルという赤い果物はありますか」


「はい、執事殿にアップルと蓋付の瓶を用意するように言われていますので、こちらに用意してあります」


「ありがとうございます。こちらの隅っこの方を使用して良いですか」


「いえ、こちらの広い方を使ってください」


「いえいえ、隅っこでいいです」


「いえいえいえ、広い方をお使いください」


「アイリお嬢さま、先に進まないので、広い方を使って良いというのですから、こちらを使いましょう」


「はい、ハンナ。こちらを使わせていただきますね。それでは、早速、瓶を浄化します。水を入れます。

アップルを切って、入れます。はい終わりです」


「はあー、こんなことのために、厨房を使ったのか?」


「これを2週間ぐらい、様子を見てから使用するのよ」


「何ができるんですか」

料理長のダンがブスッとした声で聞いてきた。


「2週間後のお楽しみです。さて、次。今日の献立は何かしら」


「うし肉の塩焼きですが」


「その、お肉を見せてください。これが今日のお肉ですか?うし肉ですか?本当は、捌いたら、血抜きをして欲しいのですが、今することは、オニオンとアップルをすりおろします。それをお肉に漬け込みます。もしくは,水につけておきます。とりあえず、二つの方法で試してみて、血抜き方法でどちらがいいか検証しましょう。今度はサラダのドレッシングね。定番のマヨネーズ作りね。まず卵を浄化して、お酢、卵、油、塩少々を混ぜるだけです。疲れますが。フレンチドレッシング、ポテトサラダも作りましょう。あとはスープは、オニオンの皮やにんじんの皮などのクズ野菜で、ブイオンを作りましょう。デザートはプリンかな」


「アイリ様、知らない単語ばかり出ていましたが、何をしましょうか?」


「そうね、まずマヨネーズを作りましょう。その間にジャガイモを茹でましょう。きゅうりは輪切りにして少しの塩で、塩漬けしておいて。ハムあるかしら。細切りにしてください。まず、必ず卵は浄化してください。浄化しないとお腹を壊します。これは必ず行ってください。油、浄化した卵、塩少々、お酒、明日がなければレモン。それを混ぜてクリーム状にするだけです。疲れますが。」


「わかりました。卵を浄化して、材料を入れ、クリーム状に混ぜるだけですね。おい、ナイル、これを混ぜてくれ。」


「聖なる精霊よ、我が手に清き光をお示しください。≪ピュリフィケーション≫

卵を浄化しました。あとは材料をクリーム状に混ぜるのですね」

ナイルという見習いは生活魔法の浄化ができるのか。浄化はピュリティケーションというのか。ピュアか清いということね。なるほど。あとは混ぜるだけだか、腕が痛くなるのよ。お父さまは魔道具開発だから、ハンドミキサーを使ってもらおうかしら。ハンドミキサーがあればシフォンケーキも作れるわ。

おー、だいぶクリーム状になった。鑑定しても、状態良好と出た。


「もう、そのぐらいでいいわ。試食してみましょう。きゅうりあるかしら。先ほど茹でたジャガイモでもいいわ。」


「アイリ様、ジャガイモというのはジャガのことですか?家畜の餌ですが?それを食べるのですか?」


「えっ?家畜の餌なの?もったいない、すごく美味しいのよ。ジャガイモ、あ、いえ、ジャガは色々な料理ができる優れものなのです。ごめんなさい、今すぐ持ってきてこれるかしら?」


「かしこまりました。あい、取ってこれるか」


「は、はい。すぐに」



みんなに、きゅうりを小さく切って、マヨネーズをつけ試食した。


「「「「う、うまい」」」」


「はぁ、はぁ、じ、ジャガを持ってまいりました」


「ありがとう、あなたも、きゅうりとマヨネーズ食べてみて」


「ジャガイモだわ。では、皮を剥きます。茹でるために少し小さくして切ります。水から茹でていきます。茹で上がりまでこれはこのままにしておきましょう」


「次、フレンチドレッシング。サラダ油か、オリーブオイル、お酒、レモン汁、塩、コショウ、砂糖を混ぜるだけ。酸っぱい感じだけど美味しいわよ。しょうゆという茶色いのような黒いような液体ないかしら」


