第63話 貴族新聞って何?
次の朝、家族みんな昼前に起き出した。かなり疲れていたみたいだ。
「アイリ様、おはようございます。疲れは残っていそうですか?マッサージいたしますが、いかがいたしましょうか?」
「うーん、いまマッサージされるとまた寝てしまうから、夜マッサージして欲しいわ」
「かしこまりました。ところで、アイリ様、スタンフォート公爵様から花束と手紙が届いております。こちらの寝室と部屋の方にお花を活けてよろしいでしょうか?お手紙はこちらでお読みになられますか?」
私はミリーの顔をじっと見てしまった。何言っているの?花束?ミリー、何?
「ミリー?スタンフォート公爵様から花束と手紙?なぜ?」
「?アイリ様、スタンフォート公爵様の番様と本日の貴族新聞に載っておりましたので、執事、侍女、メイド皆で朝から大騒ぎです。それから今朝届いた花束と手紙だったので、皆、浮き足立っております。おめでとうございます。アイリ様」
おーい、おーい。何ですと、何ですって!!何ーその貴族新聞って。私は飛び起きてしまった。落ち着け、落ち着け。
そこに、ドアをノックする音が聞こえた。
なりふり構っていられない。ガウンを羽織り対応するしかない。ミリーにドアを開けるよう指示した。
「アイリ、すまん、あー、起きたばかりか、着替えてないのだな。大丈夫か?着替えてからで良いぞ」
「いいです、お父さま。それよりも、それよりも貴族新聞ってなんですか?ミリーに聞いてびっくりなのですが」
「私も、今朝の貴族新聞を見てびっくりしたよ。貴族新聞に載っているなんて」
渡された貴族新聞は、闇の帝王のあの映画に出てくるような映像などが動く新聞だった。魔法のある世界なのよね、あの世界を堪能と言っている場合ではない、お父さまが盛大に飲んでいたものを吹いたのだろう痕跡がある。そして動く写真は2人で踊っているものだ。お互い見つめ合っているような??写真。えー、なんだか加工されていない?誰よ、これ撮った人?
「すまん、アイリ。あまりにも驚きすぎて、飲んでいたものを吹いてしまったのだよ。しかし、新聞に大々的に出てしまうとは困ったものだ。あの時、ゆっくり関係を詰めていこうと言っていたが行動が早いな。よほどアイリを逃さないぞという意思表示かな、ははは」
お父さま笑い事ではないのよ。私の今後の行動がやりにくいではないのよ。さっきだって、ミリーが番様と言ったのよ、ツガイサマ。いやー。
「お父さま。抗議していいですか?ゆっくり進めようと言っていた割には、新聞に載せるなんて横暴です。私、抗議文書きます」
「アイリ、落ち着け。しょうがないのだよ。やはり龍人の祖がこの国の礎だ。その番が判明したからには、大神殿へ報告しなければいけないのだ。そして、新聞そこからこのような貴族新聞で発表となるのだよ。喜ばしいことなのだよ。これは開き直るしかない。父さまはもう開き直ったぞ、というか諦めた。昨日、母さまとも話をして受け入れるしかないと諦めたよ。ははは」
お父さま、ヤケクソになっている気がします。あっ、貴族の令嬢はヤケクソという言葉を発してはいけません。オホホホ。
そうだわ、公爵様の手紙。
「ミリー、公爵様の手紙はどこ?」
「は、はいぃ、こちらにございます」
ペーパーナイフなど使わず、手で開けました。これの封筒は誰にも見せられないな。お父さまが遠い目をして、目を逸らしてくれていた。見なかったことにしてくれるのね。
手紙には、やはり貴族新聞に載せることの詫びとこれから食事や演劇などに行き、お互いを知り自分を知って欲しいなどのお誘いの言葉やこれからのことが書かれていた。とても綺麗な字ね。
「お父さま、抗議文はやめておきます。お詫びの言葉がありました」
私ってチョロいのか?謝ったらすぐ許してしまうなんて、チョロすぎる。
「そうか、そうか。もう世間に知れてしまったからにはどうすることもできないから、アイリ、全て公にして堂々とするか、その方が楽だろう?」
「前世の記憶のこというのですか?」
「違うよ、商会に関わっていること、特に美容部門を母さま、テオドール殿と一緒に携わっていることを公にすれば、番云々より美容に対して他のものたちにとって絶大だと思うぞ。女性は美に対してうるさいからな。そうすればテオドール殿との関係をいう輩もいなくなるだろう」
「テッシーとの関係ですか?テッシーは私のお姉様的存在ですけど」
「世間はそうは見ないよ。テオドール殿を男とみているのだから。テオドール殿と関係があるのかと思われてしまうのだよ」
そうだよね、オネエさまなんてこの世界では認められていないのが現実。
「わかりました。ル・ソレイユ商会の役員でドレス・化粧部門ルミエールに携わっていることを公表します。影に隠れるのはやめて,これからは堂々としていきます」
「う、うん。アイリ、忙しくなると思うぞ。学園入学もあるが、スタンフォート公爵様の番という立場に寄ってくる輩もいる。まぁ、アイリは42、3歳だから上手くあしらえることができるだろう」
ここで前世の対処術発揮できるか。そういうところは16の小娘ではないから、立ち回ることができるかも知れない。いかに狸親父や腹黒な人達をどうあしらうかが鍵だ。
「そうですね、お父さま。私、そんじょそこらの16歳の令嬢とは違いますからね」
お互い顔を見合わせて笑い合った。
その後、朝昼兼用食事、ブランチとなった。お母さまもお兄さまも今回の貴族新聞に載ってしまったことに驚いていた。
「アイリ、新聞に載ってしまって大丈夫か?昨日、番だなんて言われたのに、もう新聞で大々的に世間に知られてしまうなんて、もう少し余裕が欲しかったな」
「そうですよね。お兄さま。新聞に載せるなんて、こちらの意思を聞いて欲しかったです。まだ、心の整理がついていないのに。でも、公爵様から今朝、謝罪の手紙が届きましたけどね」
「スタンフォート公爵様は早速手紙を届けたのか。さすが行動が早いな。アイリはのんびり昼まで寝ていたのにな、そういえば緊張感なんてないのか?」
「緊張感?なぜ?私、番なんてわからないですし、お友達からと言ったのでそのつもりですけど,ダメですか?」
お兄さま、何言っているのよ。友達よ、お・と・も・だ・ち。
「と、友達のつもりなのか?えっ、アイリ、番としての対応をしないのか?えっ?」
その番としての対応って何?レティ、そんなことしていたかしらねぇ。
「お兄さま、とりあえずお友達として付き合っていきます。まだ、お互いことを何も知らないので、これからですよ」




