第47話 番の話
お父さまとお兄さまが王都に戻ることになった。早いもので、お兄さまはもう学園が始まるので準備が必要となる。月日が流れるが早い。お父さまとお兄さまにが帰ってしまう。
私は領地でのびのびと、したいことをするので、お兄さま、王都での対応よろしくお願いします。私はこれから、ココヤシの実で化粧品とオイルを作るのよ。美白。それは永遠の女性の追求すべきこと。ヘチマ、ドクダミ、ハトムギはやってみた。今度はココヤシの実だ。あとはスキル分解でシルキーバタフライの絹からフィブロインを抽出した100%フィブロインのシンクパウダーを作るのだ。
ココヤシの実ならお母さまも大丈夫だろう。シルキーバタフライの繭はうーん、蛹で卒倒するだろうなぁ。シルキーバタフライはお兄さまと考えていこう。
王都に帰る前の2人にオーダードレス、レンタルドレス、リサイクルドレスと化粧品が置けるような店舗を探してもらうようにお願いした。その時はテッシーさんも交えて要望を聞いてほしいことを伝えた。
渋々お兄さまは帰っていった。
「早く王都に戻って来い、アイリ」
「そんなに早くは帰れませんが、デビュタント前には会えると思います。たぶん」
「お前、絶対王都に戻りたくないだけだろうが、王都でもやることはある。連絡は密にすること、わかったな」
と、頭を強く撫でられた。髪の毛が乱れるでしょ。もう、兄者。
「あとは、デビュタントと、学園への入学があるから、レティシア嬢とマリアナ嬢とも連絡をとっているのだろう」
「2人には連絡とっているけど、憂鬱てす」
「母上は、デビュタントのドレスのデザインをテオドール氏と考えているだろうし、デビュタントの時は、俺がエスコートするから、安心して帰っておいで」
「お兄さまがエスコートしてくださるのは、とても嬉しいのですが、気が重いです」
「まぁ、母上も社交シーズンが始まる前には帰ってくるだろうし、その時にアイリも帰ってきなさい」
「考えておきます」
お兄さまは、お父さまと一緒に王都に戻っていった。
もちろん、ライター板を模したサスペンション搭載馬車だ。
「お父さま、お兄さま、乗り心地がどうだったか、感想を聞かせてくださいね」
「それはわかっている。ドリルと、何度も何度も試乗し、直し,やっとできたものだ。今回は長距離だから、快適な乗り心地になってほしいと思っている。ドリルには感謝だな」
「本当に、試乗や改良を何度もして、やっとできましたね。父上」
「あぁ、アイリもありがとう。これからまた忙しくなるのだらうなぁ」
「そうですね、父上」
と、2人とも想いに耽っていた。でも、楽しそうな雰囲気だったけど。すごい力の入れ具合だったからね,あの2人。こうして、2人は王都へ戻って行った。
さぁ、私はカイルとレオンと遊び、勉強も教えた。算術は小さい頃から、繰り返し行えば、計算が早くなるので、早々と教えてみた。なかなか、適性があるようで、すいすい答えていく。えらいぞ、ちびっ子たち。お母さまのスパルタ淑女教育のおかげ?で、だいぶ歩き方、仕草、作法、隠語などなど、貴族令嬢らしくなってきました。及第点が出るまで、長かった。根本はかわってないので、表向きだけは装うことができる。たぶん。
ダンスの方もなかなか様になってきたと自分ではおもう。今までは身内と踊っていたので、デビュタントで、お兄さま以外で、私と踊ってくれる方はいるのかしらね。でも、私はダンスは苦手ということがわかった。どう頑張っても、リズムに乗れない。ピアノは弾けるのに、体が思うように踊らない。たぶん、男性と一対一で向かい合って、ホールドされる、その距離感が恥ずかしくてダメなのかもしれない。恥ずかしすぎる。
まだまだ、お母さまとの淑女教育とロイドとのダンスの特訓はつづく。
そうこうしている間に、秋に種を巻いた野菜はスクスクと育ち、春に収穫し、それが終わったら、今度は春に植える野菜の苗や、種を撒いていこう。
小麦など夏少し前に収穫できそう。
土壌改良で育てた野菜の収穫量は前年よりも多く収穫することができた。でも、まだ安心できない。輪作対策を軌道にのせ、収穫高の安定を目標に今後もみんなで頑張ろう。
そして、シルクを特産にすること。
みんな、あの蛹に慣れよう。慣れるかな。
お父さまが、関わった人達と契約魔法をするために、領地に戻ってきた。お父さま、領地と王都行ったり来たりで、忙しいなぁ。領民たちも、領地のために、契約魔法に頷いてくれた。領民一丸となって、盛り立てていこうと、良い領民たちです。
私も、頑張るぞ、オー。
〜スタンフォート公爵邸にて〜
その頃、スタンフォート公爵邸では,現当主、ジェイシス フォーダム スタンフォートが両親に、
「最近、番を感じる」
「27歳で、番が見つからないようなら、番止めを飲むことになっているが、ジェイシス、番を本当に感じるのか?」