「茶色い?黒い液体?セイユという物ですか?使い方がわからず放置しているものはあります」


「なんですって。放置しているものがあるなら出してちょうだい。」


「わかりました。地下の保暗室に使わずに置いてありますので、取りに行かせます」


一体どんなものがあるのかしら。楽しみだわ。


「それでは、茹でたジャガをマッシュして、あー、潰して、少し冷まします。生活魔法の冷却を使えば時短になるかしら。≪冷却≫マヨネーズ、きゅうり、ハムを混ぜる。私はここにゆで卵を入れたいけど、今日はシンプルに行きましょう。また、今度作る時にゆで卵を入れてみましょう。では、みなさん試食しましょう」


「「「「うまい!うまいぞ」」」」


「次は、スープ作りです。クズの野菜を煮込みます。玉ねぎの皮と芯、にんじんの皮、キャベツの芯や外側の葉っぱ、きのこ類の軸や石づきあるかしら。それらを煮込みます。煮込んでいる間にサラダを作りましょう。あとはお肉ね。だいぶ血が出ているわね。この血抜きをしないと臭みが出るのよ。そして、玉ねぎやアップルの成分で肉を柔らかくするのよ。玉ねぎとアップルはソースに使うので、捨てないでね。一枚焼いてみましょう。

はじめ、強火で表面を焼き、カリッとしたら、オーブンで、中まで火を通す。もしくは火を中火に、蓋をして蒸し焼きにする。焦げないように火加減は重要よ。あとは塩胡椒。そしてソースは先ほどの玉ねぎとアップルに赤ワイン、ブイオン、そしてセイユ。これよこれ。しょうゆよ。グレービーソースもどきが作れるかしら。いい匂い。お肉を切り分けてちょうだい。このソースをかけてみるから。はい、試食どうぞー」


「「「「柔らかい、うまい、うまいぞ」」」」


そうでしょ、そうでしょ。うまくいったみたいね。


「アイリ様、私は料理長のダンと申します。大変不躾な態度をとってしまい申し訳ございませんでした。今日作った料理全て美味しいです。今後も教えてください。お願いいたします」


料理長や他の料理人たちに頭を下げられてしまった。


「ダン料理長。素人が作る料理なので、大した料理ではないのよ。でも、みんなで美味しいものを追求したいわ。私からもよろしくお願いしますね」


「「「「はい」」」」


「さて、ブイオンを使ってスープ作りと、デザート作りましょう」


「「「「はい」」」」


「スープはシンプルに塩胡椒でこのまま出してみるか、野菜とベーコンを入れるスープがあるわ。このままのスープを堪能してもらおうかしらね。塩胡椒で味を整わせましょう。デザートはプリンだけど。また、卵のデザートになってしまうけど、いいかな。

卵は必ず浄化。卵、牛乳、砂糖を混ぜる。あと、砂糖をある程度焦がし、カラメルにする。カラメルを器に入れ、固まったら、卵を混ぜたものを入れる。そしてオーブンへ入れる。今日の夕ご飯はこんな感じ。どうかしら」


「アイリ様、全ておいしそうです。すごいです。料理がこんなにおいしくできるなんて、料理人として失格です」


「そんなことないわ、ただ調理方法を知らなかっただけよ。料理はこれからよ。いっぱい美味しいものを作らないと。あっ、でも太りすぎないように、気をつけてね。

さて、今度はプリンの試食ね。冷やした方が私は好きだけど、出来立て食べますか。熱いので気をつけて。」


皿に移し替えて、カラメルソースがとろっといい具合に流れて、プルプルしている。

実食。美味しい。


「「「「美味しい」」」」


今日の夕食が楽しみだ。って、私痩せないといけないから、少量にしてもらおう。

 

料理長、私の分は少量でお願いします。










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