第59話 なぜ、私は踊っているの?
会場に戻り、レティとマリアナのところに戻った。そこには、カイデール殿下、ロベルト様、お兄さまが待っていた。
「ア、アイリ大丈夫か?」
「?お兄さま、こちらにいらしたのですね。レティ、マリアナ、紹介します。こちら、ルーです」
「ル、ルー?って、ルルーシュ王女殿下様ではないか、アイリ、また不敬なことしていないか?大丈夫か」
お兄さま、失礼な。私はまともよ。
「大丈夫よ。ルーと仲良くなったのよ。だから、レティやマリアナにも紹介しようと思って連れてきたのよ」
失礼しちゃうわね、お兄さま。私、不敬などしないわよ。断罪回避するんだから。
「あ、あの、ルルーシュです。知っているとは思いますが、よろしくお願いします」
「ルーは、引きこもりをやめるの。これから、カイデール殿下、ルーを連れてきてください。お願いします」
みんなびっくりした顔をしていた。とくにカイデール殿下は、驚いた顔をしていた。
「ルルーシュ、大丈夫なのか?引きこもりをやめるって、調子悪くならないか?大丈夫か?」
「カイ、大丈夫よ。これから色々外に出て、経験していきたいと思っている。引きこもっていてはもったいないと思ったのよ。アイちゃんが、楽しまなければもったいないと言ってくれたおかげで、納得してしまったの。だから,これからは、引きこもりはしないわ」
力強くルーはうなずいた。
「アイリ嬢、ありがとう。ルルーシュが引きこもらずに外に出るきっかけを作ってくれて本当にありがとう」
カイデール殿下、すごく嬉しそう。やっぱり心配していたんだよね。
「ルルーシュ、あとで父上や母上のところに報告に行こう」
「はい。カイ、今まで迷惑かけてごめんなさい。そして、これからもよろしくお願いします」
「何言っているんだよ、兄弟なのだから当たり前だろ」
これにて一件落着。わっはっはっはーと思っていたら今度は、スタンフォート公爵様であるジェイシス様が近づいてきた。ルーと目を見合わせて、何?何があるの?
ルーは知らない、わからないと首を振っている。
モーゼの十戒の海割れのように人が左右に割れた。
「アイリ嬢 ダンスを踊っていただけますでしょうか」
「はい?」
だ、断罪様がきたー。どうして?私、断罪されるの?ルーを見た。首を振っているよ。キョロキョロと見回してしまった。
「ちょっと、アイリ、はい?じゃないでしょ。返事して,返事」
レティ助けてよ。レティをガン見したけど、助けてくれなそうなかんじ。
「スタンフォート公爵様、わ、わたくしでしょうか?」
カタコト言葉のような喋りになってしまった。
「ぜひ、私と踊っていただけますか?お願いいたします」
うわー、断れないよなぁ。多分、公爵邸のパーティでのやらかしを気を使わせているのだろう。ありがたいので、断ることはできないけど、ダンスができないよ。なぜ、私はあんなに、あんなに頑張って練習してもダンスは苦手なのか?足踏まないように頑張らないと。
「よ、よろしくお願いいたします」
フロア中央だよ。
「あ、あの、公爵様。私、ダンスが苦手ですので、端っこの方で踊りませんか?ダメですよね。すみません」
「私に、寄り添うように踊れば大丈夫ですよ」
「いえいえ、寄り添うのはできないです。ほぼ初対面ですし、親密ではないので寄り添ってダンスはできません。足を踏まないように気をつけます」
「ふふっ、大丈夫ですよ。寄り添ってください」
ぐいっと腰をホールドされ、まさしくSHALL WE DANCEのようなホールド。おおー、近い近い。ドキドキする。イケメンな公爵様よ。この世界イケメン率が多すぎる。お兄さまもイケメンだけど、前世にこんな異世界的イケメン近くにいない。日本人や欧米のイケメンとは違うぞ。2次元のかっこよさだよ。2次元の世界。何等身ですか?と思うような出立だ。これぞ、小説の中なのかな?
