17話
慎重に中を覗き込むと正面にはパーテーション。その奥は見えない。
パーテーション沿いに歩いていくと切れ目を見つける。
物音一つしない。ここもハズレか?
気を緩めて、そのパーテーションの切れ目から覗き込む。
閃光。目がくらむ。俺は視界を失った。
投光器の照明が異常に明るくて目を開けていられない。立っていられない、跪く。
「やっぱり来てくれたんだね! 愛しい人」
「……誰だ?」
「酷いな~三か月ぐらいでウチのこと忘れるなんてないよね?」
「おまえ、ミナミか?」
「やっぱりウチのカズヒト! ウチの忘れずに想ってくれていたのね。ウチもずっと会いたかったよ」
「煩い! おまえがミユキを拐ったのか?」
「拐ったとか酷いなぁ。あの子はウチのカズヒトに色目を使った悪い子だからお仕置きが必要なの。だからちょっと来てもらっただけよ」
「ミユキはどこだ⁉」
「さぁ……カズヒトには関係ないわ。そんなことよりきれいなベッドを用意したから、ここでいいことしようよ。ナマでもいいわよ」
「黙れ、この照明を消せっ! とっ捕まえてミユキの居場所を吐かせてやる」
無理に立ち上がり、手探りで声のする方に向かうが全く近寄れている気がしない。
「しょうがないなぁ~ カズヒトが悪いんだよ? 言う事素直に聞けば痛いことしないのになぁ」
「何のことだ⁉ ッ‼ うぐっ」
背中のあたりを硬い棒のようなもので殴られた。
「ぐはぁつ‼」
仰向けに倒れると今度はみぞおちに激しい痛み。
多分かかとで踏み抜かれた。
「悪いな。ミナミちゃんのお願いは聞かないとなんだよね~」
「だ、誰だ…」
男の声。誰だ。聞いたことがあるような。
「こら! ダイスケ! ちょっと痛くしてカズヒトが言う事聞くだけでいいのにやりすぎないで! この短小粗チンの間抜けカス!」
ダイスケ? あ、ああ。須藤某くんか⁉ こいつらまだ繋がっていたのか?
「ああん? っるせーな! もういい! ミナミ、お前はオレのモンなんだからオレで満足してりゃいいんだよ。こいつはぶっ潰して二度と勃たなくしてやんよ」
それは洒落にならん。バカどもが言い争いをしている間に少し目が慣れて来る。
「(俺の懐中電灯……あった)」
懐中電灯はパーテーションの下に転がっている。距離おおよそ三メートル。ひとっ飛びで届く。
「ていっ」
スライディングの要領で懐中電灯に手を伸ばす。
「あ、てめぇ!」
ダイスケが手にしていたバットを振りかざす。バットだったのか……。
ゴッ!
間一髪。懐中電灯を横持ちにしてバットの打撃を受け止める。振り回せば鈍器になる懐中電灯は伊達じゃない。
俺は片膝立ちのまま、よろけたダイスケの脛に思いっきり懐中電灯を振り回しぶち当てる。
バキッ!
いい音がして、ダイスケの脛に新しい関節が出来上がる。