第128話 頭が痛い?ジェイシス様
ドリガン親方たちが、スタンフォート公爵領地に来ている。早々となぜ来ているのだよ、君たち。魔鳥を送ったのは、数日前。なのに、この早さは何?
「おー、嬢ちゃん。また酒作るんだって。早速来ちまったよ。今度はどんな酒を作るんだ!楽しみだな」
「ここは大麦が多い土地だな。ショーチューとウイスキー作るのかい。大量にできるんじゃないか、ガハハハ」
だめだ、この人たち。
「アイリ様、ジェイシス様にご報告に行きませんと。ジェイシス様に確認をとります」
出来る執事ニコラウス、すすっと私の元に来て、すすっとジェイシス様のところに行く。フットワークが軽くてありがたい。
「ドリガン親方たち、ジェイシス様ところに報告に行くよ」
「あれ、まだ報告してなかったのかい?アレクセイ様の時と一緒だな。あははは」
「ドリガン親方たちが早いのよ」
「この領地は王都から近いからな、すぐ来られるよ」
ガハハハと元気いっぱいだ。
ジェイシス様の執務室に呼ばれた。呼ばれちゃった。トホホ。
「ドリガン親方、息災か?」
「おうよ、スタンフォート公爵様、今度はここで酒造りかい。大麦がいっぱいあって酒の作り放題だな」
「アイリ、何か、私に言うことがあったのかな?」
「この前言っていた自生したぶどうを使ってワインが作れればいいなぁとドリガン親方に、道具できるかなぁと打診していたの。でも、本人たちが先にきてしまったということです」
「なるほど、そうだね、この前ブドウを使ってわいん?だったかな、作りたいとは聞いたな」
こめかみをグイグイ押しているわね。お疲れかしら。
「ジェイ、あっ、スタンフォート公爵様、この前の自生のブドウを使って今回ワインを作ろうと思っているのですが、今後他のブドウも使ってワインを作っていければと思っています。これからが商売の話になりますが、この領地には、余っている大麦がたくさんあると聞いています。飢饉での在庫を残したとしても余剰分があると。そちらを買い取らせていただきたいです。失敗してもスタンフォート領の損失にはならないです」
「わいん?か、それはどのように考えているのだ?」
「自生しているブトウを今後管理すると共に、新たなブドウ畑も作ろうと思ってます。その近くに工場を設けて生産ラインを作ろうと考えています。そのうち白ブドウを作りブランデーもできればいいなぁと考えてます。尚且つ、大麦の方もうちが作っているお酒の原料にしたいのですが、他のお酒も作りたいのです。もし原料を卸していただけるのであれば、父と兄とそこは話していただき、新しいお酒は私がしっかりと管理します。すみません、なんだか余剰分があることをここで知ってしまって、モンテスキュー領に横流しみたいなことを言っていることが間者のようで嫌ですね」
「なるほど、確かに大麦は何年在庫が膨れ上がってきている。ゆくゆくは破棄と思っていたのだが、使い道があるならそれはうちとして喜ばしいことだ。これはお義父上とアレクセイと相談だな。うちとしてもお酒に介入できるのであれば願ったりだ。あのウイスキーとショーチューというのがそれか。アイリ、わいん?の他にぶらんでー?というのはなんだ?」
「ブランデーは、白ワインを作る工程は一緒ですが、その後、今度は白ワインをウイスキーを作る時の工法で蒸留しブランデーになるのです」
「なるほど、ワインを作るがその先にはブランデーというものを作るためには、ウイスキーの工法を使って作成するということか。なるほど。ニコラウス。わかっているな」
「御意。信頼のできる者たちを集めます」
「頼むぞ」
「姉ちゃんのはいつも極秘だな。ところでこの前の魔鳥で、言ってきたのはこんな構造でいいのか?公爵様広げていいかい?これはアレクセイ様も一緒に魔道具を取り入れたものなんだ、どうだい?」
設計図が広げられた。タンクに攪拌、搾取、戻し。搾取後の残物の排出口、液体の大きい蛇口。
「この蛇口から樽に移せばいいかと思ったんだよ」
「すごい、すごい。描いていたものだよ。さすがドリガン親方」
「だろう、俺の酒にかける情熱は誰にも負けない。ただ。もう一つがわからないんだよ」
「エールを作る工程と同じだよ。それを低温貯蔵するかしないかだよ」
「低温貯蔵?」
「エールを作る工程は同じで低温貯蔵できる装置を作ってほしいのよ」
「なるほど、確かにエールは熟成は冷たくはしてないな。低温で熟成させるのか。なるほど。嬢ちゃん、わかったぞ。楽しくなってきたな。白ワインというのを作った後、蒸留させるものも作ればぶらんでーというものが作れるのだな。よし、任せておけ。公爵、これはどこで作るか、モンテスキューの旦那に聞かないとダメですよね」
「そうだな、一応、わいんはうちで作ることになる。わいんの方を先に手掛けよう、ニコラウス。そのように取り仕切れ」
「はっ、ではまずドリガン様たちは、本日はゆっくりされてはいかがですか?」
ニコラウスがドリガン親方を部屋に案内しようとしている。
「おう、そうだな。急いできてしまったからな。姉ちゃん、酒ないのか?明日からガンガン作るから。今日は酒盛りか!そうだ、公爵様。炉を作る場所を明日探したいがいいか?」
おおー、とみんなで盛り上がっている。
「ありますよ。来ていただいたので、お礼を込めてお渡ししますが、飲みすぎないようにしてくださいね。すみません、ジェイシス様」
「まあ、ドリガン親方たちには今日はゆっくり休んでいただき、明日、炉を作る最適な場所を見ましょう」
「おうよ」
ドリガン親方たちは酒盛りだね。お酒の提供するのは私だけど。
「アイリ、まだ話は終わっていないよ」
「げっ?まだ終わってない?」
トボトボとソファーに座った。
「今後やることが多くなるよね」
「そうですね、まずはワインを作るのでいいのではないですか?そうですよ、ワインができれば十分です」
「我が領土としては、過剰な大麦を使いきることができれば1番ありがたい。あのウィスキーやショーチューは大麦からできていたのか?知らなかった」
「ウィスキーは大麦が原料ですが、ショーチューは麦でもさつまいもでもできますよ」
「アイリは本当に知識があるな。鑑定もあるからそれでわかるのか?」
「そうですね、自分の鑑定は便利なのですよ。薬草なら、どうすればポーションを作れるか書いてあるのです。料理の作り方や金属でも何が入っているかわかるのでスキル分解で物質を作ることができますよ」
「は?分解で物質を作る?」
「これ、金が入ってますね。分解していいですか?『分解』、これで木片と金と炭に分かれる方ができる。でも、分解してしまったら戻せませんよ」
「金だ。ではいらなくなった防具など、分解したらそれぞれの物質に分かれるということか?」
「多分、やったことがないのでわからないですが」
「アイリが私の番でよかった。こんなこと知られたら、誘拐されてしまうよ。絶対、外で使ってはダメだからね。家族以外知られてはいけないよ」
コクコクと頷くしかなかった。スキルは外では絶対使いません。
「モンテスキューの領土では使ってしまいました。土地から塩を抜きました。それだけはすみません」
「塩か。金属などは外ではダメだからね」
「はい、外で分解は使いません」
誘拐されたくないからね。ドナドナはいやだ。外国に売られて奴隷なんてやだよ。絶対やだよ。泣いちゃう。こわい、こわい、絶対気をつけよう。