うわー、音楽始まっちゃった。ど、どうしよう。誰か助けて。
「顔を上げてください」
「ふぇ、顔を上げたら、足がわからなくなってしまいます」
「ふふっ」
「あの、公爵様、お気遣いいただきありがとうございます。公爵様から歩み寄っていただいたおかげで、確執があるのではないかなど、陰で言われてますので、私は自業自得なので何言われてもいいのですが、家族が批判されるのが辛いので、ありがとうございます。」
「アイリ嬢は、聞いていいかな。ロベルトのことはもういいのか」
「ロベルト様ですか?まったく。あの頃は若かったなぁと思っております。恋は盲目と言いますか、若気の至りといいますでしょうか、そのように思っております」
「若気の至りって。それではテオドール殿とはどう思っておられるのですか?」
「テッシー、あっ、いえ、テオドール様ですか?とても仲良くしていただいております。なんでも相談でき、頼りになり、信頼できる(お姉さまのような)方で大好きな存在です」
「そ,そうですか、そんな関係なのですね」
「(うちの商会には)なくてはならない存在です。テオドール様はそんな方です」
テッシーはオネエ様っぽいから、この世界の世間一般にはうけいれないのかもしれない。あの、テッシーの父親と兄のように。私はテッシーを誇りに思う。
だから、いいところを声に出していうわよ。人それぞれ人権があるのよ。
「そうですか。しかし、アイリ嬢はだいぶ雰囲気が変わりましたね」
「そ、そうですか?お母さまのスパルタ淑女教育の賜物だと思っております。そういうことで、ロベルト様のことはまったくこれっぽっちも未練も何もないので、安心してください。もう、スタンフォート公爵様の甥のロベルト様には、今後ご迷惑をお掛けしないよう気をつけます。スタンフォート公爵様にも多大なるご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。マリアナ様にも多大な迷惑をかけたのですが、お友達になっていただいて、本当に感謝しかないです」
「背中の傷は大丈夫になったのですか?治癒魔法をかけましたか」
「?いえ?治癒魔法は高いのでしていません。お恥ずかしながら、うちにはそんな財力はないですし、おバカな行動で怪我した私のために借金までして治癒魔法をかけてもらうのが嫌だったので、断りました。両親は治癒魔法をしなさい、と言っていたのですが、断りました。でも、今は元気いっぱいです」
「えっ、そうですか。だから、今日の装いは、背中を隠しているのですか」
「そうです。でも、テッシー、あ,いえテオドール様が素敵なドレスを作ってくださったので、感謝しております」
「テオドール殿がそのドレスを作ったのか?そうなのか」
何気にグィッと引き寄せられるように腕の力が入った気がする。しかし、近い、近いよー。
ダンスが終わった。足も踏むことなく、やり切りました。
公爵様にエスコートされ、両親の元へ戻った。本当は料理の方へ行きたかったが、両親がハラハラドキドキしているだろうと思い、両親の元へ戻った。
「公爵様、ありがとうございます。我が娘、アイリのことを気遣ってダンスを誘っていただきありがとうございます。」
「後ほど話があるので時間を作っていただきたいのですが」
「えっ、な、何か失礼なことをしましたでしょうか??」
父と兄が挙動不審になっている。お互い顔を見合わせていた。
「何か、モンテスキュー侯爵殿は何か思うところがおありなのですか」
「いえいえいえ、な、なにも、あ、いや」
「後ほど、よろしくお願いします。それでは、アイリ嬢、ダンス楽しかったです」
「こちらこそ、ありがとうございました」
お父さまとお兄さまが焦っているけど、どうしたのだろう。
「あなた、先ほどからどうしたのですか?おかしな態度で公爵様に失礼でしたわよ」
「す、すまん。なんの話だろうと、焦ってしまったのだ」
「いったい何の話かしらね」
お母さまは不思議そうにしているのに対し、お父さまとお兄さまでコソコソと話しているので、お母さまにドレスのことを聞いた。肌触りの良い生地にみんな驚いていた。はしたないことかもしれないが、触り心地を堪能したらしい。
よかった、お母さまも楽しそうでよかった。早く帰りたーい。




