番外編 お兄さまとルルーシェの結婚式の構成を考える
朝、男性陣は全く起きてこない。どれだけ飲んでいたのかな。
私とルーは朝の散歩に出掛けていた。
「ねぇ、ルー、この海の前で結婚式をしようよ。ここに神父様、ここに赤い絨毯のバージンロード、両左右に椅子席を置いて、領民も見えるようにして結婚式を挙げるの。ライスシャワーがいい?フラワーシャワーにする?そうだ、ゴムがあるからバルーンをいっぱ作ろうか?ルーは王族だから、王都で結婚式を挙げるでしょ。でも、この領地でも領民と一緒にお祝いができるようにしたいなぁと考えているの。どうかな?」
ルーは私に抱きついてきた。
「アイちゃん、嬉しい。領民の人たちと一緒になって結婚式したい。すごくいい!アレクにはまだ言っていないのよね」
「うん、今思いついたから。王都で着るドレスは伝統的なドレスでしょ?でも、こちらで着るウェディングドレスはテッシーと私とルーの考えたウェディングドレスにするの。みんなでダンスしたり、飲食はいっぱい出すよ。もちろんお酒もね。そして最後、ビンゴ大会しよう。参加者全員で。楽しそうだよね」
「そんな結婚式したい。嬉しい、結婚式、出たこともしたこともないから嬉しい」
「私は結婚式に出席したことや企画したことは数知れず。自分の結婚式はしたことがないよ」
自虐ネタだ。
「アイちゃん」
「あはは、ルー、そんな顔しないで。自虐ネタよ。今世は結婚できそうだからよかったわよ」
それから、昼ごろから起き出したお兄さまにそのことを提案した。
「アイリ、それすごくいいな。海の前で結婚式か。領民も参加できる結婚式。みんなにお披露目ができるな」
いままで、領民たちとみんなで一緒になって頑張ってきたからね。だから余計みんなでお祝いしたい。
「アレクセイ達はいいな。なぁ、アレクセイ。冗談として聞き流してほしいが、お前たちと俺たち一緒に王都の結婚式を挙げないか。ルルーシェと俺は双子だし、合同で式を挙げた方が注目度が二分して、尚且つ、観衆だって一度の方が楽だろう。俺も臣下となるわけだ。アレクセイと同じ立場になる。だから結婚式一緒にしないか?」
国王陛下や王妃様もびっくりしていた。
「カイデール、レティシア様の意見も聞かないとダメよ。結婚式は女性にとって1番輝ける時なのよ。でも、アレクセイ、この領地で結婚式を挙げるなんてステキだわ。ルルーシェは本当に幸せそうだわ」
合同結婚式はレティ次第となった。レティなら一緒にしたいというかもしれない。自分たちだけで注目されたくないだろうから。
「この領地で結婚式をする時は我々も来ていいのか?アグリに頼んで連れてきてもらえるぞ」
国王様が来たら、警備上無理かなぁ。変装して架空の叔父さん枠で来てもらう?
「父上、王都で結婚式をするのに、こちらに参加するのですか」
カイデール殿下が尋ねた。
「王都は国王として、ここの結婚式では父親として参加したいではないか」
「あら、私も母親として参加したいわね」
「領民は見て見ぬふりをしてくれますよ。あははは」
お父さま、見て見ぬふりを領民に強要するのですか。そうですか、させましょう。領民にあの方は国王陛下ではない、国王陛下と思ってはダメ。国王陛下に似た人など暗示をかけるしかない。思い込んでもらおう。
そこからみんなでここでの結婚式について話し合った。先ほども言った、海の前で神父がいて、赤い絨毯は必須。白い鳩を飛ばそうかしら?
「でも、結婚式に参加したいが、何日か前にここに泊まらせてもらえるのだろうか?」
ご学友、騎士団長の二男、オスカー様が質問してきた。
「ここに泊まれますよ。あと送迎します。だだし、夜ですが」
「おい、アイリ、お前。あれを使うのか?」
「そうですよ。送迎にもってこいではないですか。夜使えばバレませんよ。6人ぐらいなら乗れます。私、運転できますから安心してください」
「しかし、アイリ。あれは」
お父さまとお兄さまがオロオロしてしまった。
「アイリ、あれか?もう出来上がったのか?もう運転しているのか?私も運転したい」
ジェイシス様に話はしているし、ドリガン親方のところでパーツだけは見ているが、実際まだ全体像を見せていないわね。
「お兄さまの結婚式までには十分間に合いますよ。それに夜のうちに運転すればわかりませんよ」
ほとんど出来上がり、試運転もお兄さまと私がしている。
「なんだね、ステファン。まだ、あの水上バイク以外のものがあるのか?ここは本当にワクワクするものがたくさんあるが、今後を考えると頭も痛い」
二日酔いですよ、それは。
「伯父上、そうなのですよ。アイリが作るというか考える物は頭が痛いのです。今回のも話は聞いていますが、すでに出来上がっていたとは、ドリガン殿も楽しくてつい作ってしまうのだろう。なぁ、アレクセイ」
「ジェイシスお義兄さま、そうなんですよ。ドリガン親方も楽しいと言って色々作り出してしまうので、世に公表できないものがありまして、ははは」
「ほぉ、ステファン。見学させてほしい。どういうものを作っているのか楽しみだな」
結婚式の話から、新商品の話に移った。
「ねぇ、アイちゃん。運転できるって言っていたけど車作ったの?うそー!あの車を作ったの?水上バイクや自転車を作ったのならバイクは?バイクは作ったの?私、ハーレーに憧れていたの。おじさんがハーレーに乗っていたのよ。サイドカーをつけて乗せてくれたのよ。懐かしいなぁ」
「そうだ、車の後ろに缶をつけて結婚式、退場するのはどう?」
「それ古いよ。古すぎる。時代いつよ?ゴンドラから降りてくるとか言わないでしょ?うちの母親が結婚式で流行ったからやったわよー、なんて言っていたのを思い出すわ」
ルーとバイクと前世の話で盛り上がってしまった。
「2人とも、よくわからない話で盛り上がっているが、くるま?ばいく?はーれー?面白い話をしているな。二日酔いのポーションを飲むから、午後から実物でも見にいこうではないか、なぁ、ステファン、アレクセイ、アイリ」
国王陛下やカイデール殿下、ご学友たちは昨日のお酒巡りだったが、本日の午後から工房に見学に行くことになった。
国王陛下、サウシード辺境伯領への視察はいつ行くのですか?うちの視察ばかりしなくて良いですよ。