42話 領地巡りで驚愕
それから数日経ったある日、お兄さまが馬に乗らないかと、誘ってくれた。馬、馬ですか!ポニーじゃないよね?馬よね?前世、乗馬を習っていた私。乗りたい。この優雅なひとときを待っていました。
お兄さまは、私が前世乗馬を習っていたと聞いた時に、領地で馬に乗せてあげよう、と考えていたらしい。うー、お兄さま、優しいよ。
それに、今まで、私に無理なことばかりお願いしていたから、のんびりしようと言ってくれた両親、お兄さま、ありがとう。今まで忙しかったよ,ほんと。無理は禁物よ、無理は。
お父さまも領地を見回りしたい、そして私を案内したいと言って、お父さま、お兄さま、私で、領地を見て回ることとなった。前のアイリは、全く領地に興味がなく、虫がいるから嫌、日焼けするから嫌などなど、家から出なかったらしい。
まずは,敷地内で馬に慣れてから、領地に行くことになった。よかった、ポニーではない。普通の馬でよかった。
久しぶりなので、馬に触ることから始まり、馬との触れ合いをし、いざ、乗馬。
あー、久しぶりの乗馬。
まずは、敷地内をゆっくり慣れるために歩く。それから速度を上げる。止まれるかどうかも確認。どうどう。
「アイリ、感覚は覚えているんだな」
「お兄さま、よかったわ、馬に乗れて。でも、まだこの子に慣れていないから、早く走れるか不安よ」
「別に早く走らなくてもいいだろう。競争する気なのか?」
「馬と駆けたいってかんじ」
「徐々にだよ。でも、これなら早く一緒に領地巡りができそうだな」
「はい。早く行きたいわ」
「ふふっ、淑女教育での言葉遣いがなんとなく良くなってきたのではないか」
「そうかしら、まだ、お母さまにダメ出しされるわよ」
「これも徐々にだよ」
そうして、やっと馬に乗りこなせるようになり、領地巡りの日になりました。お父さま、お兄さま、私、その他護衛騎士たち。
まずはうちの領都は王都や他の領都と比べると小さいですが、一応活気?溢れている。魚が売っている。肉もある。ただ、野菜の値段は高いね。やはり、そこなのよ。野菜。一番に考えるべきね。野菜を育てるのに少し時間がかかる。タウンハウスの庭で、野菜を作ったが、小さい畑での、土壌改良の魔法を使ったから、発育が早かったのかわからないが、この大地にどれだけのことができるだろう。
ガラスの温室ができればいいのではないか。ビニールを作るのは難しいが、ガラスは石灰石、石英、ソーダ灰だ。うちには海が近くにある、ということは、山などに石灰石などが蓄積されているのが埋まっているかも。隆起したような山、山はある。この土地の歴史はまだ習っていないが、昔は地底だったかも。これはもしかして、あれば、買わずとも、ガラスはうちで作れる?温室ができるかも。
そして、石灰岩や石灰石があれば石灰ができ、それを撒けば除塩にもなる。石灰石、石灰岩が山に埋まっていて欲しい。
石灰石のもとは、暖かい海に生きるサンゴだ。モンテスキュー領は南にあり、もしかしてサンゴがあるのではないの?サンゴ礁なども。海にあるのか山にあるのか探索あるのみ。
それと共に、粘土があって欲しい。そうすれば陶器もつくれる。粘土は沼地や湖の近く、砂岩が含まれる岩壁、やはりこの地域、探せばあるかもしれない。
漁村では、地引網漁が盛んだということだ。漁村か。イメージは砂浜に掘建て小屋があり、小舟があって、網が乾かしているイメージだね。海いいね。
朝早く起き、地引網漁体験ツアーがあったね。それに潮干狩り。すべて朝が早かったという記憶。
「アイリ、あそこで地引網漁が行われているんだ。色々な魚が取れるよ。我が領地は野菜は難しいが、魚が取れるから、ありがたい」
お父様がしみじみと言っていたが、私は驚愕ですよ。海が海が青いですけどー。
えっ、あのーみんな不思議に思わないの?青い海に白い砂?なのですが。とても綺麗な海辺。えっ、リゾート地?