「父上、そうなのです。今まで全く感じなかった番の存在が1年前ぐらいから意識するようになったのです。漠然として確証がなかったので、番がいるということがわかるようになってきたのです。」
「まぁ、ジェイシス、それは本当なの。とうとう番の存在が。ということは、今年生まれた子達の中にいるのかしら。」
「国王陛下にもおしらせしなければ、番の存在が現れたと」
「父上、母上」
王城国王執務室では、
「何、やっとジェイシスに番の存在が現れただと、まことか。半年前ぐらいから現れていたのか。では、2年前ぐらいから産まれた子集めて、祝辞を宣べるとしよう。
ジェイシス25か。まぁ、だいぶ歳は離れているが、幼少の時から、公爵夫人としての教育を施していけば大丈夫であろう。では早速催しを通達するように」
国王が宰相や国王補佐に指示を出した。
「御意に」
「あー、やっとかジェイシス。番か。この王家の血を引く男は龍人の血を引くもの。番の存在が不可欠。運命の悪戯なのか、ジェイシスだけは成人になっても見つからなかった。辛かったであろう。ようやくだ。」
王は窓辺に佇み、ジェイシスを思いやった。
しばらくすると、2年ほど前から今までに産まれた子を集めて、国王陛下からの祝辞を賜る式が開催された。式に参列した貴族たちは、自分たちの子がジェイシスの番ではないかと歓喜した。しかし、ジェイシスの番は見つからなかった。
「なぜだ、なぜなんだ。番の存在は感じるのに、なぜいない」
「ジェイシス、もしかして、平民なのでは?」
「叔父上、まさか、平民」
「貴族の落とし胤の可能性もある。では、今回は平民にも、祝辞を賜ることにしよう。ちょうど、この国建国500年という節目だ。未来ある子供達に祝福を与えよう」
国王陛下は平民の子供達を集めて祝辞を贈った。
そこでも、番らしい存在は感じなかった。
「ジェイシス、本当に番の存在は感じるのだね」
「はい、 父上、半年前ぐらいから、竜の鱗がドクドクと脈を打っているのです」
「そうか、鱗は番を感じているのだな」
「いったい、どこにいるのだ」
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叔父のジェイシスの番が見つかりそうという話をロベルト様が、婚約者のマリアナ様、アレクセイ、第二王子カイデール殿下などと話をしていた。
「番の存在はあるのに見つからないとは、ジェイシス兄さまも気が気ではないだろうなぁ」
ロベルト様が、叔父であるスタンフォート公爵様を心配していた。
「ロベルト、ジェイシス様は本当に番の存在がわかるのか」
「アレクセイ、我が国の王族の血を引くものは竜人の血が流れているのは知っているだろう。引き継がれし者には、竜の鱗がある。私の番は、公爵令嬢のレティシアとわかっていたし、大体が成人までにわかるはずだった。それなのにジェイシス殿には、今まで現れなかった」
第二王子カイデール殿下が状況を説明していた。
「そうなのか、1年前から、存在が感じられるようになったのか」
「ああ、そうだ、アレクセイ」
1年前か、アイリが前世を思い出したことだよな。まさかだよな。今までジェイシス様と会っていた時は、全く番反応はしなかったのに、怪しまれるしかないな。前世の記憶があるなんて言っても、信じてもらえないだろうし、絶対怪しいと思われる。父上に言ってみるか。
「どうした、アレクセイ」
「い、いや。別に。ジェイシス様、早く番が見つかるといいな」
その夜、父の執務室に行った。
「父上」
「どうしたんだ、アレクシス」
「今日、ロベルトたちと、ジェイシス様の番のことを話をしていたんだ」
「ああ、見つからないということか」
「それで、俺の仮説だけど、あくまで仮説として聞いてほしいけど、1年前に番の存在があったということだろ。まさかと思うけど、アイリなのかとも思ってしまったのです」
「アイリ?幼少から、最近はあの事故まであっていたが、番の反応はなかったぞ」
「アイリの前世の記憶、今のアイリは前世の人で形成されている。その人なのかなと考えたんだ」
「まさか」
「でも、今まで会ってきて、番の反応はなかったのにいきなり番反応がでたなんて、怪しいとしか思えないだろ。」
「考えすぎた、そう、考えすぎたぞ、アレクセイ」
「そ、そうですよね、考えすぎました。すみません。父上」
「今、あの子たちは領地にいる。あの子はデビュタントがあるしな。まったく、目指せスローライフなんて、腕を高々と上げて宣言していたよなぁ。ココヤシの木を植えたら、風景がいいよなぁ。私もあのパラソルとチェアで、ゆっくりしたいよ」
王都に戻ってきたら、商会の仕事の忙しさに、領地の海とパラソルとデッキチェアに思いを馳せた。戻ってゆっくりしたい。
「そうですね、色々発明することはすごいのに、あいつは,全く、おかしな行動をとってますね」
「まぁ、今は様子見としておこうではないか」
「はい、父上」
「なぜ、番が見つからないのだ」




