第65話 番は疲れるのか?
王城ではルルーシェ王女殿下、ルーが待っていた。
馬車から降りる時は、スタンフォート公爵様のエスコートです。
「ルルーシェ、終わりましたら、私の執務室へ連絡をください。また、送っていきますので必ず連絡をください。わかりましたね」
「は、はいっ、ジェイシスお兄さま」
「それでは、アイリ嬢、お迎えに上がりますので楽しんでください。失礼致します」
「お迎えありがとうございました。ジェ、ジェイシス様」
手に口付けをし、にこりとした微笑みで、退出して行った。無理だ、この西洋式挨拶は日本人には慣れないよー。ヨーロッパ式挨拶、頬に口付け、チークキスではないだけましかも、あれをされたら卒倒するわ。
「ルー、私,西洋式挨拶は慣れないわ」
「ジェイシスお兄さま、別人のように甘い雰囲気ね。これが番効果、絶大ね」
「ルー、他人事のように言わないで!私どうしたらいい。本当に甘いのよ。二次元的イケメンに迫られているのよ。どうして、公爵様が私をお迎えにきたのよ?」
「アイちゃんが遊びに来ることをお母さまに伝えて、こちらから馬車を出せば,スムーズに王城に入れると思って、手配をどうするか聞いたのよ。お母さまに任せたら、あーなってしまったの。ジェイシスお兄さまは、短い間でもいいから会いたい、それならお迎えに行かせましょうとなったの。大人の事情よ。ごめんね、アイちゃん。アイちゃんの思惑とは違う方向へ行っているわよね」
「私の思惑?わかる?」
やんわりお断りの言葉を発していたのに気づかないからどうしようと思っていたのよ。
「わかるよ。なんとなく遠回しに無理のない範囲でとかお忙しいでしょうから、なんて言っていたじゃないの。お断りを遠回しに言っているけど、この世界の人にその言い回しがわかるかなぁと思っていたのよ。ジェイシスお兄さまなんて、自分のことを気遣ってくれている思ったのではないの?アイちゃんの心の声が聞こえたよ。違う、そうじゃなーい、と言っていそうな顔だったわよ」
「よくわかったわね。その通りよ。どうしてこうなったのかしらね、私が番なんて。断罪からどうして番なの?よくわからないわ」
「お父さまの番であるお母さまに対する愛情表現は、それはそれは熱烈、今もよ。お兄さまもカイも番がいるからみんなでそんな感じよ。私が一番居た堪れないのよ」
「えー、カイデール殿下もレティにそんな感じなの?そんな風な態度見たことないわよ」
「学園の友人たちの前で、そんなことしないのではないの。デレデレした顔でレティシア様に甘えているのだから」
えっ、あのカイデール殿下が、デレデレして甘えている?想像できないのですがー。
「ごめん、ルー。私、次カイデール殿下に会ったらニヤニヤしてしまうわよ。そんな一面があるなんて思わなかったわ。レティに聞いてみようかな」
「私から聞いたなんて言わないでね。カイに怒られる、というかアイちゃんの方がみんなにニヤニヤされるわよ。ジェイシスお兄さまの番様だから」
ひゃー、番様と言わないでー。心で発狂するしかない。
「ところで、ルー、あそこで転生者宣言びっくりしたわよ。あの後、家族と話し合った?大丈夫だった?」
「あの時はアイちゃんが強制力で断罪されてしまうのではないかとハラハラしてしまったのよ。カイが一緒に行ってくれることになったのは心強かったの。そして、アイちゃんが転生者と伝えたのなら、私も伝えてみんなの驚きを折半すればいいかなと思ったのよ。小説では断罪仲間だったけど、今は転生者仲間、同じ道を辿ろうと思ったのよ」
「ルー、ありがとう。ルーの勇気に感謝するわ」
お互い抱きしめ合っていた。そこにドアをノックする音が聞こえた。誰か来る?ルーちゃんは首を振った。誰?首をかしげるルーちゃん。
王妃様でした。私たちは立ち上がった。
私はカーテシーし、口上を申し上げようとしたがしなくて良いと言われてしまった。
「ごめんなさいね。急に訪れてしまって。今はプライベートの時、そういう挨拶は必要ないわ。普通にしてちょうだい。それに謝りにきたのよ。貴族新聞に載ってしまったことや、いきなりジェイシスを迎えに行かせたり、ごめんなさい、アイリちゃん」
「いえ、確かに、公爵様が迎えにいらっしゃった時にはびっくりしました。貴族新聞もびっくりしましたが、公爵様に説明されて、少しは納得しました」
「そう、本当に龍人の血が流れる男たちは、番とわかると、こうも一途にというか一直線というか性急に行動を起こすのよ。まぁ、アイリちゃんも、ジェイシスをやんわりとかわす術を身につけなさい。いちいち全て対応してあると疲れるわよ」
王妃様、えっ、疲れるのですか。言葉の聞き違いかな。
「お母さま、疲れるのですか?」
「子供のように甘えてきたり、自分のものだとアピールしたり、あとは、よる、これは別にいいわ。そんなことしなくてもあなたの妻でしょ、とこちらは思うことに対してよくわからない行動を周りにアピールするのよ」
王妃様、よる、と言ったよ、夜、あーそういう方向ですね。ひゃー、無理無理無理。
「番って大変なのですね、王妃様」
「あっ、悪いことではないのよ、アイリちゃん。そう、大事にしてくれるし、優しいし、一途に愛してくれるわよ」
「お母さま、先に悪いところを言ってどうするのですか。フォローになっているのかしら、それ?」
ルーがツッコミを入れていた。
お腹が空いてきたので、ルーにご飯にしましょうと告げた。王妃様も一緒です。
「ルー、色々作ってきたのよ。この前のジャポング皇国でいただいた、日本名でいいわよね、しょうゆと味噌などを使って作ってきたものと、ルーは15歳だったから、若い子負向けのご飯作ってきたのよ。毒は入っていないけど、鑑定してもらった方がいいなら鑑定して欲しいの」
「ごめんね、アイちゃん、お母さまもいるから鑑定してもらうわね」
「いいの、いいのよ。王族が食べるものはしっかりと鑑定してもらわないと断罪されてしまうわ。絶対鑑定して、お願い」
「そ、そうよね、強制力で断罪されても困るからそうしましょう」
お互い頷き合った。鑑定が終わり、みんなで食べることにした。
「2人して,断罪とか何バカなことを言っているの。それよりもアイリちゃん美味しそうね」
隣でルーが興奮状態。
「これ、オムライス、クリームソーダ、プリン、照り焼きチキンバーガーじゃないの。えー、私、あそこの照り焼きチキンバーガー大好きだったのよ。あっちの店で一番好きなのは、グラコロなの」
「えー、グラコロだったの?それは考え付かなかった。グラコロ、時期であったね。私、いつも食べるのがダブルチーズや期間限定月見チーズだったのよ。グラコロかぁ。うわぁ、そういえば妹たちや姪っ子が食べていたわ」
前世の話を2人で興奮して喋っていた。話がわかるのは楽しい。