この世界はみんなこんな海なの?え?え
宿泊施設を作り、部屋の床の一部をガラス張りにして、海の中が見えるという、あの部屋を作れば良いのではないの。
土魔法士さんに入り江を作ってもらい、テトラポッドなども作り、波が来ないようにして、本当にリゾート地にすればいいのでは?でも、うちの生態を崩してしまうかもしれない。食生活がまだうまくいっていないからダメか。
風情があるわ。ずっと、パラソルの下のビーチチェアに座ってのんびりしたい。ここでのんびりできるじゃないの。波の音に癒されるわ。
ふと見ると、乾かしている網の横に、ゴミのようなものが積み重なっていた。よく見ると、海藻ではないの?なぜ、積み重なって捨ててある?
「お、お父さま、網の近くに重なってる物はなんですか?」
「あぁ、あれは海のゴミだよ。網に引っかかってくると重くなり、厄介なのだ」
なんですとー。ちょっと待って。海のゴミって?
「お父さま,近くに行ってもよろしいですか」
「あぁ、では海の近くに行こう」
馬を降り、砂浜を歩く。砂浜というよりは珊瑚か?本当に青い海,白い浜辺。
「お父さま、他の領地の海に近いところは、このような光景が当たり前なのですか?」
「いや、隣の領地は他領地からの船や商人の船も来るので、漁港というよりは港なのだ。陸地での運搬より海から行った方が早いからな。他の土地の海は確かにこんな青くはないし,砂浜は黒っぽい?灰色ぽいかな」
ゴミのように置かれたところに来ると、昆布やワカメ,珊瑚?石っぽい物体、貝が捨ててあった。
「お、お父様、こ、これはなぜこんなところに捨て置かれているのですか?」
「これは、昔から地引網漁では、ゴミなのだ。これが入っているといないとでは、重さが違い、引くことが大変になる。この石みたいなものは海の石だ。そしてこの貝が厄介だ。白い石ころが入っているのだ。我々は残念貝とよんでいる。本当にゴミでしかないのだ」
いやーー、誰か教えてあげて。いやー。
何、ゴミにしているの。ゴミではない、たぶんゴミではない。落ち着けー、落ち着けー。
昆布、ワカメ、海の石は珊瑚かもしれない。そして、貝に、貝に白い石が入っているって、残念貝ですって、あぁー、真珠じゃないのか。真珠じゃないかもしれないけど。どうなの?今、ここでは鑑定を使ってはいけない。お父さまとお兄さまだけの時に使おう。
では、この貝に白い石があるのか。生のまま放置は異臭を発してしまうため、乾燥させて放置するらしい。貝殻を持って、殻を剥がそうとしたところ、護衛騎士のドリームが自分がやりますといってくれた。
「お嬢さま、手を痛めてしまいますので、私が、殻を外します」
「ありがとう。お願いできるかしら」
護衛騎士のドリームが片方の殻を外してくれた。
「ありがとう、ドリーム。では、その貝をくださるかしら」
「お嬢さま、手が汚れてしまいます。やることをおっしゃっていただければ,自分がやります」
「本当にありがとう。白い石を取って欲しいの」
「あぁ、白い石ですね。これですよ。これがあると貝が食べられず,捨てることになってしまって、なんでこんな石が入ってしまうのですかね」
「ほ、ほんとね」
内心、まったく残念貝なんて思わず、これは真珠かもしれないのよ、と騒ぎ立ててはいけない。冷静に冷静に。
「お、お父さま、今までの、その海の石と残念貝はどこにあるのですか?捨ててしまったのですか」
「いや、埋めているよ」
はい、掘り起こしましょう。今、掘り起こしましょう。今でしょ。
「どこに埋めてあるのですか、教えてください」
「ア,アイリ、圧がすごいんだけど、首を絞めないでくれ。頼む。おい,セルゲールを呼んできてくれ」
冷静になれていなかった。
セルゲールさんとは、漁村での漁業を総括している監督者だった。
「こちらに穴を掘って埋めてあります。貝類は、そのまま埋めてしまうと腐って異臭がするようになるため、乾燥して埋めてあります。掘り起こすのですか?何ヶ所もあり、いっぱい埋まっていると思いますので、今日だけでは掘り起こすことはできないと思います」
なるほど、こうやって貝塚はできていくのねって納得している場合ではない。
