第70話 領地に行く前に
領地に行く準備が着々と進んでいる。もちろん学園入学準備は終わっている。
学力テストみたいなものを受け、クラスが決まるらしい。テストは、こういってはなんだが簡単だった。
私の場合入学してからが問題なのだと思う。淑女コースを受けないと言えども、基本貴族淑女学というものがある。これは貴族は難なくこなせるが平民は難しいらしい。私も難しいかも知れない。
そして、ダンスよ、ダンス。そもそもダンスなんて学科単位としなくていいと思うのに、何故あるの?壊滅的ダンスの素質がないことがわかった私には辛い学科だ。
学力テスト、失敗したわね。考えなしにテスト簡単なんて解いていたが、3分の2ぐらいを解いていればよかったかも知れない。魔法学とダンスと貴族淑女学、他にもできないものあるかしら。あー気が重いよ。
終わってしまったものはしょうがない。領地よ、領地。るんるん気分で過ごしていたが、お母さまからとんでもないことを言われた。
「アイリちゃん、あなた、スタンフォート公爵様に、領地に戻ることを伝えたの?」
「???」
なぜ伝えなくてはいけないの?
「その、何故言わなければいけないの?みたいな顔やめなさい。あなたはスタンフォート公爵様の番なのだから、離れる場合言っておかないと心配するでしょ。それに周りからの情報で領地に今いる、知らないのですか?聞いていないのですか?なんて言われたら、傷つくわよ。今すぐ手紙を書きなさい」
「あの、お母さま。こういう時、どのようにお手紙を書いたらよろしいのでしょうか?手紙の書き方がわかりません」
「えっ!アイリちゃん、あなた、レティシア様やマリアナ様、ルルーシェ様に今まで書きていたではないの?」
「書きましたよ。何月何日にお茶会開きます。来てねと書きました。ルー、いえ、ルルーシェ様には、遊びに来てね。下着だけ持参すれば大丈夫だから、日程は追って連絡するね、と書きました。何か問題がありますか?他の人に、手紙を書いたことがないので、余所行きの定型文は書いたことがないです、よ?」
だんだん、お母さまの顔が般若のような顔になっていった。まずい、何かまずいことしたかしら?あれ、あの書き方はダメなの?友達だからいいのではないの?
「アイリちゃん、今,言ったようなことをルルーシェ様やレティシア様、マリアナ様に書いたのかしら?言った言葉そのままそっくり、手紙に書いたのかしら?ね」
「は、はい、手紙ではなくて、カードのようなもので書いて送りました。だから、私、実質手紙を書いたことがないです」
「ひゃぁぁぁ、なんてこと、なんてこと。さっき言ったようなことをそのまま書いたですって」
まずい、本当にまずい。お母さまが発狂している。
「あぁぁぁ。なんていうことなの!教えてないわね。淑女教育の所作や嗜み,ダンスは教えたわね。あぁ、手紙の書き方ね。そうね、領地に行ったら、手紙の書き方を教えましょう。そうすれば、スタンフォート公爵様に、毎日でも手紙が書けるわね。うふふ、スタンフォート公爵様も毎日手紙が届けばお喜びになるでしょうね。いい練習になるわね」
はい??お母さまなんていうことを言っているの。毎日手紙って、そんなのしないわよ。
「お母さま、とりあえず、今回の手紙の書き方を教えてください」
「では、アイリちゃんの今のレベルを知りたいから、思うままに書いてみてちょうだい」
「えっ?思いのまま書く?それをお母さまに見せるのですか?」
「そうよ、あなたのレベルがわかるではないの。では、書いて来なさい」
あの、母上さま、お顔が怖いです。
部屋に戻り机に向かった。
「ねぇ、ミリー、お手紙を書きたいのだけど、紙と封筒あるかしら?」
「はい、手紙を書く用紙はこちらでございます」
出された紙は、真っ白なただの紙だった。これで書くの?
「ねえ、ミリー。これでどうやって書くの?」
「え?字を書くだけですが?」
線もなく、ただの白紙よ。字が曲がるじゃないの!それに白い紙だけって、可愛くないじゃないの。みんなよくこれで字を書くわね。平衡感覚が優れているのかしら。絶対曲がっていくわよ。
「だって、ミリー、書いていくと字が曲がっていくじゃないの?みんなどうしているの?これ?」
「みんな曲がって書いております。字が綺麗な方は、本当に真っ直ぐ書いています。だから、書くことが専門の代行者がいます。招待状などはそこに依頼していることがほとんどです」
代行がいるの?自分が書いた手紙を代行に読まれるのは恥ずかしいよ。
うーん、そうよね,線を書けばいいのよ。昔、線だけが書かれた紙がついていて、後ろに探し絵のような感じですれば良いのか。でも、白いただの紙はつまらないわね。それに書くことも少ないから絵を入れればそこに目が行き、文章が短くても気にならないのではないか。よーし、この白い紙を絵付き便箋にしてしまおう。やっぱり初めは花よね。
それから文章ね。昔取った杵柄。伊達に20年社会人をしていないわよ。でも怪しい尊敬語、謙譲語だったわね。
ジェイシス・フォーダム・スタンフォート公爵様
平素は格別のご高配を賜り心より感謝申し上げます。
この度、領地に戻ることとなり、しばらくお会いできないことをお詫び申し上げます。帰りましたら、ご連絡いたします。よろしくお願いいたします。
アイリ グランデ モンテスキュー
バッチリじゃない。帰りましたら連絡しますなんて、言葉いいわね。毎日手紙なんて書けないもの。
なかなかのデキ。絵に目が行くわよね。
いざ、お母さまのところへ行きましょう。
「お母さま、手紙書けました。確認をお願いします」
「あら、早いわね。何、この手紙!絵を描いたの?この線いいわね。このお花いいわね。きれいな便箋ね」
そうでしょ、そうでしょ。
「白紙でつまらなかったので絵を描いてみました」
よしよし、絵で誤魔化せた。
「アイリちゃん、絵は凄くいいわ。でも、文章に全く心がこもっていないわよ。この仕事のような書き方は何かしら?」
「私,それ以上書くことできないです。これがいっぱいいっぱいです」
「アレクセイはいるかしら、呼んできてちょうだい」
「えっ、お兄さまにこの手紙見せるのですか?恥ずかしいですよ」
「違いますよ。この用紙を売り出せないか、聞くだけですよ」
お母さま、お母さままで商人になってしまったわ。
でも、お兄さまにこの手紙を見せるの?。私の手紙の内容バレバレではないの。恥ずかしいわよ。




