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「はははは凄い!」
俺は空を飛んでいた。
神の力とやらで魔法っぽいのを発動させているのだ。
現在森の上を高速で移動している。
「空を飛ぶってのは人間の夢だからな。これは来たな」
俺は空をスイスイと飛んでいた。
神の力で発動させた魔法で飛んでいる……という認識だ。
眼下、遙か地表を森が流れていく。
「でも全然何も見つからない……強い魔物とかモンスターとかいれば戦えるんだけど……」
どうやら俺は魔王を倒さなけらばならないらしい。
よって自分の力がどんなものか試していきたいところなのだが、その対戦相手が見つからないのでは話にならない。
「このまま木ばっか眺めてちゃ拉致が明かないな。木を対戦相手にしたりしたらどうだ? いや、それはただの変人だ。ここはやはり魔法だな。周囲を探索する魔法、どうだろう?」
空を飛べるんだ。俺には何だってできるはず!
俺はやってみた。
人差し指を額にあて、むむむと唸ってみる。意識を集中させ生命反応を探るイメージ……
「むむ!」
分かる……生きてる物の反応、かな?
割りと近くに数匹の何かがいる……その付近にも散らばるようにして何匹かの反応。
俺の脳内には、恐らく生き物と思われる存在の場所が、脳内に赤い点で表示されていた。
「これは来たな! 成功でいいだろ? やっぱりイメージなんだよ! 簡単だ魔法なんて」
さらに効果を上乗せできるんじゃないかと思った俺は、いっそのこと強さを表示させたりできないかな? と画策してみる。
「おお、なんとなく分かる気がする……割りと近くの四つ反応……十四、十五、十二、十二……」
赤い点に意識を集中させれば、数値が浮かんでくる。
これが戦闘力ってことでいいのかな。
「おお、ちょっと離れたところには五十前後の奴がわんさか……一匹百を超えてるな。何かの群れかな」
どんどんどんどん探ってみる。
この調子で数値の高いやつを見つけてそこまで飛んでいこう。
うーむ……お、ここには戦闘力二百八十四とかいうやつが一匹。
こいつが今んとこ最強か? でもなんだか中途半端な気もするんだよなぁ。
俺は空中で云々うなりながら、索敵範囲を広げていく。
うーん、相当の数の生き物はいるけど、やっぱりマックスでも戦闘力二、三百くらいが関の山だな……
「あれ?」
そんな感じで悩んでいると、妙な場所を見つけた。
生命反応が一気に密集している地点があるのだ。
まるで群生地のようだと思った。
こ、これは……ひょっとして人間の集落なのでは? その数は、数百どころじゃない、数千以上に及ぶ量の生き物がひしめいている。やばい、これはここに決まるしかないんじゃないか? ここって街だろ。行くっきゃ無いだろ。
「おお、しかも戦闘力千二百とかいうやつがいるじゃないか。やばい、これがここいらで一番最強だ。そのすぐ近くには六百七十七もいるぞ。こいつらにきーめた!」
対戦相手が決まった俺は、宙で静止していた状態から一気に加速し、標的へと一直線に向かう。
音を置き去りにしてるんじゃないかという速さ。この魔法にも相当慣れてきたぞ。
「ふふふ、やはりか」
辿り着いた先にはやはり街があった。
上空から見下ろしているのだが、細かな家々が立ち並んでおりかなり壮観だった。
「おっと感嘆している場合じゃない。俺は標的の元へひとっ飛びしないとならないんだ」
てことでその者たちの元へ向かうことにした。
街にいるくらいだから魔物の類ではないだろう。
俺は悠々と空を飛び、反応のある地点へと向かう。
「ふーん、ここかぁ」
そして到着する。
俺の見下ろす先にはデカい屋敷があった。
周囲を見てみれば、似たような立派な家が何件も立っているので、この辺りは身分の高い者たちが住んでいる地域なのかもしれない。
「どうしようかな。この中にいるのは間違いないんだけど。玄関からピンポン押して入るか? いや、どう攻撃するつもりなんだ。ここはど派手に登場してやろう」
俺は自らの表面を強化した。
俺は神の力を持っているんだ。自らの防御力を上げるくらい簡単に決まってる。
「よーし、多分これでオーケーだな」
準備は整ったので、俺はそのまま急加速し、屋敷に突っ込んだ。
俺ミサイル! って感じ?
どごおおおおん! と俺視点凄い音を立てながら着弾した。
感触はかなりいい。ど派手にかませたんじゃないかな。
「何者ッ!」
俺は地面にめり込んでいたようで、体を起こす。
顔を向けた先には一人の男がいた。
まだ若く見える……と言っても俺よりは年上だろうが、男は警戒するように握りしめた剣をこちらに向けてくる。
コイツの戦闘力が……六百七十七。なるほど、やはり俺が目指した相手のようだ。
そしてその男の後ろには一人の女がいる。
女は肌の露出が多い服装に身を包み、三十いってないくらいの容姿。切れ長の目が印象的かな。
戦闘力は……うん、千オーバー。ってわけで、間違いなかったな。
「名乗れ! 何の用だ! メルヴェア様への刺客か!」
男は俺に向かって吠える。
よし、まずはどうしてやろうかな。