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第61話 手をずっと握られています

「あ、あの、すみません、私は、スタンフォート公爵様のことは存じ上げないので、お友達からということでよろしいのでしょうか?」


 誰かがブフォっと吹き出した人、これは国王様方向で聞こえた。ため息をついた人、アチャーと言っているようなそんな雰囲気、これはうちの家族だ、そういった数々の声らしきものがあちこちから漏れ出ているが、失敗したのか?受け答え間違った?


 とりあえず、スタンフォート公爵様にニコッと微笑んでみた。誤魔化しである。


「こほん、それではお友達からということで、お付き合いいただけるのですね」

 スタンフォート公爵様は目を見つめながら、にこりとした。

「お,お付き合いですか?」

「お友達からということで、食事に行ったり、劇に行ったりいたしましょう」


「劇ですか?うわぁ、演劇を見てみたかったのです」

 遠くでお父さまがアイリ落ち着いてと言っている気がする。お兄さまのため息が聞こえてくるようだ。また、やってしまった。


「スタンフォート公爵様もお忙しいでしょうし、ご都合が合えば、ご無理なさらない程度にお願いします」

ふう、危なかった。都合が合わなければ、いかなくていいわけだ。


「スタンフォート公爵ではなく、ジェイシスと呼んでください」


「あの,畏れ多くて呼ぶことができません。スタンフォート公爵様もしくは公爵様でお願いします」


「ぜひ、ジェイシスと呼んでください」

ずっと、手を握られている状態です。目もそらせない状態って、これは見つめあっているように見えてしまうかもしれない。


「おほん、ジェイシス、そうグイグイ行くな。アイリ嬢が戸惑っているではないか。今はジェイシスの番がアイリ嬢とわかっただけでもよかった」

 いえ、私はよくないですけど。

 まだ、国王陛下のお言葉が続く。


「今後のことは、またゆっくり話をしようではないか。これからアイリ嬢は、学園に入学もある。まだ時間はある。ジェイシス、もともと番が見つからなかった場合27歳で、番外しをすることになっていたのだから、アイリ嬢が卒業するまで時間がある。それまでお互いゆっくり歩み寄ってもいいのではないか。そう、性急にことを進めるものでもないぞ、ジェイシス」


「はい、申し訳ございませんでした」


「それでは、今日のデビュタントおめでとう、アイリ嬢」


「は、はい、ありがとうございます?」

 国王陛下にウインクされてしまった。

 そして、私、公爵様にまだ手を繋がれているのです。そろそろ帰りたいなぁ。


「あ、あの公爵様、そろそろ手を離していただければありがたいのですが」

 手を離して欲しいという意思表示は大事。はっきり?言わないとダメよね。


「すまない、自分に番がいたということがとても嬉しく、アイリ嬢に対し性急に進めようとして申し訳なかった。そして、あの時、あなたが怪我をおった時の自分を断罪したい。巻き戻せるなら巻き戻したい、本当にすまなかった」


「あれは私の自業自得のことなので,気にしてません。お気になさらずに」


「いや,やはりあの時の自分許せない。本当に申し訳なかった」


「本当に大丈夫です。たかだかこんな傷如きで人を判断するような奴は願い下げですよ。わかりましたわ、今度から傷を出すドレスでも着ましょう。何か言われてもどんと来いですよ。お母さまに怒られるかしら?でも人間、中身、人格が大事。容姿なんて二の次です。わかりましたか、公爵様。もう謝らないでください」


「いや、肌は他の男性に見せるのはダメだ。全部隠すドレスにしよう。しかしありがとう、私の罪悪感を軽くしようとおっしゃっていただき、優しいですね、アイリ嬢。できたらジェイシスと呼んで欲しいのだがダメだろうか?」

えっ、こうも違うの?大型犬が、耳をしゅんと垂れているようなそんなイメージなのだけど、どうすればいい。


「もう、ジェイシスいい加減にしなさい。周りから恐れられている威厳のある、あのジェイシスはどこに行ったのかしら?アイリちゃんすごいわね、ジェイシスをこんな風にしてしまうなんて。さすが42歳?43歳だわ」

いや、王妃様、私は何もしていません。


「王妃様、私は最近今の年齢に引っ張られているので16歳です。若いです」


「アイリちゃん、16歳にしては、頼もしくかんじるわよ。だって、ジェイシスを言い負かすことができるのはすごいことよ。それに自分のこと若いです、なんて言わないわよ」


「叔母上、私は言い負かされてはいません。話をよく聞いていただけです」


 うーん、帰れない。帰りたい。両親、お兄さまの方を向き、帰りたいアピールをした。


「あ、あの話を折って申し訳ございません。アイリも、私たちも今日のことは心の整理がつかないので、一旦帰宅し、話の整理をつけたいと思います。アイリは朝から、本日の用意や緊張で疲れ切っています。帰宅をお許し願えませんでしょうか」


 お父さま、ナイス。朝から用意でお疲れなのよ。それに、このお話が嘘か本当か理解できない。一旦家に帰り、みんなで話し合おう。


「そうだな、今日は朝からアイリ嬢大変であったろう。ゆっくり家で休んだほうが良いな」


「そうね、アイリちゃん。いきなり番宣言はびっくりするわよね。わかるわ。私もあの時大変な思いだったからとてもわかるわ。今日は朝から大変だったでしょう。ゆっくり休んでね。それと、このドレスと髪型や髪飾りはテオドール様の力作と言っていたわ。本当にすごいわね。アイリちゃんのアイデアと言っていたわよ。フルーラ様のドレスもテオドール様がつくったのでしょう?」

王妃様、話が脱線してますが、お開きにしましょう、お開きに。


「そうです。これはテオドール様がアイリと一緒に考えて作ったドレスです。本当に素晴らしいドレスなのです。王妃様」

お母さまと王妃様が話を始めてしまいました。まだ帰れない。


「この爪もテオドール様にネイルをしてもらったわよ。大丈夫よ、試作だということも承知でしてもらったから。フレグランスなどもよろしくね。アイリちゃん」


 テッシー、まだ試作段階なのよ。もう,王妃様になんてことしているのよ。


「王妃様、テッシ、じゃなくて、テオドール様と相談して、方向性を決めたいと思っております。もうしばらくお待ちください」


あれから,公爵様とまだずっと手繋ぎ状態です。そして心なしか機嫌が悪いような空気だなぁ。でも、手を離してはくれない。また、お父さまの方を見て、はやくと合図した。


「ギ、ギルバート、もういいだろうか」


「あぁ、ステファン、アイリ嬢もびっくりしたであろう。今日はゆっくり休むように」


「はい、ありがとうございます。国王陛下」


「それでは退出しよう」

お父さま、お母さま、お兄さまは退出しようとしている。


「あ、あの、公爵様。それでは、今日はダンスをしていただきありがとうございました」


「食事や劇にお誘いします。その前に手紙を書きます。ぜひ、一緒に行っていただきたいです」

こんな1日でグイグイくるものなのかしら。番の力って、怖いわね。


「公爵様もお忙しいと思うので、身体を壊さない程度にお願いします」


「大丈夫です。心配していただいて嬉しいです」

ちがう、意味が違うのよ。

私はこれからどうしたらいいの?


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