「時間はかかってもいいので掘り起こして欲しいです。いえ、珍しいものだなぁと思って、捨てるのはもったいないので何かに使えればと思ったのよ。ええ、、ちょうど貝をすりつぶして、畑に撒こうと考えていたところだったのよ」
セガールさん、乾燥して埋めてあるなんて、グッジョブ。念の為、クリーンはする。
「手作業は大変なので、土魔法士の方に掘り起こしてもらえないかしら?」
セルゲールさんたちが掘り起こしてくれることになった。全部掘り起こすのは今日中は無理なので、少しだけ掘って、出てきたものを確認することになった。
掘っているうちに貝や海の石が出てきた。
「こんなにいっぱいあるのー、すごーい」
私は叫んでしまった。
「アイリ、その言葉はよくないと思うぞ。母が聞いたら卒倒する」
「そうだな、アイリ。人前で,その言葉はよくない。気をつけるんだぞ」
「はい、お父さま、お兄さま申し訳ございません。以後言葉遣いに気をつけます」
私は珊瑚と、真珠を集めた。掘り起こしたものを収納へ入れ、あとで整理することにした。
さて、昆布とわかめだ。
「お父さま、これはコンブとワカメと言って、海藻です。コンブは乾燥させれば、ダシになったり、この前ジャポング皇国で取り寄せられることになったミソやセユで味噌汁にしたり、煮物にしても美味しいです。ワカメも味噌汁と酢の物で和えるのが美味しいです」
「そ,そうなのか。えっ、今までゴミとしていたのは間違えだったのか。それに、アイリが収納したのものも何かに使えるのか」
「まだ、家に帰ってから、検証したいと思います」
「アイリ、その時は父さまも立ち会っていいかい?」
「お父さま、まだわからないことなので、少人数で行いたいです」
「そうか、わかった。アレクセイ、アレクセイも大丈夫か?」
「はい、アイリのすることの盾になるので、私も聞きます」
おー、お兄さま,かっこいい。防波堤、盾になってくれるのね。心強いよ。
「お兄さまがいると安心します。思いっきりなんでもできそうです」
うんうん、と私は頷いた。
お兄さまにため息をつかれてしまった。
「お兄さま、精神的なことで、お兄さまの髪がハゲたらごめんなさい」
「わかっているなら、少し自重ぐらいしてくれよ」
と笑って、軽くデコピンされた。痛いよ。
「それでは、2人とも、このあと農作業を確認し、夕食後執務室に来なさい」
「「はい」」
その後、畑を見回った。やはり、作物は育ちが悪いか。
「塩害か」
「そうなのだよ、文献によると私が生まれる前、数十年前に大きな嵐がきて、高潮が押し寄せてきたという話がある。だから、我々が住む場所は、海からは離れている。波が押し寄せてきたところには人を住ませないようにしている。漁師は、海辺に近いが少し高台のところに住まわせた。あとは海からの塩を含んだ海風で畑に塩が多く含まれていたり、対策が手付かずになってしまっていた」
「お父さま、ヤシの木いえ、ココヤシの木を植えましょう。ココヤシの木は海水に強いのです。そしてココヤシの実は、石鹸や油にもなるので、商売になります。ただ問題は一年に5〜7センチしか成長しないので、大きくなるには10年から20年かかります。そこは、私の生活魔法、土壌改良を施して、ヤシの木の成長を促せればいいなぁと思ってます」
そうなのです。ココヤシの木。図書館館長のザインツ様と一緒に領地で何が育つことができるかなど調べた。そこで、ヤシの木っぽい木、名前はまんま、ココヤシの木。これよー。
「なるほど、ココヤシの木か。まぁ、植えるぐらいならいいか。海水に強いならいいな。そのココヤシの実か?石鹸や油にもなるのか。アイリの力を借りることになってしまうが頼む。すまんな」
我が領地での産業を起こさないと経済が回らない。ココヤシの木が第一歩になるかな。
まずはヤシの木を育成させ、ココヤシの実で、石鹸を作る。オイルも作る。
あー、でもリゾート地で癒されたい私。
(温泉があればもっといいのに)
白いパラソル、白いデッキチェア、白いワンピース。クリームソーダがいいかなぁ。クリームソーダなんて、ないですが。
妄想で、意識が明後日方向にいっていた。
「アイリ、アイリ聞いているかい?大丈夫か?疲れてしまったかい?」
お父さまが心配してくれていた。
妄想していたのですいません。




